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鉄壁令嬢、自由気ままに。  作者: 池中織奈


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59.『鉄壁令嬢』は、諦めの悪い者達の心を折ることにする ④



「今日は良い天気。星が綺麗。雨が降ってないのは良き」


 ――ドゥニーは、呑気に言葉を発しながらも走っている。

 ドゥニーは、商人夫婦の殺害を命じていた有力者の名を聞き出した。そしてそれから、その命じた者の元へと向かっていた。


 しかしその足取りは軽い。それでいてまるで散歩かどこかに出かけるかのような雰囲気である。実際にドゥニーからしてみると、これは特に気負うことではなかった。



 この国の有力者の元へと、宣告をしにいく。


 ドゥニーは行動的である。その有力者の住まう土地は、少しだけ遠かった。だからドゥニーは、同行していた者達や商会の夫婦に声をかけ、そのまま魔力を身体に纏わせて駆け出したというわけである。




(流石に走りっぱなしは少し疲れるけれど、良い運動だと思いましょう。最近、こうやって走り回ったり出来ていなかったから、結構楽しいかも)



 彼女はいつも運動をしているため、令嬢としては破格の体力を持ち合わせている。『鉄壁』の加護は、ただ害されることがないだけなので、これだけ走り回れるのはドゥニー自信の努力の成果である。

 自分の興味が惹かれるものを思う存分楽しむために、強敵が居た際に思う存分戦うために――そんな前向きな理由で常日頃から彼女は運動をし続けていた。



 そういうわけで全く以って疲れはない。疲労一つみせずに彼女は動き続けているのである。

 機嫌よく駆けつつ、向かった先は巨大な屋敷である。先ほど彼女が宣告しに向かった屋敷よりも何倍も巨大だ。それだけでも権力を持ち合わせていることがよく分かるだろう。

 当たり前のことながら、警備の騎士達の姿が多々ある。武器を手に、その場に居る彼らは……どこか油断しているように見えた。


 それはこのような強固な守りのされた場所に手を出そうとする者は中々いないから。念のため、警備はされているものの襲撃などといった問題が起こることなどはほとんどといっていいほどないのである。

 ――もちろん、騎士達の中には油断をすることなく、警備をしている者達も居る。


 しかしドゥニーが周りに悟られないように動くのならば気づくことは出来ない。それだけ彼女は荒事に慣れているのである。興味本位でどこかに侵入したり、魔物討伐をしたりなどというのは『鉄壁令嬢』からすると、日常茶飯事なことなのだ。



 

 大人数で襲撃を繰り出そうとするのならばともかくとして、たった一人の少女がこんな場所に侵入しようとするのは全く以って目立たない。




「誰も気づいていないみたい。やっぱり、こういう所、緩いよね」



 警備が緩い、ということに対してドゥニーは少しだけがっかりした様子を見せている。身体を動かすことを彼女はこのなく愛している。だからこそ、ドゥニーはどうせなら気づいてくれても良かったのになどと思っている。




 彼女からすれば、バレようがバレまいがどちらでも構わないというのが正直な感想なのだ。騎士達が自分の存在に気づくのならば、それはそれで優秀な騎士と戦えると喜びを感じ、気づかないのならば自分は侵入しても気づかれないぐらいに凄いのだと自己肯定感を増す。

 どちらにしても彼女はとてつもなくポジティブだった。



 屋敷を囲う塀は、魔法を使って簡単に飛び越えている。普通の人ならば、飛び越えることのできない場所。そもそも有力者の屋敷に無断侵入を果たすなど、見つかればまず処刑は免れない。

 だからこそ出来る力があっても何かしらの理由がなければそんな無謀な真似はしないだろう。



 ――ただ、『鉄壁令嬢』は見つかったとしてもどうにでも出来るので問題はないのであった。





 音を立てるのは、最低限。声を発することもせずに無言で彼女は動き続ける。

 人の気配がすれば、さっと隠れる。まさかこのような場所に侵入者が居るとは思っていないので屋敷内を歩く人々は誰もがリラックスしている様子である。


 そもそも例えばドゥニーに気づいたとしても、彼らは侵入者と認識出来ないかもしれない。ただ屋敷に滞在している愛らしい少女と認識する可能性もあった。『鉄壁令嬢』は大人しくしていればただの令嬢でしかない。そう、ただの貴族令嬢としての一面もまた彼女である。



 



(それにしても、一部の使用人はなんだか顔色が悪い? 何かその原因があるのかしら)



 その屋敷に仕える者達は、穏やかな表情をする者と顔色を悪くする者と二極化していた。


 ……ドゥニーはその原因はなんだろうと不思議そうな顔をしている。

 彼女の目的は、諦めの悪い者を納得させること。心を折って、問題行動を起こさないようにしてもらうこと。



 だけれども彼女は興味を持ったら、別のことも調べようとしてしまうタイプだった。

 そういうわけで屋敷内を調べてみることにする。さながらまるで探検でもしているかのような軽さである。実際にドゥニーにとっては、そのくらいの寄り道することは問題がなかった。






 

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