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23.『鉄壁令嬢』、砂漠の魔物の本を読む。



「お嬢様、本日はどうしますか?」

「今日は本を読むわ。砂漠の魔物に関する本もらったから!」


 ドゥニーはダニエスの言葉に元気よく答える。


 ドウガの妃たちと会った次の日、ドゥニーは朝早く起きると軽く散歩をした。そして散歩をした後に部屋に戻ると、以前交渉した本が届けられていた。


 その本は結構な量がある。

 その中でももっともドゥニーが気になるのは魔物の本である。魔物に関する本は届けられた本の中でも複数冊あった。



 その中でもドゥニーが気になったのは、怖ろしい魔物の絵の描かれた図鑑である。その表紙には『危険生物大百科〈砂漠編〉』と記載されている。

 あえてそれを真っ先に手に取ったのは、ドゥニーがそういう危険生物と遭遇することを望んでいるからだ。



 ドゥニーという少女は、大変好奇心に満ちた少女である。見たことのない景色を見たいと望み、戦ったことのない魔物と戦いたいとそんな闘争心にいつだって溢れている。





(どんな魔物がいるんだろう。それを考えるだけでワクワクするわ! 私が殴れないような魔物も世の中にはいたりするのかしら?)


 ドゥニーは今の所、倒してきた魔物は殴ればどうにかなるものばかりだった。だけど世の中には物理攻撃ではどうにもならない魔物もいるのだとドゥニーだって聞いたことはある。

 

 ドゥニーがぺらぺらとめくっている図鑑には、ドゥニーが求めているような物理攻撃が効かないと書いてある魔物もいた。


 それは液体状の魔物だったり、ひたすらに硬くて物理攻撃が効かない魔物だったり。



「ねぇ、ダニエス。見て、この魔物! 私と一緒みたい」

「……なんですか、こんな石のごつい魔物のどこがお嬢様と一緒なんですか?」

「ふふっ、とっても硬いんですって。剣で切りかかっても剣の方が折れちゃうなんて親近感わくわぁ」

「お嬢様、こんな恐ろしい見た目の魔物に親近感わかないでください」



 ドゥニーはその魔物のことを考えるだけで楽しいのか、にこにこしている。

 ちなみにドゥニーも『鉄壁』の加護があるためまず武器も通らない。はじかれたり、折れたりするものである。

 加護というものは本当に不思議な効果を持ち合わせており、悪意なく触れるとドゥニーの肌はもちもちしているのに、発動しているときはそれだけ硬い。


 

「この魔物を私が殴ったらどうなるかしら」

「お嬢様の方が勝つと思います。それか拮抗してどちらも負けないか」

「ふふふっ、それも楽しいわ。私と引き分けに持ち込める魔物なんていないもの。そういう魔物が居たらきっと面白いことばかりだわ」

「お嬢様は本当に好敵手を求めてますよねぇ。お嬢様と本当に同等程度の力を持つ者が現れたら喜びそうですね」


 ドゥニーはダニエスに言われた言葉に、思考してみる。




(私が本気で殴っても壊れない生物。私と同等の力を持っていて、私がじゃれついても大丈夫……うん、最高だわ!)


 生き物とは殴れば倒れるものである。――それがドゥニーの認識である。

 自分のようにドラゴンに食べられたり、高い所から落ちたり、灼熱の場所で動き回っても生きていけるものは中々いない。

 ドゥニーは人間だけれども、他の人間のことは自分よりもか弱くすぐに壊れてしまうものだと思っている。



 ――だから、本気で殴り掛かることはあまりない。

 人相手だと特にそうだ。なぜなら本気で殴ってしまえば、人はすぐに壊れてしまうから。





「私が本気で殴っても変わらないナニカがいるなら、一緒に居たいわ。だって一緒に居るときっと面白いことばかりになるもの!!」

「お嬢様一人だけでも大変なのに、そういう存在が現れたらますます大変なことになりそうですねぇ……」

「ふふっ、相乗効果ってやつね! きっと楽しいわよ。何だって出来る気持ちになるわよね」


 ドゥニーは楽しそうにダニエスに答えながらも、図鑑をぺらぺらとめくっている。

 その中でまた面白いものを見つけたらしい。




「ダニエス、砂漠にも竜が居るみたいだわ! また丸呑みにされてみようかしら」

「……お嬢様がやりたいなら勝手にやる分には問題ないと思いますが、周りに人が居る時にやったら心臓に悪いのでやめた方がいいと思います」

「だってピレオラ王国に現れたドラゴンと何が違うのか気になるじゃない! 体内とか、その唾液とかがどんな感じかなとか。前に私が食べられてみたドラゴンは鋭い牙を持っていたのよ。まぁ、私にはそんなのきかなかったけれど! あと割となんでも飲み込んでいたから沢山のものがあったし。ここの砂漠の竜と呼ばれるものはどんな感じなのかしら? やっぱりこういう砂漠の地で生きているからこその特徴があると思うのよね」

「王国に現れたドラゴンは街をいくつか亡ぼしてもおかしくないドラゴンだったんですよね」

「ええ。とっても大きかったわ! 私を丸呑みする時なんて地面とかまでえぐってたの! 口に含んだものをとかす力が強かったみたいで、割と雑食みたいな感じで……本当にあのドラゴンの体内を冒険するのも楽しかったわ。でも流石にのんびりすると被害がでちゃうから我慢して倒したの。今回、砂漠でドラゴンを見かけたらすぐに人に被害がなさそうなら遊べそうだわ」

「大きなドラゴンは珍しいと思いますよ」

「というか、見て、ドラゴン以外にも巨大な魔物がいるみたい。ふふっ地面の下にいるのね。地面の下に冒険にいってもいいわねぇ」

「お嬢様、それ絶対、お嬢様以外の人はいけないですよ。一応、本当に仮にも王の妃なんですから同行者がついてこれる範囲の方がいいのでは?」

「そんなの気にしていたらこの砂漠の全てを解き明かせないわ! 心配かけない範囲で一人でぶらつくのもいけるのかなーって思っているのだけど」



 ドゥニーは魔物の図鑑を見ながら、どこに遊びに行こうかと考えるだけで楽しくて仕方がない様子であった。



 そして本を読みながらドゥニーは、会いたい魔物リストを作成するのだった。




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