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33.『鉄壁令嬢』、研究者から聞いた崖の上にある巨大な鳥の巣に忍び込む。


 結局のところ、大きな石は一つしか見つからなかった。

 もしかしたらそれはこの崖の上でも希少なものだったのかもしれない。彼女はそれを現地調達した布でくるむと身体に巻き付けている。

 落としてしまうともったいないので、持ち帰りたいものはそうやって肌身離さないようにするのが一番である。


 さて、窪みでの探索をある程度満喫した彼女は、また続く崖の先へと歩き出した。

 時折、狭い足場があり落ちそうになることもあった。そういう狭いエリアを進む中で空を飛ぶ魔物に襲い掛かられると真っ逆さまに落ちる危険性もあるのだ。



(落ちたらどんな感じかなぁ? こんな高さの場所から落ちたことはないから、真っ逆さまに落ちてみたらどんなことになるんだろ?)


 崖下をじっと見ながら、そんなことを思考する。



(でもこれで落ちたらまた登らなきゃだから、落ちるとしたら最後かなぁ)


 ……最後に落ちようと思っているあたり、彼女の思考は大分ぶっとんでいる。幾ら怪我をしないとはいえ、落下することに対する恐怖心なども全くない。

 

 細長い足場を進んだ先には、また少しだけ広いエリアが広がっている。

 そのエリアは少しだけ滑りやすかった。普通に歩いていてつるりと滑ってしまいそうになるので、慎重に進んでいく。

 そういう場所でも魔物は襲い掛かってくるので、一度だけ落ちてしまいそうになったが、なんとか踏みとどまった。



 ドゥニーの『鉄壁』の加護は、彼女はどんな環境やどんな敵からも守るものであるが、なんでも叶える万能なものというわけではない。彼女が落ちないようにしたいと望んでも落ちてしまう時は落ちてしまうものだ。



 それを理解しているからこそ、彼女はゆっくりとその場を進む。




(それにしてもこの部分、少しつるってしてて罠みたい。向こう側だとこんなに滑りやすくないのに)


 まるでなんらかの罠のようだ。

 実際に滑らないエリアと変わらないと思って足を踏み入れた魔物が、ずるりっと落ちていく姿も何度か見た。



 繋がっている崖の上だと言うのにも関わらず、こうして微妙に違いがあるのはなんだか不思議で面白い。




 その少し滑りやすいエリアを抜けると、今度は藁のようなものにぶつかった。

 巨大な藁……、よく見るとそれは鳥か何かの巣のように見える。しかしどこまでも大きくて全容が中々見れない。






(凄い大きい。……これ、魔物の巣?)



 巨大な魔物の巣。

 こんなに大きな鳥型の魔物の巣を見るのは初めてなので、ドゥニーの目はそれはもう輝いている。




 地上にある鳥の魔物の巣とどんなふうに違うのか。これだけ大きな鳥型の魔物の巣だと面白いものが見られそうだとか。もしかしたら登ってきた時に襲ってきた鳥の魔物の巣だろうかとか。


 ――彼女はそういうことを思考し続けている。


 大変好奇心旺盛な彼女の頭の中には、いくつもの疑問が湧いていく。

 この好奇心を満たす、面白いものがきっと待っているのだと――そう彼女は理解する。




「よいしょっと」



 彼女はそんな掛け声とともに、その巣の一部を壊した。……その巣は彼女の身長よりも高さがあり、上に登りにくいと思ったからだろう。だからといってためらいもせずに壊すことを判断するあたり、なんとも物騒である。



 基本的にドゥニーは自分のやりたいことを行うために躊躇わない。

 思いっきりが良いというか、判断が即決というか、そういう性格をしている。




 壊した先はまるで迷路のようだった。

 藁や木の枝といったもので作られたその巣は、いくつも区切られているようである。





(この巣自体がとても大きいからこういう風にわけられているのかしら。それにしてもキラキラしたものが多いわ)



 鳥型の魔物の習性か何かなのか、その魔物の巣には多くの輝くものが集められていた。それはどこから持ってきたのか分からない黄金に輝く椅子だったり、人の身に着ける装飾品だったり、建物の飾りであったであろう球体上の飾りのついたものだったり――。



 どこから集めてきたのかよく分からないものが沢山そこにはあった。

 それを持ち帰っただけでも一財産が築けそうな、そんなレベルのものである。



 それらを持ち帰るのも楽しそうだと思うものの、流石に大きな椅子などに関しては彼女一人では地上まで壊さずに持ち帰ることは出来ない。

 これらの魔物の収集物がどれだけの価値があるのか彼女には判断が出来ない。




(……此処にジャンノーのような研究者を連れてくるか、これらを持ち帰れたら何か凄いことが分かるのかもしれないけれど。でも難しそうだから覚えられるだけ特徴とか覚えて帰りましょう!)



 研究者ではないドゥニーには、それらがどれだけの価値があるものなのかさっぱり分からない。

 

 過去に彼女は何も考えずに破壊して、実はそれが歴史的に重要なものだったと怒られたことがあるため、こういうものはちゃんと専門家が見るべきであると思っている。

 こういうものの価値というものは、ちゃんと知識がある者が見なければ把握できないものである。



 なので、特徴だけ覚えてジャンノーに伝えてみることにした。

 そうすればもしかしたらこれらの収集物が実は凄いものかもしれないから。



 そうしてそれらの収集物の特徴を覚えていると、背後から魔物の鳴き声が聞こえた。



 ――そちらを見ると、一匹の鳥の魔物が怒り狂った様子でドゥニーに襲い掛かってきた。

 

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