淫らなエルフ
リーヴァの襲来は気まぐれであり、次にいつ攻めて来るか予想が付かない。
ハルトから奪った金で飲み会を画策をするハルモニアたちだったが、町へ繰り出すことは許されず、城での寝泊まりを余儀なくされた。
城での宿泊と聞いた俺は華やかなものを想像したが、実際はたかが冒険者の為に祝いの席など用意されるはずもなく、おろか王への謁見すら許されていない。
その時が来るまでは、城の離れにある平屋に缶詰にされることになる。
「なんか憧れてた感じと違うなぁ」
「しょうがないですよ――と言いたいところですが、ネクロさんにこんな扱いをするなんて許せません。直談判してきましょう」
「いいって! これ以上ややこしくしたくないよ……」
あまり大きくない部屋に六人も詰め込まれ、しかも俺を除いた全員が女性。
それだけでも慣れないというのに、皆が俺の一挙手一投足を見張るように見つめている。
「ええと……俺ばかり見てなくって、もっと好きにしてていいんだよ?」
「またまたぁ、既に好きにしてますぅ」
「ずっとネクロくんを見てたいんだよ」
「一秒でも長く視界に入れたいのじゃ」
「ネクロ様に祈っても良いですか?」
「見てるだけなんて耐えられませんわ! 私とエルフ相撲をしましょう!」
エルフ相撲ってなんだよ……
「え……遠慮しとくよ。武道家のオルルとやったら負けちゃいそうだし」
「ご安心を! エルフ相撲に勝ち負けはありませんわ! 受け攻めがあるのですが、当然私は受けのみで、そういう意味では私の負けになりますけど。さぁ、まずは四股って、土俵に勃ったら潮撒いて、はっけよいズッコンバッコン!」
「ざけんなぁ!」
「引っ込めオルル!」
「淫乱エルフ!」
またはじまったよ……
これじゃあちっともゆっくりできない。
「皆、いい加減仲良くしてよ……」
「皆で仲良くヤリたいんですか!?」
「すごぉいネクロくん! 性欲が強くって男らしい――だけど……」
「こやつらとネクロ殿が致す姿を見るなど……」
「そんなの絶対……」
「我慢ならないのですわぁあああ!」
彼女らは仲良くの意味を盛大に勘違いしているようだ。
決してそういう意味ではなかったのだけれど。
「第一、こやつらとネクロ殿が話すだけでも我慢ならん」
「それはドールだって同じだもん!」
「仲良しハーレムなんてものは、愛が無いからこそできるものですわ」
「真にその者を愛していたのなら」
「寄り付く女を……殺したくなっちゃいますからねぇ」
ハルモニアに一言がきっかけで、互いを見る目の色ががらりと変わる。
己を愛する者たちでハーレムを築いて、いちゃいちゃするってのは男なら憧れるものなのかもしれない。
でも真実は、意中の男に他の女が寄り付くのを甘んじている時点で、見た目ほど女の方の愛は強くないのかもしれない。
現実然り創作然り、見聞きすようなハーレムは、男がベタ惚れらされていると勘違いしているだけの、仮初めの楽園なのだろう。
ハーレムは愛がないからできるもの。
では愛がある女たちが集まった場合、一見するとハーレム染みたこの関係の先。
待ち受けているものは一体、何なのであろうか。
※今日は夜にもう一話投稿します。応援宜しくお願いします!




