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第三十五話 優雅にお茶を楽しみながら

 そして、謝恩会の日から四日が過ぎた。

 シャルロットは今日も太陽が昇る前の、薄暗い時間から活動を始めた。

 自分とマネキとクロの朝ご飯を用意し、エレノアを呼ぶための菓子を作るとともに、今日の茶菓子も作っていく。

 しかしそういったいつも通り開店時間までいろいろな作業をしていたが、いつもと違うことがひとつ起こった。


「あれっ、フェリクス様? ずいぶん早いお越しですけど、お休みなんですか?」

「まあ、一応」


 休みに一応もなにもあるのかと思ったが、シャルロットはそれ以上はあえて聞かないことにした。

 それよりは開店前に来たことがないフェリクスがいることは不思議で気になった。

 少し前ならまだわかるが開店まではまだ半刻ほど時間がある。とはいえ、言うまでもなく追い出すようなことはしないのだが。


「メニューをお持ちしましょうか? それとも、なにかおすすめ作りましょうか?」

「今、忙しい時間帯だろ。そんなに面倒な客になるつもりはないぞ」

「そうですか? じゃあ、お茶とケーキくらいは味見しておいてください。私も開店前はお茶を飲みますし」


 そう言いながら、シャルロットは戸棚から自分用の茶葉を取り出した。試作品のものは店に出せるほど量はないが、味にはそれなりに自信がある。フェリクスの好みはすでに把握済みなので、特に苦手ということもないはずだ。


「エレノアは?」

「上で柔軟体操していますよ。最近はまってるみたいで」

「……噂になっている『威厳に満ちた精霊女王』が柔軟体操もするここの店員なんて、誰も気づいていないだろうな」


 フェリクスは苦笑しながらそう言った。

 あの事件からまだ四日しか経っていないにもかかわらず、アリス喫茶店には数名の貴族が訪れた。

 そしてその貴族たちによりシャルロットがすごい精霊を使役する召喚師であることを、ほかの客にも伝えていた。

 もちろんその場にはエレノアもいたのだが、彼女が精霊女王だと誰も気付かなかったせいで後でシャルロットがクッキーを片手に愚痴を聞く羽目になったのだが。気付かれると面倒だと最初は言っていたのに、全く気付かれないと悔しいらしい。

 幸いにもその貴族たちの熱弁は庶民の客にはうまく伝わらなかったようであったが、とりあえず『なんか凄い人が店主らしい』ということはぼんやり伝わったようであった。『あなたも大変なのねぇ、だからあんなお貴族様に絡まれていたのねぇ』という風に、常連の女性陣からは同情されながら言われていた。


「まぁ、平和に経営するにはこのままが一番だから、今後もこのままの状態なのを祈りますけどね」

「……まあ、お前はそうだろうな。だからこそ、ほとんど報酬も断ったんだろう」

「あー……」


 フェリクスの指摘にシャルロットは苦笑した。

 シャルロットも決して報酬をすべて辞退したわけではない。

 最初に提示された報酬はきっちりと受け取ったお陰で店の借金も完済だ。とはいえ受け取る際に一応「やっぱり多すぎますから」と減額を提案したところ、笑顔のルーカスがそのままその金額をフェリクスに手渡したという一悶着もあったのだが。

 フェリクスいわく「借りは残さない主義だ」ということだが、シャルロットとしては貸しだと思っていないのでしっくりはこなかった。

 ただ、それだけで終わったのなら、まだよかった。

 その後、さらなる追加報酬が提示されてしまったのだ。


(まさかあの後レベッカが侯爵家の養子になって、フェリクス様の妹になって……そこからさらにお礼を渡されそうになるなんて思ってなかった)


 レベッカはエリアンナに害されていたことを示したが、彼女の実家からの勘当が解けることはなかった。レベッカ自身はそもそもエリアンナに付け入られるような状況を招いていた自分の落ち度だと納得していた。

 もちろんシャルロットはそのような話に納得はできなかったのだが、そのことに対して抗議するような時間はなかった。


 そう――レベッカの実家からの反応が分かるや否や、ランドルフ侯爵家からレベッカを養子に迎えたいとの申し出があったのだ。


「まあ、私はレベッカさんが楽しく暮らせるところを見つけたんならそれで充分だし」

「……この養子縁組は、はっきり言えば殿下の陰謀だとしか思えないけどな」

「え? それにも殿下が関わってるんですか?」


 確か『活躍を噂で聞いて』『私には息子ばかりなので』といった具合でランドルフ侯爵の嫡男――つまりは、フェリクスの父親からの申し出があったと聞いていたので、初めて聞く情報にシャルロットは目を瞬かせた。


「もちろん、親父殿が言っていたことも嘘じゃない。清廉で気高いイメージがついたレベッカ嬢を迎えることで、侯爵にも若い女性の間の噂が入りやすくなる。母上じゃ少し年齢層が違うからな。でも……」

「本来は急ぐ必要がなかった、と?」

「ああ。それでも急いだのは……まあ、うちだとルーカス殿下にとって今後都合がいい」

「……今後?」


 よくわからない情報が多く混じっている。

 しかしフェリクスの言葉を頭の中で何度も巡らせていると、一つの答えが浮かんできた。


「もしかして、殿下ってレベッカのことお妃さまに……とか……?」

「まあ、本人に尋ねたことはない話だけど。お前、他人事だと案外鋭いな」

「案外ってなんですか、案外って」


 だが多くのヒントを出されるまでは考えもしなかった可能性なので、それ以上言うことはシャルロットにはできなかった。


「え、でもいつから?」

「俺が知ってる範囲で考えれば、おそらく今回の事件があるよりだいぶ前。さすがに王子の立場で表立って略奪なんてことはできないと考えていらっしゃっただろうが、時期的には……な」


 シャルロットから見た王子はどちらかといえば政略結婚を好みそうだと思っていただけに、驚きだ。もっとも、侯爵家の令嬢になったのであれば現段階でも政略ともいえるのだが……改めて考えれば、例えいざこざとはいえ学生同士の争いに興味を持ったことに違和感をもった、当初の感覚こそ正しかったのだと思ってしまった。


(うまく丸め込まれてたって、こういうことを言うのね)


 とはいえあの王子が素直にそのような話をするとはシャルロットにも思えないし、仮にそのことでからかえば何倍にもなって返ってきそうなので、今後もあえてそのような話題を振ることはないだろう。


(ただ、微笑ましく見守るつもりは満々ではあるけれど)


 しかしそんなことを考えていると、顔がにやついてしまいそうになる。

 そんなシャルロットを見ながらフェリクスは軽く溜息をついた。


「……お前にも活躍をたたえ、改めて宮廷召喚師にならないかって誘いが来たそうじゃないか。それで今度は蹴散らしたって話だけど」

「え? あ、蹴散らすって、そんな意図があった訳じゃないんですけど、お断りはさせていただきました」


 ルーカスからの直々の申し出の時とは違い、辞めたくなれば辞めてもいいという旨を最初に説明されたうえでの勧誘だった。

 しかし、シャルロットには改めてそれを受け入れるだけの理由がなかった。


「宮廷召喚師を目指したのも、店の資金を溜めたいっていう理由だったもんな」

「はい。評価していただいたこと自体は、ありがたいんですけどね」


 だから今更誘いを受けても困ると言うものだ。

 それは『今更』というものよりも、目標が違う以上受けるわけにはいかないのだ。


「分かってはいたことだけど、残念だ」

「フェリクス様は私に宮廷勤めをして欲しいんですか?」

「そりゃな。学生時代、楽しかっただろう? でも、お前はここの主人だし、似合っている。俺が宮廷の一員であっても強くは勧められないさ」


 そうして肩を竦めたフェリクスにシャルロットも軽く笑った。


「私はここの店主で王城勤めの人間ではありませんが、もしもフェリクス様がお困りなら、私もお手伝いしますよ。ずっと助けてもらいっぱなしですから」

「むしろ今回のは俺も功労者に数えられたから、助けられたようなもんだけどな」

「なら、これからもどんどんお手伝いさせてくださいね」

「じゃあ、さしあたりもう一杯茶をいただこうか。やっぱり美味いのを飲んだら落ち着くな」


 遠慮すると最初は言っていたにもかかわらずおかわりを要求されたことはシャルロットにとっては嬉しいことだ。それは我慢しようとしていた気持ちを上回るくらい喜ばれたと言うことなのだから。


「……エリアンナのことだが、ほかにも諸々問題点が出始めているから、まだ処分には相応の時間がかかるだろう。ただ、死罪もあり得る状況ではある」

「そうですか」


 ほかの悪事があること自体に驚きはない。

 むしろ欲を丸出しにしていたエリアンナがなにもしていないというなら、それこそ驚きだ。

 幻覚薬も流通網を広げた上で、これからももっと広めていくつもりだったのではと考えていただろう。ただ、既に死罪の可能性もあるというのなら――今回の幻覚薬以上に、何か良からぬことに加担していたのかもしれない。


「キュバアル家やワント家をはじめ、今回関わっていた奴らは第一王子に多く献金をしていた。第一王子自体が命じたわけではない……と言われてしまえばそれ以上責任を追及することはできないが、手元に黒い金を第一王子も置いておけない。ケチくさいと言われないように倍額にして、寄付をしたらしい」

「……倍額にして渡したところで良い印象も与えそうにないって、凄いですね」


 しかも献金ルートが大幅に減り、資金繰りもよくないとなればルーカスが今後有利になることだろう。もっともエリアンナが第一王子についたのも、第一王子ならば今後も手のひらで転がせるからと思ったからかもしれない。そこから考えると、能力的にもルーカスのほうがもともと玉座に適しているのかもしれない。


「問題となった貴族は爵位剥奪、財産は没収となり第一王子の寄付と合算して被害者の救済に当てられる。幻覚薬に関しては裏で売っていただけになかなか見つからないだろうが、その捜索にも使われるだろうし、ほかのものもあるようだからな」

「まぁ、そこからはルーカス殿下のお仕事ですね。私たちも頑張ったんですから、殿下にも頑張っていただかないと」


 冗談めかしにシャルロットが言えば、フェリクスも軽く笑う。


「もしかしたら第一王子派の逆恨みがここにも――とは思ったが、まぁ、エレノアにクロガネがいるなら平気だろう。何かがあれば、俺も駆けつける」

「お仕事中でも?」

「むしろ仕事なら来なきゃだめだろ。休みでも、だ」


 大真面目に言ったフェリクスに、シャルロットは吹き出してしまった。


「ありがとうございます」

「笑うところじゃないだろうが」

「すみません、けど面白くてつい。でも、いろんな情報をありがとうございます。そのお話をしに来てくださったんですね」

「いや、これはついで」

「え?」

「レベッカがうちに来て、ここは人手不足だろ。手伝うよ」


 想像していなかった申し出にシャルロットは目を瞬かせた。


「え、でもお疲れじゃ」

「疲れたら勝手に休むし」

「接客なんてしたこと」

「ないけどできそうに見えるだろ?」

「……見えますね」


 休みは休むべきだと思うので否定したいシャルロットだが、フェリクスが接客を苦手としている様子がどうにも思い浮かばなかった。フェリクスが飲食店の接客などしたことはないはずなのに、なぜか謎の説得力がある。

 一応数日後にはエレノア直々の研修を終えたほかの精霊も手伝いに来てくれる予定であったのだが――今すぐ手伝ってくれるというのなら、ありがたい。


「じゃあ、お願い……します?」

「ああ、任された」

「ほう、今日はフェリクスの給仕が見れるんだな?」


 そして突然聞こえた声に、シャルロットは飲みかけていたお茶を吹き出しそうになって咽こんだ。


「大丈夫か?」

「その、大丈夫かじゃなくて……ルーカス殿下、あの、開店前なんで勝手に入ってこないでください」


 空気の入れ替えのために鍵どころか扉を開けていたものの、それは侵入者があることを想定したものではない。


(殿下、気配薄すぎる……というより、消すのものすごく上手すぎる)


 ただしフェリクスは気付いていたのか、シャルロットのように驚いた様子はなかった。これが騎士と一般人の違いなのかとシャルロットは少々恨めしく感じてしまった。


「悪いね。でも、私はあまり入室許可を得るということに慣れていないんだ」

「まあ、殿下でしたらそうでしょうけど」

「機嫌を取るわけではないが、土産だ。受け取ってくれ」


 そうしてカウンターに置かれたのは、一介の街の飲食店ではまず見られない豪華な木製の箱だった。


(宝石でも入っていそう)


 しかしシャルロットは、どうもこの箱にはそれ以上のものが入っているような気がしてならなかった。開けるのが恐ろしい。

 しかし「開けても構わない」と言われれば開けないわけにもいかず、緊張しながら箱を開ける。するとそこには向かい合わせの二つの三日月の中央にかがり火があり、周囲に月桂樹のような飾りのある紋章が鎮座していた。シャルロットに素材は分からなかったが、銀色のそれは高そうには見えた。


「お前が報酬を受け取ろうとしないから、持ってきてやったんだ」

「いや、あの、……これって」

「勲章だ。あとは看板も作っているが、それは後日届けさせる。図面だけは持ってきたが」


 そして第二王子は机の上にそれを広げた。

 そこには『王室御用達』の文字が記された看板が描かれており、シャルロットの頬は引きつった。これをもらうほどの大したことをした覚えはない。


「あの、これらは……その、どうして」

「レベッカに会いにいくときに、あれば便利だろう。フェリクスの実家とはいえ、貴族の、しかも侯爵家の屋敷だ。だが、これを持っていたら臆する必要もない。だから遠慮なく使うといい」

「はい、それはありが……って、そんなに簡単に勲章って渡していいんですか!?」

「宮廷召喚師の誘いを蹴った変わり者と王家の間を繋ぐものだと思えば安いものだ。ただ、一度宮廷側から蹴っている話だ。それについては不問にするけどね」


 その試すような声色にシャルロットは目を逸らせた。

 不問だと言われているはずなのに、どこか考え直せと言われているような気にしかならないように聞こえるのだ。もっとも、それでも考えを改めるつもりは今のところないのだが。

 幸いにもルーカスもそれ以上は深く追求しなかった。


「まあ王家御用達の看板はこの場では少々浮くかもしれんが、市井の民も喜ぶだろう? 恐らく王都一安価で体験できる御用達の店だぞ」

「あ、ありがとうございます」


 看板については邪魔になることはないし、客に喜んでもらえるならありがたい。

 一介の飲食店にこのような看板があることを不思議がられることもあるかもしれないが、悪いことではない。


「さて、私はそろそろ城に戻ることにしよう。フェリクスの給仕姿が見れないのは残念だけれど、仕事を残してきているからね」

「あ、はい。お疲れ様です」


 しかしシャルロットの言葉を聞いた第二王子は、じっとフェリクスを見て動かない。フェリクスは真顔で対峙しているものの、どこか居心地が悪そうだった。


「あの……?」

「いや。フェリクスも大変そうだと思ってな」

「……決して私がこき使おうとしているわけではありませんからね」


 休日のフェリクスがここにきたのは自発的な思いやりの結果だ。決してシャルロットが無理強いしたわけではない。


「いいや、恩賞に休暇を取得したいと言ったから、何に使いたいのかと思っていたが――実に有効活用していると思ってな」

「え?」

「ではよい一日を。フェリクス、お前はまだまだ苦労しそうだね」


 そして今度こそ背を向けたルーカスは後ろ手で軽く手を振りながら店を出ていく。

 最初に開いていたドアも律儀に閉められ、カランカランとドアベルの音が響いた。


「……あの、もしかしてお手伝いのために休んでくれました?」

「殿下……。自分が仕事でレベッカ嬢のところに顔が出せないからって、八つ当たりしないでくださったらいいものを……」


 シャルロットの質問に答えず、顔に右手を当ててフェリクスは溜息をついていた。


(気を遣わせたくなかったのに、バラされて都合が悪い……というところかな)


 それなら申し訳なくは思うけれど、何も気づかない振りをしていたほうがいいのかもしれない。ただしそのような振りをしたところでそれはフェリクスにもお見通しになってしまうかもしれないが。

 

「……気にしなくていい。わかったな」

「はい。じゃあ、まったく気にしません。でも、過度に周りに気を遣ってばかりじゃいけませんよ。助けられてばかりの私が言うのもなんですが、変に勘違いされて惚れられることもでてきますからね」

「は?」

「あ、もちろん私はそんな心配しなくて大丈夫ですけど」


 当初から面倒見の良い先輩だと思っているが、確かに貴重な有給を活用してまで店の手伝いに来てくれるほどだとは思っていなかった。

 ルーカスの口からそのようなことがこぼれた時、普段からフェリクスと接しているシャルロットでさえ思わず一瞬ときめいてしまうほどだった。

 ただ、その発言を聞いたフェリクスは信じられないようなものを見る目でシャルロットを見た。


「……残念ながら、どうやら殿下の御忠告は当たるらしいな。いや、わかっていたけどさ」

「フェリクス様?」

「いや、なんでもない。ほら、店、開ける時間が来ているんじゃないか」


 頬を引きつらせておいて何でもないわけなどないだろうとシャルロットは思ったが、確かに開店時間は迫っている。

 ちょうど二階からエレノアたちも下りてきて、それぞれ接客準備を始めていた。

 そしてその途中でエレノアはフェリクスに気が付いた。


「あれ? もしかして今日はフェリクスも手伝い?」

「ああ。よろしくな」

「え、本当に? 助かるわ。レベッカがいなくなって忙しかったのよね。ねぇシャルロット、フェリクスが使えそうなエプロンってあるっけ?」

「あー……腰エプロンなら」


 エレノアとフェリクスのやり取りに巻き込まれ、シャルロットは深く尋ねるタイミングを逃してしまった。


(なんのことだったんだろう)


 とても気にはなるが、わざとフェリクスが話題を避けたがっていたあたり深く尋ねるのはよろしくないのかとも思う。なにせ今日はただでさえも手伝ってもらっている立場なのだ。気を悪くさせたくはない。


(ま、でもいっか)


 やはり気になることには変わりないが、それでも結局シャルロットが考えてもわかることではないし、今のままでは言ってもらえない。

 それならしつこく尋ねることなどせず、より美味しいお茶やお菓子を振舞い、思わず自ら謝礼がわりに話してしまう環境を作るほうが早いかもしれない。

 そう考えたシャルロットは口角をあげた。


「では覚悟しておいてくださいね、フェリクス様」

「なんだ?」

「内緒です」


 先程のお返しだとばかりに言ったシャルロットの言葉にフェリクスは目を丸くしており、それを見たシャルロットはほんの少しだけ満足してしまった。


(さて、どんなおもてなしで驚いてもらおうかな?)


 できれば今日のお礼も兼ねられるようなもてなしを行いたい。

 何のことだか伝わっていないフェリクスには関係ないかもしれないが、宣言した手前シャルロット自身が中途半端だと思うようなことはできないのだ。

 そんなことを思いながら、シャルロットは一つ深い深呼吸をした。


 そして深呼吸と共に、いったん考えていたことはリセットする。

 いまからは営業時間。しっかりお客さんと向き合わないと、本当に喜んでもらえているのかわからなくなる。


 そう頭を切り替えたシャルロットは勢いよくドアを開いた。


「ようこそ、いらっしゃいませ!」


 響かせた声は自分でもわかるくらいに弾んでおり、今日も楽しい一日になるに違いないとシャルロットは強く思った。



ーーーーーー

本日の投稿にて、第一部完結です。

ありがとうございました。

以降、不定期の投稿となりますが引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

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