真っ白
くっついた瞼を開くと目の前にはリンゴと金貨が置かれていた。
真っ白な空間に切り取られたような真っ赤なリンゴと、キラキラと輝く金貨。
私は何はともあれ、リンゴを手に取った。喉が渇いて仕方がなかった。かじると歯に果汁が染み込み喉に流れ込んだ。カラカラの喉に甘みとみずみずしさが広がる。
とにもかくにもここはどこで、私は誰なのだろうか。
真っ白な実験室をマジックミラー越しに見る人影があった。
二人の内、スーツ姿の人間が白衣の人間にか、自分になのか口を開いた。
「シロだな」
「君のいうグリム童話に則るのであればね」
人間たちはもう見る必要はないというようにさっさと部屋を引き上げてしまった。