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39.『鉄壁令嬢』、研究者の考察を聞き話す。

「おお、これは……」

「まさか、あの時期の……?」


 研究者たちが目を輝かせて、ドゥニーの持ち帰った財宝を見つめている。

 ドゥニーにはそれらに関する知識はなく、価値は分からない。しかしこれだけ研究者たちが目を輝かせているのならば、それだけ特別なものなのだろうと嬉しそうににこにこしている。




「ドゥニー様、あなたの持ち帰ったものは過去にこの砂漠にすんでいた人たちが使っていたものに間違いがないと思います。しかし、どうして誰も登ることのできない崖の上にあったのかは謎です。彼らの生活していた場所は、崖の上ではなかったはずなので……」


 ドゥニーに近づいたジャンノーは、そんなことを言った。



「魔物たちが運んだとか?」

「小ぶりのものならそうだと思いますが、椅子などに関しては流石に収集癖のある魔物でもあんな崖の上まで持っていくことはないと思います。崖の上に人が暮らしていた痕跡がないのならば、もしかしたら何らかの自然災害によって元々人が生活していた場所が崖になったと言う可能性もあるのではないかと思います」

「地面が盛り上がったということ? そんなことあるの?」



 ドゥニーは好奇心旺盛なので、様々な知識を貪欲に学んでいる。とはいえ、この世界は知らないことが沢山あり、そのことがドゥニーにとっては楽しくて仕方がない。

 ジャンノーの言っている話は、いまいち理解出来ないドゥニーである。



「私も実際に目の前で見たことはありませんが、時折地形が変わるということは起こりうることなのです。そういった文献を見たことがあります。そのようなことが起こった時は、多くの人の命が奪われると書いてありました。だからこそ、起きない方が一番良いのですが……」

「ふぅん。いつか、そういう光景見たいなぁ」

「……ドゥニー様、たまたま見かけることは仕方がないとは思いますがくれぐれも自分でそういう地形を変える行為はしないようにしましょうね!」

「私を何だと思っているの? 流石にそんな真似しないわよ! 出来るかもしれないけれど」


 ジャンノーの言葉にちょっとやってみたい気もするが、それで無関係な人の命が奪われるのは勘弁なので我慢することにする。



(地形が変動するって、なんて面白いことなのかしら? 自分自身で起こすことはしないけれど、そういう場に出くわしたら――何が待っているんだろう? 私は本で読むような命の危機に陥るような自然災害ってまだ経験したことない。ジャンノーの言うような地形の変動もそうだけど、それ以外にも沢山あるわよね。それらも遭遇してみたい)



 普通の人ならばそれは命の危険があることだ。だけれども『鉄壁』の加護を持つ彼女にとってはそれらは脅威ではない。

 だからこそジャンノーの話を聞いて、そんなことを考えて楽しくて仕方がない。




「それならよかったです。それでです。本当に仮説通りに元々低地にあった場所が崖になったとしても、その場所に人が生活をしていた廃都などがないのは不自然です。それらが全て失われてしまうほどの衝撃的なことがあったのか、それとも違う場所にまだ隠されているのか……! その謎もぜひ解明していきたいものです」

「街にあった家具とかだけ崖の上にあるって不自然だものね。かなり重たいものもあったことを考えるとどちらにしても近場にその痕跡はあるはず……。もしくはジャンノーが言っている通りに都や街が完全につぶれるほどの大災害があったか。そういうレベルの何かとなると……何かしら?」

「……考えたくもないですね。人が暮らしていた場所を完全になくしてしまうというのはそれだけ大変な行為です。建物を破壊してまわるにしても、その建物の一部は残るものですし……。本当に謎は深まるばかりです」



 築き上げるよりも、壊すことは簡単だ。とはいえ、本当に何の痕跡もないほどに壊しつくすことは難しい。


 それこそ沢山の人が暮らしていた場所が跡形もなく消えるなど、本来ならありえない。



「この砂漠のどこかに、少なからずそういうものが隠されている可能性が高いということよね! 昔のものだろうとこれだけ財宝が残っているなら、建物だってどこかにあると思うわ」

「そうですね……。どこかにあるのかもしれません。以前話した古の都市に関してもですが、それ以外の小さな街だって……どこかに残っている可能性はありますね」

「そうよね! きっとこの広い砂漠のどこかにあるはずよね。そういうものが見つかったらきっと楽しいわ!」



 ドゥニーは目を輝かせて、楽しそうである。



(誰も足を踏み入れたことない崖の上では一度遊べたから、次は消えた場所探しかしら! でも崖の上でももっと遊べそうなのよね。あ、そういえば……)


 思考をしていたドゥニーは、一つのものをまだ見せていないことを思い出す。








「ねぇ、ジャンノー。ちょっとこっち来て」



 ドゥニーはそう言って、ジャンノーを荷物を運んでくれた魔物達のもとへと連れ出す。そしてその一人に崖の上の窪みでみつけた石を持たせていた。



「ねぇ、これ、何か知ってる?」


 そう言って石を見せれば、ジャンノーの表情が変わった。



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