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41.『鉄壁令嬢』、侍女と部屋でのんびりと過ごす

 石に関する報告はジャンノー経由で行われることになったので、ドゥニーは部屋でのんびりと過ごすことにした。



「お嬢様、探検はいかがでしたか?」

「とても楽しかったわ。あんな風に未知なる光景を見れるなんて最高よね!!」



 ダニエスの問いかけに対して、ドゥニーは楽し気に笑ってそう告げる。

 ベッドに寝転がりながら、彼女はにこにこしている。



「お嬢様が沢山のものを持ち帰ったため、城内はとても騒ぎになっていますものね。私たちが見たことのないような財宝を沢山持ち帰ってきたのですよね」

「うん。色んなものがあったもの。本当に楽しかった。誰も訪れたことのない場所だからこそ、こう……目新しいものが山ほどあったの」



 ドゥニーはまるで玩具を見つけた子供のように、目を輝かせている。

 彼女にとっては歴史的な発見だとか、そういうものは正直言ってどうでもいいのだ。重要なのは彼女にとって面白かったか、面白くなかったか。本当にそれだけの話であり、それ以上のことは何一つ考えていない。



「面白いものは確認出来たけれど、まだまだ全て探索しきれたわけではないわ。だからもっと面白い光景があの崖の上には待っているのではないかと思うの。魔物の助けも借りられるから、崖の上の探索もしやすいでしょうし、これからが楽しみだわ」

「お嬢様は魔物まで手なずけてきたのですよね……。本当にお嬢様は予想外のことばかりなさりますよね。なんというか……ピレオラ王国にいた頃よりも自由気ままにしすぎではないですか?」

「祖国にいた頃はお父様たちが私のことを心配して止めていたからというのもあるわ」

「……それもそうですね。そういえば当主様たちから手紙が届いておりましたね」

「お父様たちはこんな私のことをあれだけ心配していて凄いわよね」



 ドゥニーが以前書いた手紙がきちんと家族の元へ届けられていたようで、返事が届いていた。家族からの手紙はドゥニーの暮らしを心配するものばかりであり、ドゥニーはおかしな気持ちになる。


 『鉄壁』の加護を持つドゥニーのことを、父親も二人の兄も本当に大切に思っていてくれている。彼女の加護を正しく知っておきながらそれだけドゥニーを可愛がれる家族というのは素晴らしいものである。


 ドゥニー自身も家族のことは好ましく思っているので、ちゃんとその手紙の返答は書くことにする。






「崖の上のことの詳細は書けないけれど、誰も足を踏み入れなかった場所で遊ぶことが出来たぐらいは書いてもいいわよねぇ」

「きっと当主様達もお嬢様の言う崖が本当に誰一人足を踏み入れたことのない恐ろしい場所だとは思わないでしょうけどね」

「あとはペットが出来たことも書いておいて」

「そのペットが巨大な鳥の魔物だとは想像もしないでしょう」

「あの子たちに手紙を届けさせたら速そうだけど――」

「やめましょう! この国の方たちはまだ実際にお嬢様が魔物たちを従えているのを見て納得してくれていそうですが流石に国をまたいでだとまた騒ぎになりますよ?」

「それもそうね。なら、普通に送るか」

「是非、そうしてください。それにしてもお嬢様は本当に……凄いですよね」

「私は私のやりたいようにやっているだけだけどね」



 ドゥニーは軽い調子でそう答えながら、家族に手紙を書いている。

 ドゥニーはホームシックという言葉とは完全に無縁である。彼女にとってはどんな場所であろうとも、まるで遊び場なのだ。特にこの国では、誰も訪れたことがない未知なる場所というのがあり、そこを探検出来たので大満足である。


 



(崖の上はもっと探検するとして、きっともっと面白いものが見つかると思うのよね。ジャンノーが報告してくれると言っている石もそうだし、砂漠でまだ見たことない場所も多くあるし。王様から許可もらえたら、お父様やお兄様に何かしらお土産も送りたいなぁ)



 手紙を書き進めながら、そんなことを考える。

 ドゥニーは目の前に楽しいことがあればそれを優先するが、家族のことを大切に思っていないわけではない。

 そのうち家族に会いにいくなりしようとは思っているし、家族と手紙のやり取りを出来ることは喜んでいる。





「ダニエス、お父様とお兄様へのお土産何がいいと思う? 珍味とかだと喜ぶかしら? でも流石に駄目になるかな」

「……そうですね。生ものはやめた方がよろしいかと。それにお嬢様はどんなものでも食べても問題ありませんが、当主様たちはそうではありませんから」

「じゃあ面白い素材とか? 王様、何処までの範囲なら送ってもいいっていってくれるかな?」

「それはご本人に聞いてください。私じゃ分かりませんからね」

「それもそうね。じゃあ、王様にちょっと聞いてこようかな」

「お嬢様、今は夜なので明日にしましょう」

「夜だと駄目?」

「はい。仮にもお嬢様は妃として来てますからね。夜に訪れると、実際にそういう関係になってなくても勘繰られます」

「そっか。じゃあ、明日にする」



 時刻はすっかり夜。そんな時間に王のもとに訪れるのは問題であると言われて、ドゥニーは大人しく頷くのだった。




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