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35.『鉄壁令嬢』、研究者から聞いた崖の上で鳥の魔物に財宝を崖の下に降ろさせる。


 その鳥の魔物たちは、ドゥニーが撫でると嬉しそうに鳴き声をあげた。

 それはまるで子供が親に甘える時のようなそんな仕草である。


 ドゥニーはその様子を見て、満面の笑みを浮かべる。愛らしい少女が笑顔で魔物の頭を撫でる姿はまるで一枚の絵か何かのようだ。




 その鳥の魔物たちは、ドゥニーからの言葉を待っているように思えた。



「んー? 私から何かいるの? 私があなた達に勝ったから?」


 この魔物たちは、長に従う傾向にあるのだろう。ドゥニーが徹底的に痛めつけた結果、彼女を長と認めたのだろう。



「自由に、今まで通りしてもらってていいわよ。私に貴方たちの行動を制限する権利はないし。ただ私が呼んだ時は手助けしてくれると助かるわ」



 自由を好むドゥニーは、他者の自由を侵害することは基本的にしない。

 それは魔物たち相手にだってそうである。彼女にとって生き物というのはある意味平等だ。誰もが殴れば壊れるもの。こうして自分の前に傅く魔物たちに彼女は少なからずの愛着を抱いている。だからこそ、人を襲わないようになんてことも言わない。そういう風に行動の制限はすべきではないと思っているから。



「でもそうね、私の知り合いが傷つけられたちょっとだけ怒るかもしれないからそのあたりは考えてね」


 ただその分、彼女自身も自由なのでそうも口にしておく。

 まぁ、そもそもの話こんな崖の上までやってくる人はあまりいないので問題はないだろうが。

 あとこの鳥の魔物たちが崖を登るものたちを襲わなかったとしても、他の魔物たちは襲い掛かるだろう。結局のところ、この場にやってくるのは難しいことだろう。


 彼女は全くためらいもせずにするすると崖を素手で登っていたが、まずそれさえも普通の人には難しいのだから。




 ドゥニーは魔物たちが頷いたのを見て、満足気に笑った。




「あと一個お願いがあるのだけど、いい?」


 その言葉にも当然、その魔物たちは頷く。

 長の言うことは絶対だと彼らの本能には刻まれているのだろう。例えばその身に命の危険があることだろうとも、彼らは長の言うことならばなんでも聞く、そういう風に本能で刻まれているのだ。




「ふふっ、そんなに身構えなくて大丈夫よ。貴方たちの集めていた財宝あるでしょう? それ、一部でいいから欲しいのだけどいい? あれを崖の下に降ろすのを手伝ってほしいの。私は戦うことは幾らでも出来るけれど、これだけ重いものを持って崖の下に行くことが出来ないの」



 『鉄壁』の加護を持つドゥニーは、ある程度のことを自分で出来る。だけれども出来ないことも当然ある。

 戦うことは出来ても、大量の財宝を崖の下で降ろすことは出来ない。

 財宝を抱えて両手が塞がっている状態で飛び降りることは出来なくもないが……それはそれで持ち帰りたい財宝が壊れてしまう可能性が強い。身に付けている物に関しては『鉄壁』の加護の影響下にあるが……流石に他のものは壊れるだろう。



 彼女の言葉に魔物たちは返事をするように鳴き、そして一部でいいといったのにすべての財宝を持ってくる。



「あらあら、全部は大丈夫よ? だって貴方たちがこれまで一生懸命集めてきたものでしょう。それを全て奪うなんて真似はしないわよ。でも歴史的にも価値のありそうな物は持ち帰ると皆喜びそうだなって思ってて。いい?」


 魔物たちが一生懸命、その習性で集めたものをすべてもらう気はなかった。



「ええと、でももらうだけだと悪い気がするから代わりに魔物のお肉あげる! それでいい?」



 魔物たちからしてみれば、長の命令は絶対なのでそういう代わりのものは必要ない。

 しかし彼女はもらうだけもらうのもなぁと思ったらしく、代わりに他の魔物を狩ってその肉を与えることにしたらしい。


 それから彼女は彼ら以外の魔物たちを倒し、それを鳥の魔物たちへと与えた。

 そのまま生肉をがつがつ食べる魔物たち。彼女も同じように生肉をバクバク食べていた。……魔物たちと並んで、別の魔物の生肉を食す愛らしい少女。中々衝撃的な光景である。


 その食事を終えた後、




「じゃあ、このあたりもらっていい? これ持って崖の下に降りるの出来るかしら?」



 そうやって崖の下へと持ち帰る財宝についての選別を行った。


 魔物たちが了承の鳴き声をあげたので、彼女は満足したように笑った。





「じゃあ、私は先に下に降りてるからそのまま私の元へ今行ったもの持ってきてね!!」




 彼女はそう言い切ると、そのまま崖から飛び降りた。



 ――凄まじい高さの崖の上から、一直線で、ためらいもせずに落ちる。



 普通ならそれは落ちたものの命を奪うものだ。でも『鉄壁』の加護の前では、落ちても意味をなさない。


 大きな音を立てて、彼女は落ちた。

 そうすれば、砂漠に大きな跡がつく。




「おぉ、こんな感じか!」


 突然の大きな音と、衝撃に周りの魔物が逃げていく中、彼女はにこにこと笑っていた。




 ――それからしばらく彼女が待っていると、鳥の魔物たちが崖の上から財宝を持ってきた。



 

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