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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
19/40

消えた奉納品

 私と先輩が道中で酔い潰れている農家の人々を起こして回っていると、若い男性が慌てた様子で駆け寄って来たのだ。


「た、大変だぁー!!」


 彼の叫び声に一斉に飛び起きた農家達は痛む頭を抑えながら、息を切らす若い男性に眼を向ける。

 私は若い男性に近寄って、


「何が大変なの? 空き巣が出たとか?」


「空き巣ならどれだけかわいいもんか! 博麗神社と守矢神社に納める奉納品が全部盗まれてたんだ!」


 若い男性の言葉に私達は自分の耳を疑った。


「そんな馬鹿な!! 巫女様方に納める奉納品は荷台に乗せた状態で蔵に置かれてる筈だぞ! それに蔵には鍵だって!」


 荷台に積み込まれた一年分の米俵と野菜が盗まれた?

 しかも博麗神社と守矢神社に奉納されるって知りながら犯行に及んだってこと?

 でも収穫祭の翌日にそんな事をする必要が?

 私が疑問点に頭を悩ませていると、先輩が混乱するみんなを落ち着かせるように声を発した。


「一先ずこの事件は自警団が処理するわ。絢音、先ずは蔵に行って状況を確かめるわよ」


「うん!」


 荷台ごとなら車輪の跡が地面に残されてる筈だけど、もしもそれが無かったら……。

 私は薄らと過った思考を一度捨てて、先輩と共に里の蔵に駆け出した。


 ▽ ▽ ▽


 蔵に到着した私達は、早速状況と証拠を調べるんだけど。

 地面には荷台を動かした痕跡が確かに有ったけど、それは荷台を出し入れする際に着いたものだった。

 だけど、奉納品を積み込んだ荷台は重みも増すから最後に蔵に入れた時の痕跡が鮮明に残されてるではないか。

 続いて地面から殻の入り口に視線を向ける。


「なにこれ? 施錠ってこんなに綺麗に両断されるものなの?」


 地面に落ちていた施錠は、綺麗さっぱり斬られていたのだ。

 鉄を容易く両断できる。しかも切断面を鏡合わせみたいにする該当ができる人物。

 私の頭にぼんやりと妖夢さんの姿が浮かんだけど、あの人は絶対に有り得ない。

 

「芸術的な切断面に惚れ惚れするわぁ〜」


「先輩、感心してる場合じゃないよ? 犯人は刀か何かを常備してる可能性が有るんだから」


 それに施錠の切断面に妖気が感じられない。

 これをやったのは人間の犯行という説も有るし、私のような半妖の類いの可能性だって有る。

 

「さて、中は如何かな?」


 そう言って先輩は蔵の中に入る。

 私もそれに倣って中に入ると、


「非常食や緊急時の食糧は一切被害が無いな」


 先輩が鋭い視線で周囲の確認を済ませていた。

 この場所に妖気なんて一切感じられない。

 弱い妖怪の妖気でも、何らかの行動に対して妖気を使えばその場にねっとりと残されるのだ。

 でも、痕跡を遺さず蔵から二つの荷台を運び出すのには、能力や妖術、妖力を使わない限り犯行は難しい。

 

「地面には荷台を出した痕跡も妖気も無い……先輩は今回の事件を如何考えてるの?」


「現場の現状証拠だけなら妖怪の仕業だけど……妖怪が人間の食糧を、ましてや博麗神社と守矢神社の奉納品を盗む訳がないわ」


 先輩の言う通り今回の事件は妖怪が犯行に及ぶメリットが何一つと無いのだ。

 昨日の収穫祭には大多数の妖怪が出入りしてたけど、みんな幻想郷縁起に記された力の有る妖怪ばかりだった。

 となると妖怪の仕業と見せ掛けて一番得する人物か、成りたての妖怪か。

 そこまで考えた私は、一つ結論に気付く。

 一番得をする人物……というか勢力に心当たりが有りすぎるのだ。


「歴史秘密結社の犯行?」


「そう見て間違いな。それに事件を伝えた若者は最近連中と接触していたからねぇ」


「えっ? 私は知らなかったけど」


「昨日の祭り中に慧音から聴いたのよ」


 なるほど、昨日判明したことなら情報共有が遅れても仕方ないかな。

 でも、本当に連中の犯行となるとこっちで先手を打たないと不味いわ。


「先輩、先ずは農家の人達に伝える?」


「現場の状況は既に若者が伝え歩いてるだろうね」


「じゃあ……いよいよ連中の逮捕?」


「そうなるわ。妖怪が傍観してるから見逃していたけど、今回ばかりはねぇ」


 私と先輩は蔵から出て、すぐさま歴史秘密結社の集会場に向かうのだった。

 ……まだ能力の判別が済んで無いけど、大騒ぎになるまえに片付けなきゃ。


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