色彩の魔術
暇つぶしに作りました。今やっている連載が終わったら、続き、として連載するかもしれません。もちろん、人気が出ればですがね。
「待て! 無謀だぞ」
赤色術式を使い、空間に細く長い線を描く。すると、現れる赤い棒は、術者の手により、さらに鋭利に、剣と化していく。
「今、討たねば、後に厄災となりえるでしょう! 今、ここで止めるしかないのです」
訳の分からない化け物約十体を三人の魔術師が相手している。数の劣勢により、魔術師は常に劣勢を強いられている。
「伍長! もう無理です!」
その言葉を残し、伍員の一人が爪を持つ化け物に胸を貫かれ、そのまま、絶命した。勇敢に立ち向かった伍員も尾を持つ化け物に吹き飛ばされた。
「くそ! 何故だ。なんでこんなに強い。奴らは、魔獣はこれほど強くなかったはず、我ら上級魔術師五人で相手しても、なぜ勝てない!」
しかし、無慈悲にも十匹の魔獣が爪、尾、牙でとどめを刺してくる。
「死んでたまるか! お前らごときに、負けてたまるか!」
右に赤色術式、左に青色術式を展開し、それぞれの色彩を使い、腕をクロスして、空間に籠手を作り出した。そのまま、魔獣たちに応戦を試みようとする。
「無駄だぞ」
その時、どこからか声が響いた。そして、どこからともなく、空間から火、木、水が現れ、魔獣を一掃した。
声の主は、地面からひょい、と現れた。
「だれだ、貴様!」
「恩人に貴様とはなんだ? ありがとうは?」
「なんだと? 貴様のような小僧に助けられること自体が、私にとっては不名誉な事なのだ!」
少年はため息をつき、さらに現れた魔獣を赤と青と黄の色彩で一掃、すると思いきや、三つを掛け合わせ、白色を作り出した。
「なんだ、それは!」
「白色術式、俺の持つ最強の秘技だよ」
そう言い残すと、少年は魔獣に立ち向かっていった。
飛行し、敵を通り抜け、普通では考えられないような現象を、ホイホイと出してくる。
「あー、邪魔」
腕の一振りで、三体の魔獣を吹き飛ばした。そのまま、白色術式を解除し、青と緑の色彩術式を展開した。そのまま、二つを掛け合わせ、青緑色を作り出す。
「さようなら」
青緑色術式を展開し、風を作り出した。その風は鋭く、鋭利な刃の風となり、魔獣を切り裂いた。
少年は、伍長の元へ行き、言った。
「ありがとうは?」
伍長は抗うことが出来ず、不名誉なれど、敬意を示す、敬礼をする。
「ありがとう、少年。私たちを助けてくれて。」
「ほう、都市街で美味い料理をおごってくれたらなおのこと嬉しいぞ」
おごる、を強調した少年に、伍長は従うしかなかった。
都市街の街道沿いの料理店で、異色の二人が食事をしていた。
「自己紹介がまだだった。おれはクルイ。よろしく」
「私はエルイスだ。よろしくするつもりはないからな」
「まあまあ、そう怒らずに、はげるぞ?」
「誰がはげるか!」
店の中で怒号を飛ばすエルイスに店員が注意した。
「ふん、第一、お前は何であんな危険なところにいた? それに、お前は魔術師の免許を持っていないようだが。」
その普通なら黙り込むような質問に、クルイは即答した。
「なぁに、簡単なことだよ。免許持ってないだけ。居合わせたのも偶然」
「何だと? 上級魔術師が三人でも勝てない奴に、なんで免許すら持たないお前が圧倒できたんだ。おかしいだろ」
「簡単な話だよ。白色術式を持っているからだ」
突然、店の外から悲鳴が響く。すぐさまそれに気づいたクルイは店の外へ出る。エルイスもその後を追った――もちろん、料金は払った――。
そこには大量の魔獣がおり、都市街を蹂躙している。
「はぁ、エルイス、行くぞ」
「ああ」
そういうと、二人は色彩術式を展開した。