本社・札幌へ
「えっ、貴方はポラリスの社長なんですか?」
グレンは信じられない。
秋川は隣の高層ビルを指差した。
「ニュ―ヨ―ク支店がこの隣のビルの12階なんだ」
だからいつもここの屋台でプレッツェル食べていたんだ。グレンは納得した。
「詳しく話すよ。後で支店へ来てくれよ」
それからのグレンは日本への渡航手続きや引っ越し準備などで、目まぐるしい数週間を過ごした。
ス―パーを退職し、友人のマ―ゴに別れの挨拶をした。
「いつ帰ってくるの?」
「判らないんだ。本社で暫く研修の後、ロスアンゼルスにポラリスのレストランバ―を何店舗か出すらしい。任されているんだ」
「まあ、じゃあ、今生の別れかしら」
と言って笑っていた。
そしてグレンは今、新千歳空港に到着した。日本語はカタコト程度は話せる。彼は、フランス語・イタリア語・スペイン語が堪能だ。
社長の秋川はグレンの人間性と語学力を高く買った。
新千歳空港へ出迎えてくれたのは、秋川と常務理事の村上と、秋川の息子である研造の三人。
「長旅でお疲れでしょう」と村上
「貴方の他にも現地採用された方が二人居るんですよ。一人はサンフランシスコ、あとの方はニュ―-ヨ―ク担当になります」と研造。
自分は大学がロスアンゼルスだったから、ロスアンゼルス担当になったのかもしれないと、グレンは考えた。
「研修期間は半年位から八ヶ月以内です。その間に出来れば日本語を覚えてもらいたいんだ」
と秋川社長は車の中で言った。
半年から八ヶ月で日本語をマスターしろって? これは難題だぞ。
「いや、アンタなら出来る」
社長秋川はグレンの能力を解っていた。
「構想としては、『世界の人に愛されるビ―ル』なんですよ。ですから、インタ―ナショナルな人材が必要なんです」と研造は言った。
「ボクデ、オ―ケ―デスカ?」
グレンは自分を買い被り過ぎているような気がして不安になった。
「イナフ」と社長秋川は言った。
(充分)
社宅扱いの高級マンションに荷物類を運び込み、マサチューセッツ州の両親に到着の連絡を入れた。
夜は『すすきのツァ―です』と研造の案内で、北海道一の歓楽街・すすきのへ連れていかれた。
「グレンさん、これは二人だけの秘密の話ですが」
と研造が海鮮居酒屋で切り出した。
「滞在中、女性を紹介しますよ」
「オンナ? ドウシテ?」
「だって淋しいでしょう」
続く