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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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冬の墓参り

 晴れ渡った冬の空の下、私は命蓮寺の墓地を訪れた。

 生憎と冬だから手向けのお花は無いけど、団子屋で買った数種類のお団子と先日子猿から貰った猿酒を持参してきた。

 両親が眠るお墓に着いた私は、最初に墓石に積もった雪を払い除けて氷を丁寧に剥がす。


「ふぅ、こんな所かな」


 墓石の掃除も終わったところで私は、持参したお団子と猿酒をお供えしてから線香をあげた。

 そして手を合わせ、


「お盆にも来たけど、今日は命日だからね……来たくなっちゃった」


 恐れられない妖怪や存在を証明されてしまった妖怪は本当の意味で死を迎えてしまう。

 朧の妖怪だった父は人畜無害で優しい性格をしてた。だから人間に妖怪として認識されなくなった父は消滅してしまったのだ。

 それから母は私が寺子屋を卒業する前の年……雪が降り積もる冬の日に亡くなった。

 以前から身体を壊して、難病を患っていたけど冬の寒さに母の弱った身体は耐えられなかったのだ。ううん、父が亡くなって精神が弱ってしまったことも原因だと思う。

 だけど今もあの時の事を思い出してしまう。同時にこうも思う、もっと速く永遠亭の存在を知っていたら?

 今でも母は生きてたかもしれないって。

 ……いけない、折角墓参りに来たのにこれでは地獄の母と父が心配しちゃうじゃん。


 何か楽しい報告をしてあげなければ、母と父が退屈しちゃう。

 そう、お土産話なら事欠かないのだ。

 何せ小兎姫先輩と自警団をやってれば語る話題も多い。

 私は先日起きた人里の盗難事件のこと、犯人が一匹の子猿でその子が大猿を助けるためにやったことだった事を語る。


「その猿酒はその子猿から貰ったお礼の品なんだ。私も飲んでみたけどかなり強いお酒でね、きっと酒豪だったお母さんとお父さんなら気に入ると思うよ」


 ま、此処は命蓮寺の墓地だから猿酒を飲まれてしまう可能性の方がずっと高いけど。

 それにしてもっと私は改めて墓石に眼を向ける。

 命蓮寺が出来る前は人里の隅っこにひっそりと埋葬されてたけど、改めて此処に移して正解だと思う。

 こんなに立派なお墓を用意して貰えたのだから、命蓮寺には感謝しかない。

 まあ、だからと言って仏門に入る気は無いけど。


「そういえば、お父さんとお母さんは理香子さんを知ってる?」


 人里で科学者というよく分からない事をしていた理香子さんは、ある日を境に里の外に出て静かに研究をしたいと言い出したらしい。

 らしいというのは、当時の私は理香子さんを里の変わり者程度にしか面識が無かったからだ。

 それから理香子さんが幻想郷の何処に研究所を構えたのかは、先輩ですら判らないという。

 何故私が理香子さんに着いて亡くなった母と父に尋ねたかと言うと。


「墓参りのついでに理香子の情報を探して来て」


 先輩に事のついでに頼まれたからだ。

 ところが理香子さんが里を出た後の経緯を誰も知らないのだ。

 それもそうかも知れない。理香子さんが里を出たのは紅霧異変より少し前。

 一時的に魔界人が幻想郷に観光に訪れた辺りからだ。


「って、お父さんとお母さんに聴いても今答えられないよね。はぁ〜正に死人に口無しね」


 墓石に語っても答えなんか返ってくる訳でも無い。

 私は一体なにをやってるのだろう? 

 でも決して声が届かない訳では無いらしい。

 地獄に居る幽霊は墓石を通じて生者の声が届く。

 それで帰りお盆に帰郷した幽霊は質問を返すのだ。

 と言っても話せる訳じゃないから仕草で意思表示されるだけだけど。

 理香子さんの手掛かりはこっちで地道に探す他にないか。


「じゃあ、私はそろそろ帰るね」


 私は小さく墓石に手を振って、墓地を離れた。

 それから遭遇した妖怪から理香子さんの情報を聴きながら人里に帰ったけど、理香子さんの情報は何も得られなかった。

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