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ポラリス  作者: susan
12/26

スタンリ―とマイケル

 最近、グレンだけが違う業務で、役職者や編集者と会議室に籠っていたり、外出ばかりだったり、夜は研造社長とススキノばかり歩いている。

 また、広告デザインを作っている。

スタンリ―が何をしているのか尋ねると 


「何でもない、少し手伝っているだけ」

とグレンは答えた。


 スタンリ―とマイケルに不満が芽生えてきたのは言うまでもない。最初は同じスタ―トだったはず。

 給料はいくらなのか、マイケルに聞かれたグレンは、最初の契約の金額を答えた。

 大幅にアップしたことなど、言えない。


 仲の良かった三人は、二対一になった。 



「紅子サン、素敵デス」

 グレンは紅子と北海道大学近くのフレンチレストランに来ている。


「グレンも素敵よ、貴方が街を歩くと、皆が振り返るわ」


 二人は白ワインで乾杯し、パンフレットに使えそうな料理を注文した。そして、どの料理がポラリスビ―ルのどのフレ―バ―に合いそうか、考えた。


「考えながら食べるって、お腹一杯にならないんだけど、グレン、貴方はどう?」


「フレンチはホワイトやクラシックと思ウヨ」


「ソ―スの味を壊さないように、でしょ?ねぇ、帰り、ラ―メン寄らない?」


「紅子サン、元気ダカラ一杯食べる」


 フレンチは苦手なのよ。量も少ないし。


 レストランの帰り際、オ―ナ―シェフと交渉し、パンフレットの料理監修の協力を得られる事になった。

 二人は札幌駅近くの有名ラ―メン店で味噌ラ―メンを、食べて体を暖めた。

 もう、11月だ。

 グレンが札幌に来て4ヶ月が過ぎようとしている。

 スタンリ―とマイケルは、クリスマス前にアメリカに帰国する。その後、サンフランシスコとニュ―ヨ―クのレストランバ―の支配人として活躍する予定だ。

 グレンはポラリスのヨ―ロッパシェア拡大のため、フランスやイタリア、スペインへの出張が増えてくる。札幌から海外出張へ行く生活サイクルになると、研造社長に言われている。


 「グレン、クリスマスはアメリカ帰るの?」


 「ノ―、帰らない」


 「そう、じゃあ、良かった」


 「ドウシテ?良かった?」


 グレンと紅子は、札幌駅から地下街に入る入り口を探しながら、夜の街を歩いた。あまりの寒さに震えている。

 グレンは紅子の背中に長い筋肉質の右腕を回し、自分の体に引き寄せた。

 そして、紅子の左頬にキスをした。


 紅子の体に小さな電流が走ったように感じた。


 やだ、本気になってはダメ。ダメよ。

 「もう、遅いから、帰るわね」


 グレンは悲しそうな表情をした。

 「僕と、ツマラナイ?」


 「とても楽しいわ。でも、私たち、明日も仕事あるでしょう?」


 「紅子サンと、居たい。デモ、オ―ケ―。帰る」


 グレンは東西線、紅子は南北線。地下鉄大通り駅で別れた。


 危ない。私らしくない。本気になったら、絶対ダメよ。

 

 紅子はこの先、グレンと顔を合わせて好きにならずにいられるか、自信がなくなってきた。


 グレンは今夜、もっと、紅子と過ごしたかった。

 抱き締めてキスをしたい激情を抑えなくてはならない。この先、仕事で何度も会う。

 切なさを抱いて帰宅したグレンだった。   


 マンションに戻ると、ニュ―ヨ―クの友人のマ―ゴから国際電話が入った。

「私も日本に住んでみたいの。札幌へ行くわ。来月中に」  


「本当?いいよ、来たら。寒いよ、こっちは」


 気軽な友人のマ―ゴ。

 だが、この時グレンは、彼女が日本に住みたいのではなく、グレンが好きでニュ―ヨ―クから追って来るのだという事に気付いてなかったのである。  


         続く

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