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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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人里の事件

 本格的な梅雨に入った幻想郷では、日中続く雨と時折り晴れからの通り雨が続いていた。

 こんな雨続きとなると鼠被害が続出していたけど、薬売りが販売した鼠避けの置物が流行して以来人里では鼠被害に遭う事は無かった。

 流行から少して博麗神社で鼠被害が続出していたけど、霊夢さんも鼠避けを導入した結果博麗神社でも鼠被害に遭う事は無かったようだ。

 放逐された野鼠はどうなったのだろうか? 

 人知れず妖獣になってしまったのではないか? そんな不安が過ぎった時だった。

 突然視線を感じた私は歩みを止めて草陰に目を向ける。

 そこには水溜りに浸かった草だけで動物の姿は無い。

 何も居ないのに感じた視線に訝しんで草陰に目を凝らすと、


「珍しい動物か何か居たの?」


「視線を感じたと思ったんだけど、気の所為かな」


「あ〜? ウチの可愛い後輩を狙う不埒者でも居るのかしらね」


「先輩が側に居れば安心安全よ」


 どんな妖怪ですら先輩が相手となると逃げ出すからね。


「人を不埒者避けみたいに言うやめてくれる?」


「ごめーん。でも先輩が頼りになるのは本当よ、頼れないけど」


「難関を乗り越えてこそ一人前の自警団だからね」


 不審な視線もきっと私の勘違いだ。そうに違いないと言い聞かせて私は見回りを再開させた。


 ▽ ▽ ▽


 雨が降り続ける中、長屋に到着すると。


「きゃぁぁぁ!!」


「誰か人を呼んで来い!」


「じ、自警団を……早く!」


「「!?」」


 喧騒な声に私と先輩は同時に騒ぎの元に駆け出した。

 長屋の一室を前に群がる人だかりに駆け付けた私と先輩は、


「自警団よ! 何が有ったのか冷静に話してちょうだい」


 動揺と恐怖に騒めく人々とは別に、長屋の一室から妖気を感じるではないか。


「先輩、私は中を!」


「頼むわ」


 私が長屋の一室に飛び込むと、妖気の気配が途絶え土間では倒れ込んだ老人と泣き縋る少女だけが残されていた。

 私は倒れている老人に屈むと、彼の頸筋に残された鋭い咬み傷と出血からもう助からないのだと理解してしまう。

 いま泣いている少女が落ち着くまで事情を聞けそうに無い。

 遠ざかった妖気を追いかけたいけど、相手の正体を知らないまま無闇に追いかけるのは返って危険だ。

 一先ず彼女が落ち着くまで待つ他にないわね。


「何が有ったのか話せる?」


 漸く落ち着いた少女に尋ねると。


「……ひぐ、何かが足元を通り抜けたと思ったらお爺ちゃんが突然倒れて」


「その何かを見たかは覚えてる?」


「速すぎて正体までは」


 少女の足元を通り抜けるってことは小さいって事だよね? それも素速い奴か。

 私は改めて部屋を見渡す。特に変わった物は無く、土間と玄関の間に鼠避けの置物がある程度だ。

 鼠が現れて老人が追い出そうとした結果、反撃に遭い喉元を咬まれたって考えられるけど。

 犯人は妖気を放っていたから野鼠では無い。それに鼠避けが有るなら鼠が現れる事も無いのだ。


「小さくて素速い……いえ、先ずはお爺ちゃんの供養が先ね」


 これは霊夢さんに頼む他にない。暫定だけど妖怪に襲われてしまったのだから。


 ▽ ▽ ▽


 博麗神社から霊夢さんを連れ、老人の供養を済ませた後。

 私と先輩は霊夢さんに一通りの顛末を説明した。


「人里で妖怪が殺人……こりゃあ他の妖怪連中が黙ってないわね」


「それも有るけど、犯人は小さくて素速い奴で幻想郷のルールを知らないと思う」


「そうなるわね。特に成り立ての妖怪はルールを知らないからねぇ」


 成り立て。つまり産まれたての妖怪の仕業。


「霊夢さんも見たと思うけど、老人の頸筋に残された鋭い咬み傷ってさ」


「妖獣の仕業ね。それも小さくて素速いってなると鼠妖怪よ」


「霊夢の勘?」


「勘も有るけど、該当する妖怪がそれ以外に思い当たらないのよ」


「鼠避けが有るのに?」


「あー、鼠避けって言っても普通の野鼠には効くんじゃないかしら? 逆に鼠妖怪は耐性が有るとか」


 それなら確かに鼠妖怪なら条件に当て嵌まる。

 当て嵌まるけど、産まれたての鼠妖怪ということ? じゃあ妖怪化した原因は……。


「絢音? 顔色が悪いけどどうしたの?」


 先輩が心配そうに顔を覗き込んだ。

 私は何でもないっと苦し紛れの笑みを浮かべ、


「霊夢さん、念の為退魔符を分けてくれないかな? 鼠妖怪となると数も多そうだし」


「……そうね。一網打尽に出来れば良いんだけど絢音ちゃんは無茶しちゃダメよ」


「巫女さん、私はぁ〜?」


「あんたは十分強いでしょうが」


 先輩と霊夢さんのやり取りに笑いが込み上がる。

 お陰で緊張感と不安が紛れたわ。

 あとは人里に住む者として今回の件を解決しなきゃ。


「じゃあ先輩、霊夢さん。此処は手分けして退治だね」


「その方が効率的か」


 私と先輩は霊夢さんから退魔符を分けて貰い、鼠妖怪の退治を開始することに。


 先輩と霊夢さんと別れてから私は普段誰も近付かない足洗い座敷に足を運んでいた。

 此処には鼠避けの置物は置かれない。かつぎりぎり里の内部に位置する場所だ。妖怪が隠れるには絶好の場所だと思う。

 私が足洗い座敷の戸に手を掛けた瞬間……背後から妖気を感じて、十手に貼り付けた退魔符から霊力の刃を作り出す。

 そのまま振り向き様に振り抜くと、


「チュ〜っ!?」


 鼠妖怪が霊力刀の刃に消滅した。


「一匹だけ?」


 足洗い座敷の中には沢山潜んでる?

 十手をそのままに左手に手錠の束を持つ。

 一度焦る心を落ち着かせてから私は入り口を蹴り破った。

 するとそこにはこちらを凝視する大量の妖気と視線が……っ!?


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