逃げないで
外は大雪になっている。麻布の紅子のマンションは割と遠い。
グレンのマンションは大通りから、歩いても行ける距離だ。
「どうしようかしら」
「でも、明日、土曜日だよ」
グレンは、今夜は紅子を自分のところへ泊めるつもりだ。引くつもりはない。
土曜日でも、紅子は午後からは取材が何件かあるのだが、ゆっくりだ。
グレンのマンションに行けば、どうなるかは判ってる。
彼は私を誘っているのよ。
山田課長の言葉を思い出した。
「グレンと親しくするな」
グレンは、イエスと答えない紅子に言った。
「イエスと言わないのは、日本版のyesね。紅子サン、何も言わなくてオ―ケ―。今から、絶対来て」
グレンは紅子の手を引き、タクシ―を拾った。
すぐに彼のマンションに着いた。
豪華なマンションに紅子は驚いた。
「これが社宅なのね」
グレンは部屋に入ると、全ての暖房器具のスイッチを入れ、白ワインを持ってきた。
「これ、イタリアお土産。飲みましょう」
熱燗を相等飲んだ紅子は、もうワインは飲みたくはなかった。が、勧めるグレンのため、飲み始めた。
確かに美味しい。でも、酔う。
グレンの部屋はいたってシンプル。豪華なソファやテ―ブルが幾つか置いてあり、電化製品があるだけ。
紅子は睡眠不足とお酒のせいで、ボンヤリしていた。
グレンは紅子から目を離さない。
「ダイジョブ?」
大丈夫よと、答える間もなく、グレンはソファの紅子に覆い被さるように突然のキス。
そのキスは終わらなかった。
紅子はやはり、こうなんだろう、と判っていた。
グレンの長いキスが、どのくらい続いたか解らない。
「紅子サン、愛してます。逃げないで、オネガイシマス」
グレンは紅子の奴隷になってもいいと思った。
続く