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14.『鉄壁令嬢』、砂漠の国の戦士たちに姉御と呼ばれる。

3/30 二話目





「もう終わり? 私はもっと身体動かしたい気分だけど」

「勘弁してください!」

「ふぅん。じゃあ仕方ないですわね!! また今度遊びましょう」



 ドゥニーの目の前には、疲労し、座り込んでいる戦士たちがいる。

 その中でドゥニーは一人、大変元気である。目の前にいる戦士たち全員を相手にした後だというのに、楽しくて仕方がないらしい。




「ところで、今すぐ砂漠に出るのは無理そうかしら?」

「流石に明日にしてください!! 姉御に誰がついていくかの選定もしますから!!」

「姉御?」



 へたり込んでいた戦士の一人が急にドゥニーのことを姉御と呼び始めたので、ドゥニーはきょとんとした顔をする。



「その強さに感服したので、敬意をもって姉御と呼ばせてもらおうと思います!!」

「まぁ、そうなのね。姉御なんて呼び方されるのは初めてだわ。面白いわね」

「それにしても姉御は本当にお強いですね……。加護といってましたが、その加護のおかげですか?」

「そうよ。私の『鉄壁』の加護は本当に凄いのよ。こんな加護を与えてくれた神様には感謝よねぇ」



 のんびりとした様子でドゥニーはそんなことを言った。

 ドゥニーは『鉄壁』の加護を大変気に入っており、その加護を与えてくれた神様には心の底から感謝していた。無邪気に笑う様子は先ほどまで戦士たちを殴り倒していた人物と同一人物には決して見えないだろう。





「姉御、明日にはもう砂漠に行く予定ですか?」

「ええ。本当は一人でも行きたいのだけど、王様が連れてけって言ってたのよ。だから一人一緒についてきて欲しいの」

「……姉御はその恰好のまま砂漠を歩くつもりですか?」

「ええ。動きやすいもの」

「その……『鉄壁』の加護というものは毒や暑さなども問題ないのですか? 日中だと灼熱地獄になるので、そのまま亡くなる者も多いのですが」

「問題ないわよ。私は多分、どんな環境でも生きられるもの。ああ、でもそれなら日中に外に出るのは遠慮した方がいいのかしら?」




 ドゥニーは楽しそうに、戦士の一人と会話を交わしている。


 ドゥニーは『鉄壁』の加護を持つので、正直身一つで砂漠の地に降り立っても問題はない。どんな環境も、彼女を傷つけることは出来ないのだから。

 とはいえ、一緒についていく戦士はそういう風に丈夫には出来ていない。





「大丈夫です!! 俺たちは砂漠の暑さへの対策はばっちりですから。姉御の手を煩わせる気はありませんので! ただ姉御は体力もありそうですが、もしかしてぶっ通しで歩いたりとかも?」

「やるかもしれないわねぇ。面白いものがあったら」

「ええっと、流石にそれは難しいです。俺たちは休まないとやっていけないので」

「ちゃんとついてくる人の体調は確認しておくわよ。でも面白そうなものがあったら一人で飛び込んじゃうかもしれないけど」

「……そ、そうですか」

「ええ。楽しそうなものがあったら私、すぐ飛び込んじゃうのよねぇ」



 ドゥニーはのほほんとしながらそんなことを言っているが、聞いている者たちは何とも言えない表情をしている。



 本当に、どんな場所にでも飛び込みそうというのがその様子から分かるのだ。

 それは無鉄砲であるとかそういうことではなく、ドゥニーが自分の力を知っているからなのである。


 戦士たちはそんなドゥニーについていかなければならないことに戦慄と興味を抱いていた。

 




「姉御……流石に自分が死ぬかもしれない場所には俺たちは突っ込めません」

「それは大丈夫よ。待っててもらうか、帰ってもらうから」

「……姉御にはいかないという選択肢はないんですね?」

「当然よ。私はやりたいように生きるって決めているもの。あ、でも日をまたぐかもしれない場合は先に王様に言っておいた方がいいかしら?」

「それは当たり前です。……姉御、せめて飛び込みたいものを見つけた場合は、一旦持ち帰りましょう!!」

「そうした方がいいのね? じゃあそうするわ。どんな光景が待っているのか凄く楽しみだわー」




 そんなことを言いながらドゥニーはにこにこしている。

 砂漠に出てぶらぶらするのが心の底から楽しみな様子である。




 そうこう話していると、急にぐぅうとドゥニーのお腹が鳴った。




「姉御! 良かったら一緒に食事はどうですか?」

「わぁ、いいのかしら? じゃあご一緒するわ!! あ、あとその辺のサボテン食べるの!」

「はい?」

「王様が許可してくれたのよ。だから、生でかぶりつくの!」

「……そうですか」



 ドゥニーを食事に誘っていた戦士は、元気にサボテンを生で食べると言う言葉を聞いて突っ込むことをやめた。


 短い付き合いでも突っ込んでも仕方がないということが分かったからだろう。

 


 その後、その辺に生えていたサボテンを素手で切断すると戦士たちの食堂に辿り着くまでの間、はむはむと食べているのであった。




 

 

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