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42.『鉄壁令嬢』、王様に名物を問いかける。




「王様、おはようございます!」


 ドゥニーは朝から、ドウガの元へとやってきた。

 朝一で元気よく笑ってやってきたドゥニーに、ドウガやその側近達は驚いた顔をする。

 




「何かあったのか?」

「お勧めのお土産ってありますか!」

「……突然、どうした?」


 いきなりドゥニーが言った言葉に、ドウガは怪訝そうな顔をしている。朝からそんなことを言ってくるとは、何事かと思っているようだ。また、何かしら想定外のことでも考えているのでは……と懸念しているのだろう。


 つい先日、サデンにとって未知なる領域であった崖の上から財宝を持ち帰ってくるという偉業を成し遂げたばかりだというのに全く持って平常通りである。ドゥニーにとってみれば、この国の人たちにとっては一大事なことも、そこまで気にすることではないのだろう。



 ドウガはそのことを実感して、呆れた視線をドゥニーに向けてしまう。

 明らかに、変である。






「お父様とお兄様にお土産送ろうと思いまして。実家の家族に送ってもいいですか? 珍しいものを送って、喜んでいただきたいのですわ」

「……お前は実家の家族とは仲が良いのか?」

「はい! とても仲良しです」


 にっこりと笑って、ドゥニーはそう答える。



 満面の笑みを浮かべる様子を見ていると、ドゥニーが家族と良好な仲であるというのがよく分かる。

 ドウガの目から見て、ドゥニーはおかしい令嬢である。そもそも普通の令嬢であるのならば、婚約破棄をされて、嫁ぎ先でも放置されてしまえば泣き寝入りして、絶望してもおかしくない。

 だけど、ドゥニーはそんなことは全くない。


 とはいえ、おかしな令嬢であるとはいえまだ十代の少女である。家族と離れていて寂しくないのだろうかと……ドウガはようやくそこに思い至った。





「……お前、帰りたいのならば帰ってもいいぞ」

「えー? なんでそんなことを?」

「お前は此処に嫁いでくるのを望んでいたわけではないだろう? それにそもそもお前の加護のことがあって妃としての役割など出来ていないしな」

「そうですねー。一応名目上嫁いだことにはなってますが、私と王様の関係ってなんでしょうね? 友達? あと私は正直もっと色んな所を見てみたいなと思っていたので、この国に来ること自体は良い機会だったと思いますわ。砂漠で思いっきり遊ぶのも楽しいですし! それにまだ見ぬ光景が沢山広がってるんですよ! 私はこの国に来て良かったなぁと思ってますわ」



 それはドゥニーの本心からの言葉である。

 彼女にとってこの国は初めて足を踏み入れた遊び場のような――そんな感覚なのだろうということがドウガには分かる。


 いや、きっとどんな場所であろうとも『鉄壁』の加護を持つ彼女にとっては楽しい未知なる場所でしかない。彼女は例えば人が生きていけないような場所であろうとも生きていける。他の生物が全て死滅したような地であっても――ただ、彼女だけは生き続けるだろう。

 

 ドウガは改めて、彼女の感覚が普通とは異なることを実感する。




 本当に心から――ドゥニーという少女は、家族と離れたことも、こうして侍女一人だけを連れて他国にやってくることも、婚約破棄されたことも本当に何も気にしない。本気で嫌だと思っているのならばそもそも、此処には来ていないだろう。誰であろうとも、彼女の意思を曲げることはできない。無理強いをしようものなら、逆にしっぺ返しを食らうだけである。




「……なんだか、この国に飽きたらそのまま去りそうだな?」

「そうですねー。思い存分堪能するか、何かのきっかけでどこかに行こうって誘われたりしたら出ていくかもですね。王様、その時にダニエスのことを連れて行けなさそうだったら、ダニエスは返してあげてもらえると嬉しいです」

「その時はそうしよう。……確かに、お前は何かあればすぐに飛び出しそうだな」

「はい。そうしますよ。だって楽しそうな方に行くのは当然ですよ! それより、お土産に相応しいものを教えてください」



 本題から大分、話がそれてしまったので話を戻すドゥニー。

 頭の中は家族へのプレゼントのことしかないようである。相変わらずマイペースというか、自分のやりたいことを第一としているドゥニーであった。



 それからドゥニーはお土産として相応しいものを沢山聞き出し、それを王様からもらえたので送る手紙へとつけることにする。大分貴重なものもあるからと、わざわざこの国の騎士達が責任を持って届けてくれるらしい。


 ドゥニーはそれを聞いて安心した。

 折角喜んでもらいたくて送っているものが誰かに奪われるなどということがあれば、ドゥニーは嫌である。その奪った相手を徹底的に痛めつけて、品物を奪い返すぐらいはドゥニーはするだろう。


 そういう騒動にならないためにも、騎士たちが届けてくれるようである。





「お父様とお兄様、喜んでくれるかなぁ?」



 そしてドゥニーは嬉しそうに年相応の笑顔を浮かべるのであった。







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