勝ち気なマ―ゴ
翌日の午後、マ―ゴからグレンに連絡があった。
『夕べ、貴方のマンション前で長い時間待っていたわ。風邪引いたみたい。今、熱が39.3度あるの』
「何だって!」
『夕べ、会社のパーティーだったんでしょう?私は仕方ないから、一人でワイン開けたけど、寒気がとまらなかったの。何処の病院行ったらいいのかしら。ふらふらで、歩く自信ないけれど』
「疲れもたまっているのかもしれないね。夕方4時に仕事終るようにするから、病院行く用意だけして
待っていて」
彼女は長い時間待たされた文句は言わなかった。
グレンは夕べ彼女に、『今夜は会えない』旨、連絡入れるべきだったのだ。
グレンは責任を感じた。
紅子に会うためだけで、他の事が考えられなかった。
ニュ―ヨ―クにあのまま住んでいたら、もしかしてマ―ゴと恋愛関係になっていたかもしれない。
求職も上手くいかず、恋人のシビルとも別れ、優しくしてくれるマ―ゴと上手く付き合っていただろう。
でも、今の自分は違ってしまった。
彼女は自分と男女関係を望んでいる。
今の自分には無理だ。
日本へ来て、全てが上手く行っている。そして
紅子しか見えない。
これは男の狡さなのか。
自分は冷たい男なのだろうか。
それとも、マ―ゴが札幌へやって来た事が予定外なだけだったのか。
グレンは良心の呵責に悩まされた。
夕方までに、猛スピ―ドで業務を終わらせ、マ―ゴを街の病院へ連れて行った。
「インフルエンザではなくて良かったね」
「ええ、貴方に風邪を移してしまったら、大変」
「いいよ。」
「風邪が治ったら、ニセコにスキー行きましょう。実は、ニュ―ヨ―クの友達がニセコに長期滞在しているのよ」
「それは知らなかった。友達が北海道に居るんだね?良かったね。いいよ、治ったらスキーに行こう」
グレンは、マ―ゴとニセコへスキーに行く約束をした。
グレンが了解してくれた事にとても嬉しそうな彼女は、勝ち気な一面を見せた。
「スキーは二人で行きましょうね。ねぇ、この間の女性は誰なの?」
「えっ?」
「カメラ首から下げた」
「あ、紅子サン」
マ―ゴは、高熱の割りに気丈だ。
「あまり、あの女性と親しくして欲しくないわ」
グレンは返事のしようがなかった。
マ―ゴは何としても、グレンと恋愛関係になる覚悟だった。
そのために、ニセコへのスキー旅行を持ちかけたのだ。
続く