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49.『鉄壁令嬢』は騎士団の詰所で商人のことなどを説明する




「そ、それで陛下に嫁がれたという噂の『鉄壁令嬢』がどうして此処に?」

「それはね、私はたまたま砂漠をぶらぶらしている時に商人を見かけたの。そこで話を聞いたところによると、貴族とつながりを持つ者と敵対したとのことなの。その結果、商人の商品を駄目にしようとしていたのがこの男。騙されて狙われているらしい商人たちを私は助けることにしたわ。だから、この男のことをよろしく。これ以上余計なことはしないようには脅しつけているから」



 ドゥニーがそう言ってにっこり笑いかけると、騎士の一人は青ざめた顔になった。

 可愛らしい顔をしながら、脅しつけるなどと口にしたドゥニーに思うところがあったらしい。控えめに言っても恐ろしい。




「分かりました。……それにしても貴族と繋がりがあるものと敵対とは、大丈夫なのですか?」

「そうね。これから大丈夫なようにするわ。私は理不尽なことは好きじゃないの」

「そ、そうですか」

「あら、そんな顔をしないで大丈夫よ。私は誰かに無理強いはあんまりしない方よ。きちんと陛下に連絡して対応はしてもらう予定だけど、それまでは少し商人夫婦は危険があるかもだけど私が守るわ」


 ドゥニーは自信満々にそう言った。


 彼女は自分ならば商人夫婦を守れるという自負があるのだろう。そこには迷いなどは全くない。実際に彼女には、全てを守り抜くだけの力を持ち合わせているのだ。




「でもそうね。大々的に私の名は出してもらった方がいいかも。そうじゃないと貴族からの重圧とかあったりするでしょ? もしそんなことがあったら大変だものね。だから『鉄壁令嬢』の名を出すと効果的なの。あとは陛下の名も多分出していいわ。何かあれば私が勝手にやったことだと言い訳してもいいのよ」



 ドゥニーは基本的に楽観主義者ではあるが、視野が狭いというわけでは決してない。ドゥニーの行動によって、どれだけの影響があるかを考えていないわけではないのだ。

 ドゥニーの話を聞いて、騎士達が顔色を悪くしていたのを見て察したのだろう。





「……『鉄壁令嬢』の名は確かに一部の者達には抑制力にはなると思います。しかし、あなたがどれだけの強さを持っているかは一見しても分かりません。本物がこんなところに居るわけがないとそう思ってしまう者は一定数いるかと」

「それはそうかも……。私って、どうしてかいつも侮られてしまったりするもの。私が自身の名を口にしても偽物だと決めつける人はこちらに来る前も沢山いたわ。そうなると、権力者の人にでも会いに行って話をつけた方が早いかしらね」


 ドゥニーはそんなことを言いながら、思考を進める。




(商人夫婦と敵対している商会の繋がりのある貴族が誰か次第よね。あとはどういった繋がりか。もしかしたら商会がやっていることなんて全く知らなかったりもするわよね。そうだったとしたら大問題よね。貴族の中には後ろ暗いことを幾らでも行っている人ってやっぱりいるもの。そう言う貴族を見かけたら、気づいた限りは報告したりしてはいたけれど……。どうなのかしらね。私が『鉄壁令嬢』だと知っても向かってくるのだろうか?)




 ドゥニーは、自身の強さを自覚している。だからこそどうして勝てもしないのに、自分に向かって来ようとするのだろうかとそんなことは思う。



 まともな思考を持つ貴族ならば、ドゥニーをどうにかしようなんてそんなことを思わないのだ。それなのに、自分の欲のためにと始末しようとする者はそれなりに居るのだ。





「ちょっと私が話をつけに行くつもりだから、その間だけ我慢してもらえればいいわ。流石にいきなり騎士団に攻撃をしてきたりはしないはずだし。そもそも本当に自分の行動に対して絶対の自信があるなら王様にばれても問題ないともっと堂々と行動するはずだもの。そうしないなら、国を敵に回したいわけではないと思うのよね。だからおそらく問題ないけれど――もし、この場が襲われるなら私がどうにかするから」



 ドゥニーは軽い調子でそう言い切る。彼女は行動力のある人間である。それでいてやると言ったことをすぐさま実行できるだけの力を持ち合わせている。





「分かりました……。何かあったらすぐに連絡させていただきます」

「ええ。そうして。あなたたちが私の敵に回らないのならば、この『鉄壁』の加護を持って、あなたたちのことを必ず守るわ」



 にっこりと微笑んで、ドゥニーはそう宣言した。



 『鉄壁』の加護のことに触れて、宣言をすることはドゥニーにとっては決意の表れである。



 彼女は騎士達に対する説明を終えた後は、一度、商人夫婦の元へと向かい状況を説明しておく。それから「少し貴族に話をつけにいきたい」とそう言い切った。


 ただこのあたりをおさめる領主は、少し離れた街で暮らしている。代官はいるものの、どうやらその者は商人夫婦の危機を放置しているようだ。



「なら、まずは代官のところに行くわ」


 そしてドゥニーはそう宣言した。




 

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