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27.『鉄壁令嬢』、岩場の魔物を蹂躙する。




「あ、姉御……ちょっと待ってくれません?」

「ガロイク、ちょっとここで待ってて。私、一人でぶらぶらしてきたいから!!」

「……まぁ、姉御なら問題ないので、受け入れます。俺は姉御にとって足手まといでしかない……」

「そんなに落ち込まなくて大丈夫! 私が人より体力が有り余っているっていうだけだもの!」



 さて、ドゥニーは砂漠の国の戦士の一人であるガロイクを連れて砂漠にきていた。

 相変わらず元気いっぱいのドゥニーは一旦ガロイクをオアシス近くに置いて一人で駆け回ることにしたらしい。


 ドゥニーは研究者と会話をして以来、好奇心が刺激されていた。



 鼻歌を歌いながら駆け出していくドゥニー。ガロイクを置いていったからか、遠慮もなく爆走している。ガロイクはその後ろ姿を見ながら、「姉御はやっぱりすげぇ……」とそう呟いていた。





 ドゥニーもガロイクを完全においていくつもりはないので、オアシス周辺の戻ってこれる範囲で探索を始める。



 ――どこまでもただ、砂漠が続いている。だけどちょっとずつその光景は異なる。生えているサボテンなどが違ったり、魔物の巣があったり。





「ジャンノーの言っていた崖はまだまだ先かなぁ。全然見えないし。ちょっとした岩場の上とか何があるかな?」



 ドゥニーは楽しそうに独り言を口にしながら、岩場の連なるエリアを見かける。その周辺に住まう魔物も多いので、基本的には近づかない方がいいと言われている場所である。

 そこにドゥニーは躊躇いもせずに足を踏み入れる。


 その瞬間、その岩場をテリトリーにしている魔物たちが一斉にドゥニーの方を見た。



 沢山の視線。よそ者が、獲物が入ってきたことを認識した魔物たちは、ドゥニーへととびかかってくる。



「わお、沢山! 楽しそう!」



 その場には沢山の魔物がいる。一見すると岩にしか見えないようなものや、低空を飛ぶ蝙蝠のような姿のもの、そして地を駆ける四足歩行の魔物たち。


 そんな多様多種の魔物たちに囲まれても、ドゥニーは笑っている。



 というよりも魔物たちが勘違いをしているだけであり、獲物なのは彼らの方である。

 間違いなく、この場で捕食者はドゥニーである。それに彼らが気づくのは、すぐだった。



 ドゥニーへととびかかった蝙蝠型の魔物が、殴り飛ばされた。

 その身体は大きな音を立てて吹き飛んでいく。襲い来る魔物をドゥニーは殴って、蹴って、蹂躙していく。


 どうにかドゥニーの元へとたどり着いた魔物も、『鉄壁』の加護が発動しているドゥニーに傷一つつけることは出来ない。牙を立てても無意味。逆に牙がはじかれてしまう。突進しようとしてもびくともしない。その場にいる魔物たちは獲物だと思っていたドゥニーの異常性を本能で理解したのか、慌てふためいている。





 徐々に周りの魔物たちがやられていくのを見て、及び腰になっていく。中には「きゅいいい」と情けない声をあげて逃げていく魔物もいる。




「逃げちゃうの? 折角楽しいところなのに」


 ドゥニーはその様子を残念そうに見ている。


 ドゥニーからしてみれば、魔物を思いっきり殴ることは楽しいことである。自身の誇りである『鉄壁』の加護を思う存分使って、暴れまわれることは楽しい以外ない。

 



(もっとどんどん私に向かってくるような楽しい魔物はいないかしら? そういう魔物が居たら興奮しちゃう)



 そんなことを考えながら、満面の笑みのドゥニー。

 この場に他の人が居たら間違いなく怯えられるような笑みである。






 そんなドゥニーの期待に応えることがあった。




「あら?」



 ドゥニーはドスンドスンという大きな音を聞いて、目を輝かせる。

 そちらに視線を向ければ、ドゥニーの身体の二倍ほどある大きな丸い岩がこちらに向かってきていた。




(先ほど殴り飛ばしていた魔物の成体バージョンってことかしら!! あの岩のような身体が生物だなんて不思議だわぁ。中身どうなってるのかしら? 生物だと消化するための器官があったりするけれど……。でもドラゴンとはまた違う中身でありそう!! それにしても大きくて凄く殴り甲斐がありそうだわ)




 楽しくて仕方がないといった様子のドゥニーは、こちらに向かって猛スピードで転がってくるその魔物を真正面から受け止めることにしたらしい。



 やることは一つ。ただグローブを身に着けた右手で殴りつけるだけである。

 その魔物にもこれまで様々な強敵を蹴散らしてきた自負があったのだろう。人間の娘一人に受け止められるはずがないと思っているのか、そのまま転がってくる。



 しかし相手は、『鉄壁令嬢』ドゥニー・ファイゼダンである。

 その命を失ったのは、当然魔物の方だった。



 粉砕。

 その言葉が良く似合う。

 粉々に砕かれた岩のような身体。

 どの部分が生命を維持するのに必要な部分だったのかは定かではないが、木っ端みじんにその身体ははじけた。



(んー。中も岩っぽいなぁ。この魔物って何を食べるんだろ? ご飯食べない系の魔物? なんでも食べるのって楽しいから私はこういう魔物に生まれなくてよかった)



 ドゥニーは呑気にその粉々の魔物の身体を見ながら考えている。



 ……当然のことだが、その様子を見ていた魔物たちは一目散に逃げて行った。


 

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