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13.『鉄壁令嬢』、砂漠の国の戦士と戦う。



 ドゥニーの目の前には屈強な身体の男たちが並んでいる。

 彼らの視線は、ドゥニーに対する敵意に溢れている。



 見た目は小柄で、弱そうな少女。

 そうとしかドゥニーは見れない。


 だからこそ、小娘のお遊びに付き合わされるなんてと思っているのかもしれない。

 しかしやはりそこはドゥニーである。


 幾ら敵意を向けられていても特に気にした様子もなくにこにことしている。



(なんだか強そうな人たちだわ。これなら私が殴っても死なないかしら? 流石に全力でやるのはまずいから、ちょっとだけ力を抜かないと!!)



 ドゥニーの戦い方は、『鉄壁』の加護と魔力を身体に纏い身体を強化し、思いっきりぶん殴るという力任せなものである。正直言ってそこに技術的なものはそこまでない。それでドゥニーはやっていけるので問題はないのである。


 グローブを身に着けたままにこやかに微笑む小柄な令嬢。

 ……戦いの中に身を置いている戦士たちが、ドゥニーを侮るのも当然と言えば当然だった。



 幾ら大国からやってきた妃の一人とはいえ、そのような我儘を言うなんてと思っているのかもしれない。

 砂漠の国はピレオラ王国よりも厳しい環境である。

 その厳しい環境で生きてきた者たちは強者に従う傾向にある。このサデンの国の王は戦士たちからしてみれば強者であり、従うべき存在だ。その王からの要請なのでこうしてここにやってきたが、ドゥニーのことをお遊びで砂漠に出ようとしている愚かな娘としか思っていない。



「おい、お妃様よ。砂漠は貴方みたいな人が出れる環境ではない」

「あら、お妃様ではなく、名前で呼んでくださる? 私はドゥニーというの」



 威圧的に話しかけられても何のその。

 ドゥニーは相変わらずマイペースである。

 それに対していらだったような視線を向けられる。それでもドゥニーの表情は変わらない。



「貴方たちは私が力を見せれば砂漠に一緒に出てくれるのでしょう? ならば、ほら、戦いましょう」



 穏やかな淑女の笑みを浮かべたまま、ドゥニーはそんな風に微笑みかける。

 


 そして戦闘が始まったわけだが、ドゥニーのことを彼らは侮ったままである。



(うん。向こうから来ないのね。私のことを知る人たちはこんな風に私を侮るなんてことはないものね。なんだか楽しいわ。こっちからいってもいいかな?)


 ドゥニーは自分に襲い掛かってこない目の前の戦士を見て、そんな思考に陥る。



「神様、『鉄壁』の加護をありがとうございます」



 神様への感謝の言葉を口にすると、ドゥニーはその身に魔力を纏って駆け出した。

 物凄い速さで戦士の一人に迫るドゥニー。戦士の青年は、やはりドゥニーが当たり前の少女にしか見えないのか、剣を振り下ろせないでいるらしい。




(そっかぁ。じゃあ、その剣、壊して本気出してもらおうかな?)



 ドゥニーは楽しそうにそんな思考をすると、その長剣を思いっきり殴りつけた。

 そうするとぱりんっという音がして、鉄で出来た武器が粉々に砕かれる。周りで見ていたものたちが、信じられないものを見るような目でドゥニーを見ていた。






「私の『鉄壁』の加護は、最強なんですよ? その剣で振り下ろされても私には傷一つつきません。今度は剣ではなく、貴方自身を殴りますわ。ほら、剣を取ってくださいませ」



 穏やかな笑みなのに、その笑みが周りから見てまた違ったものに見えるのは――目の前の光景を見て、ドゥニーの異常性を彼らが理解したからだろう。

 ……そもそもこういう場で、楽しそうに笑っている時点で色々おかしい。自分よりも体の大きな男たちに囲まれておりながら、ドゥニーは笑っているのだから。







「くれぐれも、死なないでくださいませ」



 新品の武器へと変えた戦士を前に、ドゥニーはそういうとその戦士へと近づく。




 振り下ろされた剣は、ドゥニーの肌にあたった瞬間はじかれた。

 まるで、金属か何かにぶつかったような感覚だろう。戦士が驚いたような表情をする。



 そんな戦士にドゥニーは笑いかけ、思いっきりそのお腹を殴りつけた。



 彼自身は何が起こったのか分からなかっただろう。

 一瞬でその身体は浮き、ぶっ飛ばされた。そして壁へと激突する。……壁にひびが入っているのは気のせいではないだろう。





(あ、そっか。この建物の事も考えておかないと。流石に壊しちゃったら駄目だよね? というか、勢いよくぶっ飛んだけれど流石に死んではないよね?)



 ドゥニーはそんなことを考えながら、壁に激突し、そのまま地面へと落ちた戦士へと近づく。



 それを見た周りの者たちが慌てて止めた。




「ま、待て!! これ以上は無理だ」

「ん? 別に追撃しようとはしてないですよ。死んでたら困るなって確認しようと思って」

「そ、そうか。それならよかった」



 周りの者たちはドゥニーのその雰囲気に、このまま追撃すると思ったらしい。ドゥニーの言葉を聞いて、ほっとしたように息を吐く。




「それで他の人たちも私と戦いますか? 私、手加減得意ではないですけど!! 大丈夫です?」

「……強者とは戦いたいが、ちょっと防具を準備するから待ってくれ」

「そうですねー。防具は大事ですものね!!」



 流石にこのドゥニー相手に、今の装備では危険だと判断したらしい。

 そういうわけでがちがちに防具を固めた戦士たちとドゥニーは戦うことになった。



 もちろん、『鉄壁』の加護を持つドゥニーは彼らに全勝した。






 

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