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11.『鉄壁令嬢』、砂漠の国の王に挨拶する。




「まだかなぁ」

「お嬢様、グーテ様が話をつけてくれようとしているのですから、待ちましょう」

「でもなぁ、私もっと外に遊びに行きたいなって。挨拶出来て許可が出たら砂漠の魔物狩りが出来るし」

「お嬢様、全然大人しくする気ありませんよね」

「ええ、もちろん」



 ドゥニーは部屋の中で退屈そうにしている。


 つい先日、グーテに王への取次ぎを頼んだわけだが……まだドゥニーの元へは使いがやってきていない。ドゥニーは早く挨拶をした方が楽だなと思っているので、待っている最中である。



「この場所にある植物とか、そういうのも凄く楽しいんだもの! 飾ってあるものとかも私が見たことないような素材も多くて……どんな生物が元となっているんだろうとか気になるもの。向こうだと見たことがない素材とか、実際に狩ってみたいわ」

「殴り倒しに行くつもりですか?」

「そうね。倒したことない魔物は全部倒してみたいわ。だって楽しそうでしょう?」

「同意を求めないでください。そんなことに楽しさを見出す令嬢はお嬢様だけです。断言できます」


 ドゥニーが楽しそうに告げた言葉にダニエスは突っ込みを入れる。


 好奇心旺盛なドゥニーは早く外に飛び出したくて仕方がない様子である。

 倒したことのない魔物を倒すのも楽しそうと目を輝かしているドゥニーは、まるで玩具を見つけた子供か何かのようである。



「この国の王様に会えたら私の加護のことを話した後に、魔物退治とかいく許可をいただかないと!」

「……お嬢様。あなたの異常性は初対面では理解できないのではないかと思います。いきなり魔物退治に行きたいなどというのはどうかと思います」

「え、でも結構私我慢していると思うけれど」

「そうですね。国にいた頃よりも我慢はしていらっしゃると思います。ただお嬢様は見た目と中身のギャップがすさまじいですから……いきなり魔物退治に行きたいなどといったら一人ではいかせてもらえないのではないですか」

「初めて魔物退治した時と同じパターンということよね。別に騎士などがついてきても問題ないわ」

「いえ、この国がお嬢様のために戦闘職を割くかどうか分からないと思います。頭がおかしいと思われるのでは? 一応この国に妃として来ているんですから、なるべく穏便にですよ」

「分かっているわ。私も誰かと喧嘩がしたいわけではないもの」



 にっこりと笑いながら、ドゥニーはそんなことを言う。

 ……王の機嫌を損ねることを喧嘩と表現するあたり、大分おっとりしている。

 多分ドゥニーは誰を怒らせたとしてもそういう調子であろう。



「話が分かる方だといいのだけど、そうじゃなかったらどうするか考えないと」

「……殴らないでくださいね?」

「あら、幾ら私でもすぐに殴ったりしないわよ。あまりにもひどい人だったら殴っちゃうかもだけど」

「やめましょう!」



 ドゥニーは貴族令嬢としての教育を受けているはずなのだが、中々ぶっ飛んだ思考をしている。

 『鉄壁』の加護を誇りと思っているドゥニーは、その加護を自分のために使うことを躊躇わない。


 本当に王が話も通じず、どうしようもない相手だったのならば殴るだろう。そのことが分かるので、ダニエスは止める。





「まぁ、よっぽどどうしようもない王様じゃなければ大丈夫よ」

「それはそうですね。お嬢様ってよっぽどのことないと人を悪く言ったりしないですもんね。あの王太子のことも嫌ってなかったみたいですし」

「そうね。どちらかというと好きな方だったわ。私のことを怖がってたから仲良くは出来なかったですけど!」



 ドゥニーはそんなことを言いながら楽しそうに笑っている。





 それからドゥニーの元へ王の使者がやってきたのは数日後のことだった。

 待ちくたびれていたドゥニーは、ようやくかとにこにこしている。



 身なりを整えてから、ドゥニーは侍女たちを連れて王の元へと向かった。



(王様が許可してくれたらすぐにでも魔物倒しに行きたいなぁ。砂漠地帯だと毒持ちも多いみたいだし、楽しそうだよね。魔物の巣穴とかで遊びたいかも。誰も入ったことがない場所はきっと楽しいだろうし。砂漠に埋まってみるのもいいよねぇ)



 ドゥニーはそんな楽しい妄想をしながら王の元へとたどり着く。









「お初にお目にかかります。ドゥニー・ファイゼダンですわ」



 にこやかに淑女としての礼をし、微笑む。

 どこからどう見ても当たり前にどこにでもいる貴族令嬢にしか見えない。



 そんなドゥニーを見下ろしているのは、褐色の肌の美丈夫である。

 その鋭い目は、ドゥニーのことを射抜くように見ている。


 砂漠の国は、ドゥニーの祖国よりも厳しい環境である。そんな場所で生き抜く王は戦いの場にも出る。

 その王の目から見て、ドゥニーは『鉄壁令嬢』などと呼ばれる恐ろしい令嬢には間違っても見えないだろう。








「……本当に、加護なんてものがお前にあるのか?」




 加護というものは、いわゆる力の象徴である。ドゥニーは戦闘に役立てる加護を持つ。

 しかし、ドゥニーの見た目や貴族令嬢としての作法を見るとそんな力があるとは思えないものである。



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