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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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博麗神社の花見

 今日は博麗神社で花見が開かれる日だ。

 自警団と協力者の慧音先生と妹紅さんでの護衛は、何度か熟しているとはいえやっぱり緊張は拭えない。

 私は用意された名簿とその場に居る人々を照らし合わせて。


「全員居るわね。体調が優れない人が居たら直ぐに言ってね」


 最終確認を終えた私は先輩に眼を配らせると、


「それじゃあ出発するよ。毎度のことだけど離れないように」


 こうして人里から花見客が一斉に移動を始めた。

 私は最後尾から周囲を警戒しつつ、里の外へ初めて出た子供達の様子に懐かしさを覚えていた。

 私も小さい頃は外への恐怖と好奇心入り混じった感情に胸が躍ったし、同時にやっぱり里の外に対する恐怖感も強まったものだ。

 なんて陽気な考えを浮かべていると一団から少し離れた位置に、黒い物体がふらふらと飛んでいるではないか。

 その黒い物体は前が見えないのか、木に打つかっては止まる。また動き出して何かに打つかるを繰り返していた。

 あぁ、ルーミアは自身の作り出す闇で視界が見えないんだった。

 無害とは言い難い妖怪だけどこっちに気付いた様子は無い。


「一応妖怪が居るから気を付けて」


 私がルーミアに視線を向けている子供達に注意を促すと、子供達は然程恐怖を感じなかったのか平然としていた。


「あれも妖怪なの? 変なの〜」


「なんかドジっぽそう」


「あれなら全然怖くないやい!」


 妖怪を舐めてかかった者の寿命は非常に少ない。これでは子供達がいつか油断してルーミアに喰われる日が来てしまうかも。


「あれでも人喰い妖怪だからね。闇に引き摺り込んで食べられちゃうよ」


 少し表情を暗くして脅かしてやると、子供達はハッとした表情で慧音先生の手を握り始めた。


「大丈夫だ。わたし達が居る限り妖怪なんて近付いて来ないさ」


 慧音先生の頼もしい言葉に人里の人々から安堵の息が漏れる。

 確かに妹紅さんまで居るこの一団を妖怪はわざわざ襲撃しないだろう。

 仮に襲撃するとすればそれは命知らずの馬鹿か成り立ての妖怪ね。


 道中、様子を伺う妖怪を先輩と妹紅さんが威圧して追い払った。

 それから何事も無く博麗神社の獣道に差し掛かった頃。

 普段は荒れ放題の獣道でも有る参道は見る影も無く、しっかりと整備された参道に変わっていた。

 最近というか、ここ数年はイベント毎に参道がよく整備されるていることが多いのよね。

 これも博麗神社に頻繁に出入りしてる山の仙人様のおかげかな?


「博麗神社は直ぐそこよ、お年寄りは足元に気を付けて。子供達は慌てない」


 先輩の声掛け一つで一団は言葉通りに動くのよね。

 やっぱり長年の経験と信頼の賜物かぁ。私だとそうは行かないんだよね。

 お年寄りは聴いてくれるけど、子供達は違う。

 あの子達は好奇心を優先させちゃうから仕方ない。

 でも、私が護衛中に子供達に怪我をさせるとか親御さんにも慧音先生にも申し訳が立たない。

 だから私はもっと成長する必要が有る。


 ▽ ▽ ▽


 昼頃に博麗神社に到着した一団は参拝を済ませ、各々の場所で美しく満開に咲いた桜を眺め始めていた。

 私と先輩は霊夢さんに挨拶もそこそこに、慧音先生と妹紅さんに近付く。


「いやぁ、毎年のことと言え今回も助かったわ」


「礼には及ばないさ。子供達も喜んでることだしな」


 満開の桜と境内で開かれた屋台に大はしゃぎで喜ぶ子供達の姿を見れば、今回の花見も無事に送り届ければ大成功と言える。

 

「わぁ〜すごく楽しそう」


「絢音も遊んできたらどう?」


「後で輪投げ屋に顔出すよ」


「今年は河童が絢音から景品を防衛できるのかな?」


 毎回河童の輪投げ屋で遊ぶ私だけど、輪投げの投擲はいい練習になるからと言ってやり過ぎた。

 その結果、いつの間にかわたしと河童の間では景品の攻防が繰り広げられることになったんだけど……今回も勝ちを譲る気は無いよ。


「毎度思うけどさ、あの大量の景品はどうしてるんだい?」


 妹紅さんに聞かれた私は子供達に視線を向けながら。


「一部は部屋に飾ってますけど、後は人里の子供達に配ってますね」


「なるほど、慧音の教え子は出来た子だな」


「妹紅にそう言われると照れますね」


 慧音先生は妹紅さんや年配の方には敬語で話す。

 慣れ親しんだ間柄でもそれは変わらないらしい。


「しかしまぁ今年も見事な満開だ。こんな時は花見酒に限る」


「確かにこの満開を前にして飲まないのは失礼かも」


「これは飲むしかないね」


「まだ仕事も有るんだ。軽くだぞ」


 もう飲酒ムードの私達を止められる者は居ない。

 むしろこういったイベント事で飲まないのは異端だ。

 

「じゃあ私は屋台で何か摘みを買って来ますね」


 屋台に向かって駆け出すと先輩から声をかけられた。


「任せるけど、甘い物だけはやめてよ?」


 りんご飴と綿飴、かき氷に桜餅が呼んでるのに。

 まあ、それは食後の楽しみにとっておこう。

 なら摘みの定番として焼きそばと焼き鳥、お好み焼き辺りにしておこう。

 さっそく妖怪経営の屋台から人数分の摘みを買うと、


「今回も挑戦して行くんだろ?」


 河童のにとりさんがにやりっと笑ってそんな事を聞いて来た。

 これは私への挑発かしら?


「もちろん。花見を堪能してからだけどね」


「酔い潰れて負けたなんて言い訳はしないでくれよ」


「あら? 私が酔い潰れようが負けた事なんて有ったかな?」


「……言ってくれるね」


 私とにとりさんは売り言葉に買い言葉で始まる。

 とは言え今は人を待たせてるからね。


「じゃあ後でね」


 私はにとりさんに小さく手を振るっと、彼女は笑みを浮かべて手を振り返してくれた。

 内心では嫌われてると思ったけど……いや、相手は商売上手の河童だからね。

 輪投げの攻防をいい宣伝に利用してるのだろう。

 こうして私は小兎姫先輩達と桜を肴に花見を楽しんだ。

 十分楽しんだ後で輪投げ屋に挑戦したけど結果は圧勝ね。

 前回よりも輪が重くなってだけど、私の能力は拘束する程度の能力。

 つまりそれが拘束可能な道具なら狙った標的に当たるということ。

 悔しがる河童と次は負けないって挑戦状を背後に私は自警団の仕事に戻るのだった。

 いやぁ、今回も大量で大満足。……子供達と大人達からは引かれちゃったけどね。


 

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