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36.『鉄壁令嬢』、崖の下で戦士と合流する。





「あ、姉御……。そ、その魔物は」



 ガロイクが青ざめた様子で、ドゥニーのことを見ている。

 彼女の後ろには、財宝を持って飛行している鳥の魔物たちがいる。魔物を従える少女の図に、ガロイクが狼狽するのは当然のことであろう。



「崖の上の魔物。戦ったら私の下についたの! 崖の上で色んな財宝を抱え込んでいたから、持ってきてもらったの。これってとても歴史的な価値があるものかもなーって思って。ジャンノーに持っていったら喜ぶかなって」

「……ええとまぁ、そうですね。喜ぶとは思います。しかし、姉御……これをどうやって持ち帰るつもりですか? 人の手では持ち運びが困難な重さのものが多いですが」



 ガロイクは大分ドゥニーがやらかすことに慣れてきたつもりである。

 ……しかしそれでも目の前の状況にこれだけ困惑をしてしまうのも無理はないことだろう。なんせ、ドゥニーが引き連れているその鳥型の魔物は所謂幻と言われる危険な《死の鳥》と別名で呼ばれるものだからである。


 ガロイクも絵で見たことはあった。

 その絵と差異はあるものの、確かに以前見たことがある魔物と同種なことは間違いなかった。


 時折――それこそ数十年か、百年に一度ほどだけこの砂漠の地に降り立つ、何処からやってきたかも分からない恐ろしい魔物というのがガロイクの知っている知識だ。




(この魔物がこれだけ目撃されることがなかったのは、誰も足を踏み入れたことのない崖の上に生息しているからということか。……一匹見かけただけでも死を覚悟するようにと言われてる魔物がこれだけ大量にいて、姉御にしたがっているなんて……本当に姉御は規格外だ)



 たった一匹だけでも、危険だと言われている。

 しかしその魔物を大量に従えているドゥニーに、ガロイクは驚愕しかない。

 その魔物に対する恐怖心はあるものの、その魔物たちがドゥニーの言うことを大人しく聞いているのを見て落ち着いている。


 ここで恐怖心を見せたところでどうしようもない。

 それを理解しているので、ガロイクは平然を保とうと必死である。



「このままこの魔物たちにもっていってもらうことが一番良いと思うのだけど、駄目かしら?」

「あー……姉御はこの魔物たちのことを恐ろしくはないかもしれませんが、この魔物たちは俺たち砂漠の民にとっては恐怖の象徴です。いきなりこの魔物たちに荷物を運ばせれば混乱に陥ってしまうことでしょう」



 彼女にとってその魔物たちは、怖ろしい存在ではない。なのでガロイクの言葉に一瞬きょとんとした表情を見せる。




「この子たち、怖いの?」

「怖いです。俺では太刀打ちが出来ない存在です。その魔物達を姉御は大量に従えていて、凄まじいですね……。しかし姉御、一歩対応を間違えれば姉御は人類の敵と呼ばれてしまわないか心配です……」

「人類の敵? 私、そんな物騒なことはしないわよ?」

「知っていますが、魔物を力でねじ伏せ従えさせることが出来るというのは周りからしてみれば恐怖してしまうものです。俺は姉御がそういう風に言われるのは嫌だと思います」

「ふふっ、ガロイクは優しいわね。私は大丈夫よ。話し合いをすれば人は分かってくれるものだわ。何にせよ、誰も私を傷つけることは出来ないもの。ちゃんと笑顔で話し合いをすればいいのよ。前にそれで分かってもらえたこともあるもの!」

「……そうですか。ならよかったです」



 そのドゥニーの言う”話し合い”というのは、結局のところ彼女の異常性に対して恐怖し、手を出してはならないとそう理解したからにほかならない。

 何をしても笑顔で、傷一つ負わずに話し合いを求めてくる少女――というのは想像しただけでも恐ろしいものである。





「ええっと、ひとまず姉御、俺が先に説明してくるのでしばらく待っていてもらうことは出来ますか?」

「私が説明しようか? 私が走った方が速そうだわ」

「……いえ、俺が行きます。姉御は少しこちらで待っていてもらっていいですか? 少し時間はかかりますが、きちんと説明してきますから」



 ガロイクがそう言ったのは、彼女の説明では少し不安だったからだ。

 そもそも正しく説明をしなければこのようなおかしな事態は受け入れられることはないだろう。



 実際にその目で見たり、第三者からの意見でなければなかなか受け入れがたい部分がある。

 ガロイクだって実際にこの目で見ることなく、話しを聞いただけでは信じられなかっただろう。





「分かったわ。じゃあお願い。私はこの場でこの子たちと待っておくね」

「はい。そうしてください。下手に動かないでいただけると助かります。大量の魔物の大移動が行われると、色々大変なことになりますから」




 大量の鳥の魔物を引き連れて移動する……、なんて砂漠を歩く人も魔物も驚愕する光景である。



 そういう理由でガロイクが念押しすると、ドゥニーは頷くのであった。




 それからガロイクが城へと向かったので、ドゥニーは大人しく魔物たちと戯れながらその場で待つことにする。




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― 新着の感想 ―
[一言] > 何をしても笑顔で、傷一つ負わずに話し合いを求めてくる少女――というのは想像しただけでも恐ろしいものである。 確かにwww
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