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第5話 反撃

体がヒリつく。不思議と痛みは無かった。


ナノマシンによるものか、アドレナリンのせいかはわからない。


しかしこの瞬間。総司はこの金属の死神と対峙している間に、痛みに悶える時間などは無いと悟っていた。


ゆっくりと歩を進め死神。


断頭台に立つ者の気持ちなどこれまで考えたことは無かった。


だが今ならわかる!この感覚!!


冷や汗が止まらない。鼓動が高ぶる。


時間が引き延ばされる。死神の歩みが近づく程に遅く感じる。


感覚が研ぎ澄まされる。自らの心音がこんなにもハッキリと聞こえる。


空気が肺から漏れる。喘ぐような息遣い。


体を這い回るかの様な死の恐怖。


だが、闘う。


構えを取ったその時に決意した。覚悟は済ませた。


逃げることはできない。命乞いも意味はない。


なら生きるためには、闘うしかないのだ。


構えた瞬間から総司の体は変化していた。


覚悟を決めた脳はアドレナリンを分泌。頭部に埋め込まれたシステムも反応。


血中のナノマシンが宿主の戦闘に備える。


血管はより大きく開き血流を促す。そしてそれに耐えうるように強度を上げる。


筋肉は膨張、出力は大幅に上昇。骨はより強固に。そしてそれらを維持すべく各種内蔵は処理能力を上げる。


肉体が戦闘の準備を終える頃、総司の中の恐怖は殆ど消えていた。


大量に分泌されたアドレナリンとナノマシンの影響で、恐怖心は闘争心に飲み込まれた。


喘ぐ様だった呼吸も、ゆっくりと落ち着きを取り戻した。


死神はその間もゆっくりと歩を進める。


総司はそれまでとは打って変わって冷静だった。


先程の突きを思い返す。


鈍重そうな見た目の想像を超えた俊敏さ。


間合いを一瞬で詰められた。


あと少し、もう数歩で先程の間合い。


神経を研ぎ澄ませる。


後3歩。ゆっくりとした歩幅で死神は近づく。


後2歩。研ぎ澄まされた神経、感覚がより一層時間を引き延ばす。


後1歩。ジリジリと迫る金属の死神。


間合いに、入る。


直前に時は止まった。


一瞬の予備動作。来るのは先程と同じ、突き。


総司が動く。一瞬の間の後、時間は元の速さで動き出した。


死神の豪腕が再び迫り来る。


しかし、そこには既に総司はいない。


僅かに腰を落とし、半身になって右にずれる。


打撃が空を切るその瞬間に豪腕の手首に左手を添える。


そのまま打撃の勢いに合わせて回転、右腕の死神の腕に絡ませる。


ガッチリと豪腕をロック。その一瞬、勢いよく回転。


大きく体制の傾いた巨軀、勢いそのままに宙に浮く。


加えられた回転の力。総司は豪腕を、さながら背中から太刀を振り下ろすが如く引きつける。


そしてそのまま、叩きつける。


響く轟音。砕けるアスファルト。


かつて漫画で、テレビで、何回か見た程度の技術。


かつて体育の授業で教わった程度の技術。


まさか自分が、実戦で使うことになるとは夢にも思っていなかった。


初の経験。身体能力の強化、反射速度の向上があってこその成功。強烈な突きに合わせる事が出来た。


シンプルながら、強力な技。


柔道おける代表的な投げ技の一つ。


一本背負いである。







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