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8.『鉄壁令嬢』、放置される。




「お嬢様、全く王様からの便りがないですね」

「ええ」

「それに使用人の数も少なく態度が悪いです」

「そうね」


 ドゥニーは、異国の地に辿り着き後宮入りしたものの放置されていた。


 一応、かろうじて使用人もいるが誰かの手が入っているのか数が少なく態度が悪い。

 ドゥニーが問題ないと言ったのもあり、ドゥニーを送り届けた護衛たちは帰国してしまっている。ダニエス含む数人の侍女は残ってくれているが、本当にそれだけしかいない。


 蔑ろにはされているが、ドゥニーは特に気にした様子もなく楽しそうににこにこしている。




「食事も結構粗末ではないですか? 嫌がらせでもされているんですかね」

「ありえそう! ここの王様って奥さん沢山いそうだものね。まだ、挨拶出来ていないけど」

「王様に挨拶した後ですよねぇ。他の妃たちに挨拶するなら。そうなると、お嬢様は中々動きようがないですね」

「そうね。この状況で他の妃さんたちに挨拶しに行くのならば、色々言ってきそうねぇ」



 ドゥニーは相変わらずのほほんとしている。



 王への挨拶が出来ていない段階だと、妃へ挨拶を先にすると嫌味などを言われて大変だろう。

 とはいえ、そういうことになったとしてもドゥニーにとっては楽しいことである。




「お嬢様は本当に良い性格をしていますよね」

「だって本当にちょっとした嫌がらせとかする人たちいるんだなって面白くて、だって今まで私にそういうことしてくる人っていなかったでしょ」

「……そうですね。お嬢様は色んな意味で国で有名でしたからね。そのお嬢様相手に何かしようとは普通の人ならしませんからね」

「これからどんな嫌がらせをされるのかしらね!!」

「……なんでそんなにワクワクした顔をしているんですか?」

「だってこういう風に嫌がらせをされるのは初めてだもの! 初めての体験ってなんでも楽しいでしょ?」

「お嬢様は本当に……びっくりするぐらいなんでも受け入れますよね」

「私は何をされても問題ないもの。あ、でも安心してくれていいわよ。ダニエスたちに何かされるなら徹底的にやり返すわ。あとは嫌がらせとかに飽きたらちょっとやり返すかも。まぁ、これくらいなら全然いいわよね」



 ドゥニーは穏やかな性格で、怒りを表したりはしない。ただし思いっきりが良いので、やると決めたらやるタイプである。

 今は嫌がらせされても面白いとにこにこしているが、ダニエスたちに何かあったり、不愉快な行動を誰かにされたりすればすぐに報復するだろう。




(お嬢様は怒ると恐ろしい方なのに……見た目がか弱そうに見えるからと見くびるなんて愚かなことだわ。加護持ちがこの国にはあまりいないにしても、見た目だけでは判断が出来ないにしても後から大変な目に遭うことは間違いないのに。それにこの国の王様も、お嬢様は味方にこそすべき存在で、敵に回すと大変なのに放置するなんて……)



 ダニエスからしてみれば、ドゥニー相手に嫌がらせをする神経に驚く。ドゥニーは本当に見た目からは考えられないほどに力を持った存在である。加護を持ち、誰よりも強く、その性格も中々いかれている。



 見た目がどれだけ愛らしくても、ただの大人しい令嬢に見えたとしてもそうではないのだ。

 おそらくその辺に生息している魔物よりもずっと恐ろしい。




「お嬢様、王様から放置されているわけですが、そのあたりはいつまで放っておきますか?」

「飽きるまで! しばらくだらだら過ごして、で、飽きたらこっちから会いに行って遊びに出かけるとかにしようかしら? それか、こっそり抜け出して遊ぶのもありよねぇ」

「いえ、一応話をつけてからやった方がいいと思います。国際問題になると困りますから」

「そうなったらなったでどうにでも出来るんじゃない? 全員私が食い止めるとかもあり」

「やめてください。お嬢様なら一人でどうにでも出来そうですし、多分どこでも生きていけるでしょうけど……」

「いつか戦争とかに飛び込んでも楽しそうよね!」

「本当にやめましょう。必要に応じてならともかく、自分からそういうものには飛び込まない方がいいです」



 ドゥニーが楽しそうに告げる言葉に、ダニエスは呆れながら返事をする。



「それにしてもこの放置はいつまで続くかしらねぇ。私の加護のこともいつ認識するのかしら! 手紙も見ないってよっぽど私が気に食わないのかしら?」

「どうでしょう? 一応後宮内で情報収集したところ、王様は結構な美丈夫らしいですから、女性に困ってないタイプみたいですね。それで王国から来たお嬢様を気に食わないとかなのかもしれないですね」

「ふーん。でも女性に困ってないとかはともかくとして、私は少なくとも恋愛するなら一対一がいいわ」


 ドゥニーも貴族なので、一夫多妻制や多夫一妻制の制度も理解しているが本人は一対一の方がいいなと思っている様子である。



「お嬢様は王様には靡きそうにないですね」

「そうね。少なくとも手紙も見なくて、こんな風に放置する人はどうかなーっては思うもの」



 ドゥニーはダニエスの言葉に王様には興味ないと言った様子でそう言い切るのだった。




 

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