第6話 武装形成
確かに感じる手応え。絶大な衝撃の感触。
総司は手を放し、勢いよく後ろに仰け反った。
間一髪、跳ね起きざまの両蹴りを躱した。
コイツ…!
跳ね上がった巨軀の胴に腕を回し、ありったけの力を込める。
持ち上げられる形になった巨軀。そしてそのまま勢いよく地面に叩きつける。
総司は知らなかったが、この体勢はプロレスのパワーボムとほぼ同じであった。
しかし技が決まることはなかった。
金属の豪腕が衝突を防いだ。ヒビ割れるアスファルト。
次の瞬間、総司の頸部に強い衝撃が走る。
足をまわされ、右脇から挟み込まれた。頸部を強烈な力で締め上げられる。三角絞めと呼ばれる技。
「ぐッッ…!」
経験したことの無い強烈な絞め。首に力を込め、耐える。
完全にキマッていた。抜け出そうともがき、左の拳をがむしゃらに叩きつける。
だが硬すぎる。何度も同じ部位に当ててもわずかな凹みもつかない。
意識が遠のく。
「諦めるか…言っておくが、僕は君を助けたりはしない。研究の成果が出なかったのは残念だが、それまでだったという事だ。君は死人に戻る」
風間の声が遠く聞こえる。
どうにか…しなければ…。
絞めつけはキツくなるばかり。
この状況を…打開するには…。
「だがコレだけでは無い。君の身体能力の強化は、あくまで武装に耐えるためのものだ」
風間の言葉を思い出す。
そうだ…武装…!
そもそもこの実験も、武装するためのもの…!
でもどうやって…!
考えがまとまらない。力尽きるのも、時間の問題だった。
離さななければ…どうにかして…離さなければ…!
死がすぐそばまで迫っている。
断片的に飛来するこれまでの記憶。走馬灯である。
幼少期、少年期、そして今に至るまで。
そして、その中には確かに彼女がいた。
舞衣ッ!!
思えば何故こんな目にあっている。
平穏に暮らしていただけだ。
平和に過ごしていただけなのに。
どうしてこんな目にあう。
どうしてこの無機物は、俺を殺そうとする。
瞬間、総司の鼓動が跳ね上がる。
…ふざけるな…!
強い怒り。そしてその憤怒は、金属の巨軀に向けられた。
思い通りにいくと思うな…デクノボウが…!
このまま俺を殺せると…思うな、その前に…!
…俺が貴様をブッ壊すッ!!
「君が相手に対して強烈な闘争心を持った時に、ナノマシンが反応して活性化。外骨格を形成し、身体能力、処理能力が飛躍的に上昇する」
この時、総司は未だかつて抱いたことの無い程の、激しい怒り、憎しみ、そして闘争心を抱いた。
このロボットに対する認識が、排除すべき脅威から憎むべき駆逐対象へと変化した。
次の瞬間、総司を絞めあげていた金属の塊は吹き飛ばされた。
操縦の体を光が覆う。
「武装…形成ッ…!!」
光が収束する。
そこには、鋼鉄の鎧に包まれた、怒りに燃える戦士がいた。