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短編集

ふたつの国のお話

作者: よぎそーと
掲載日:2017/11/06

 ある所に、横暴な者が治める国がありました。

 横暴なだけに他の者の話は聞きません。

 政治は全て横暴者が決定します。

 他の者はその命令を聞くだけで、拒否する事は出来ません。

 拒否すれば死刑です。

 なお、逮捕して裁判、なんて事もありません。

 命令拒否はその時点で殺されても文句が言えないのです。



 一方で、話し合いで物事を決める国がありました。

 この国は何かをやるにしても話し合いをし、様々な意見を聞きます。

 その為、国の様々な所から意見を汲み取り、それらを突き詰め合わせていきます。

 そうやって様々な者達の意見を聞く事でやるべき事を決めていきました。

 様々な意見を言えるようにするため、発言は常に守られます。

 発言したからといって捕らえれたり罰が与えられたりはしません。

 話し合いで決まった事に背かない限りは罰にならないのが普通です。

 また、例え話し合いで決まったとしても、不服があればその決まりを再考する事が出来ます。

 なぜならば、それも意見の一つだからです。

 そうやって話し合いを、人々の意見を汲み取る事にしてるのです。



 横暴者の国では、人々は横暴者の言う事を聞くしかありません。

 逆らえば殺されます。

 だから、反抗する者はまずいません。

 胸の中で何を考えていようとも、それを表に出したら殺されるからです。

 場合によっては、表に出して言わなくても殺される事があります。

「こいつはそんな事をやってるように見えた」と言われただけで。

 なので、横暴者の国では誰もが愛想良くしてねばなりませんでした。

 特に横暴者に対しては、誰も文句は言いません。

 言えるわけもありません。

 例え誰も見てない場所であっても、決して本心を表に出す事はありません。

 どこで誰が見てるか分からないからです。

 それに隠し事というのはどうあっても表に出てしまうものです。

 仮にはっきりと分かる形で表に出なくても、「お前、やっただろ?」と疑われるだけで殺されます。

 だから、陰口もほとんどありません。

 ありませんというより、怖くて出来ません。



 話し合いの国では、誰でも何でも自分の考えた事や思った事を口に出来ます。

 したとしても誰もそれを咎める事は出来ません。

 やっても構わないし、喧嘩になる事も有りますが、国としてそれらを取り締まる事はしません。

 なぜなら、どんな事であってもそれらは人の考えや気持ちの表れだからです。

 それらもまた、表に出せないでいるよりは、表に出た方が意思の表明になるからです。

 それが出来なければ話し合いなど出来ません。

 話し合いで決めていこうという国の成り立ちを損なう事になってしまいます。

 だから話し合いの国では、様々な事が口に出して、あるいは掲示板や様々なところに書き出されます。

 そうやって表に出すことで考えがあらわれ、誰も彼もが嘘偽りのない本音をぶつける事が出来るのです。

 もちろん、中には嘘や出鱈目もあります。

 しかしそれらも全て意見の一つとして、罰せられる事無く表に出て来ます。

 そうやって何でも話せるようにして、言いたい事を表に出させるためです。

 もちろん、罰を食らうようなことはありません。



 横暴者は、国の民からどうやって収奪しようか、搾取しようかと考えてました。

 少しでも自分が楽をしたい、豊かになりたい、快適な生活を送りたいと思っていたからです。

 その為には、自分が働くのではなく自分以外の者達を働かせた方が良いと考えてました。

 また、働いて作ったものを強奪すれば、労することなく欲しいものが手に入ります。

 その為に横暴者は考えました。

「少しでも成果が出るようにしよう」

 そして更に考えました。

「どうやったら成果が出るのか?」

 どれだけ働かせれば良いのか、という事にもなります。

 それこそ一秒でも長く働かせれば成果は大きくなります。

 ですが、横暴者はそこで考えます。

「だが、人はそんなに働けるわけではない……」

 人間には限界があります。

 一日中働かせるわけにはいきません。

 そんな事をしたら、次の日働けません。

 一日だけ働かせて次の日から動けなくなるのでは本末転倒です。

 だから横暴者は命令を出しました。

「無理して働くな。

 次の日も働けるように、その次の日も働けるように、一日に働く時間には限界を設けろ」

 もちろん、仕事によって働く時間は変わります。

 田畑で働く人、工場で働く人、事務所で働く人、店で働く人、様々な働き方があります。

 だから、実際に何時間働くかは決めませんでした。

 無理して働かないよう注意するに留めるしかありません。

 唯一の条件は、「毎日働けるように」という事だけ。

 次の日やその次の日に影響が出ないくらいに働けという事でした。

 それでも横暴者は、「毎日働く」よう命令しました。

 ただ、これだと何もする事が無い日にどうすればよいのか、という事になります。

 そういった事もあると知った横暴者は、

「その時は休め。

 休んで次に働く時に備えろ」

と命令しました。

 働こうにも働かないでいられる日はどうしようかと悩んでいた者達は、これでほっと胸をなで下ろしました。



 話し合いの国でも同じような事は考えられました。

 一日にどのくらい働けば良いのか、という事です。

 何にせよ働かないでは生きていけません。

 暮らしていくのに必要なものを作るには、働くしかないのですから。

 でも、その為にどれだけ働けば良いのかは誰にも分かりません。

 ある者は言います。

「畑仕事は一日中やらなきゃならない。

 時間を制限しちゃ困る」

 ある者は言います。

「工場は材料と燃料が来ないとどうしようもない。

 それが入ってきてからの時間になるから、朝から夕方くらいまでしか仕事にならない」

 ある者は言います。

「事務所の仕事はあちこちから書類が届かないとどうしようもない。

 そして何時になったら書類が届くのかは日によって違う」

 ある者は言います。

「店は客が来なくちゃ仕事にならない。

 脚が来る時間はまちまちで、何時から何時までとは決めにくい」

 ある者は言います。

「物を届ける仕事は相手がいないとどうしようもない。

 日の出てるうちが一番なんだが、場合によっては夕方から後のほうが良いときもある」

 そんな風に色々な人達が様々な事を言うので働く時間を決められません。

 一日に何時間にしたら良いのか?

 仕事始めは何時で、終わりは何時が良いのか?

 話合って決めようにも決まらず、誰もが自分の都合の良い時間を切り出していきます。

 そうしてるから何も決まらないし、決まらないから時間に制限がつきません。

 なので、仕事の時間はあちこちでまちまちになっていきます。

 ある所は短時間で終わり、ある所は一日中働いてるような所もあります。

 あまりに長い時間働いてる所では、従業員が「さすがに無理だ!」と思いもします。

 思うだけでなく口に出したり、使用者に談判に出る事もあります。

 しかし、そういうときに決まって言われるのは、

「でも、(話し合いで)決まったわけじゃない」

という事でした。

 決まってないから、作業時間や労働時間が長くても取り締まる事は出来ません。

 それこそあちこちで仕事をしてる者達が好き勝手やっても問題はありません。

 そして、長時間働いても取り締まりがないから、出来るだけ長く働かせようという者が出てきます。

 同じだけの給料を出すなら、長時間働かせておいた方が良い、と思ったり考えたりする者がいたからです。

 そうやって無理矢理働かせて、成果を少しでも出させて、利益を大きくしようとしたのです。

 その為、働いてる人達はどんどん疲れて倒れていきました。



 横暴者の国では、なるべく多くの人間から成果を収奪する為に、税金を貸してます。

 もちろん、出来るだけ多く取り上げた方が横暴者の手に入れられる者は多くなります。

 なので横暴者は最初は国の民が作った物を全て取り上げようとしました。

 ですが、そこで横暴者も考えます。

「まてよ、これを全部取り上げたら、あいつら死んじまうな」

 食べる物を取り上げたら、飢え死にします。

 仕事に必要な物を取り上げたら、全ての作業が停止して、今後税金で取り立てる事も出来なくなります。

 生活に必要な物を取り上げたら、生きていくのが大変になり仕事どころではなくなるでしょう。

 なのでさすがに全部は取り上げる事が出来ません。

 では、半分くらいで良いかな、とも思いました。

「でも、半分も持っていかれたら、それはそれで大変だよな」

 作った物の半分も持っていかれたら生きていくのも大変になる。

 調べさせてそれが分かった横暴者は、さすがにそれでは大変だと思った。

 食っていけない者が増えたら、楽して生きていく事が出来なくなる。

 だから取り立てる分を3割くらいにしようとした。

 しかし、それでもまだ生活に支障が出てしまう。

 じゃあどのあたりだったら良いのかと考えていった。

「だいたい1割くらいなのかな」

 それくらいなら国の民の生活も問題は無い。

 横暴者も十分贅沢が出来る。

「なら、これでいいか」

 ここに至るまでに散々考えていた横暴者は面倒くさくなっていた。

 だから、税率は1割にしておいた。

 その為、国の民も税金で苦労する事はほとんどなくなった。



 話し合いの国でもどれだけの税率にするかを考えていった。

 さすがに全部持っていくという話はなかったが、これも様々な話が出て来た。

「高い税金は困る」

 それは多くの者が口にした。

 当たり前なので、これは誰も異論がない。

 だが、

「2割くらいまでなら」

とある者が言えば、

「それでは高い、1割までにしてくれ」

と他の者が言う。

 そして、

「いや、5割なければ国として成り立たない」

と国を運営する者達が言う。

 意見の一致を見る事もなく、話は紛糾していった。

 当然税率は決まらず税金も取り立てられない。

 国が成り立たなくなってしまう。

 なので、政府に関係する機関はあちこちで勝手に税金を取り立てていった。

「この仕事の人は3割ね」

「こっちの仕事の人は2割ね」

「うちの担当する仕事は4割で」

 仕事ごとに取り立てる税率が変わった。

 しかも、

「うちの地方なら3割のところ2割でいいよ」

「うちは2割じゃやっていけないから4割ね」

というように地域で違いすら出来ていった。

 また、

「あんたも税金を払ってよ」

「いや、俺の仕事担当する機関がないじゃん。

 払わなくていいだろ」

という話も出てきた。

 もうあっちこっちで勝手にやり出している。

 それを取り締まろうにも、取り締まる為の取り決めもないからやめさせる事が出来ない。

 それに、税金が無い事には政府が困るので、てんでばらばらな取り立て率も黙認するしかなかった。

 担当する機関がない仕事からも、取り決めがないから取り立てる事も出来ないままであった。

 その為、税率の低い地方に転居する者達も出現した。

 税率の低い、あるいは税金のかからない仕事に鞍替えする者も出て来た。

 同時に、衰退する産業もあらわれた。

 その中には農業といった人が食べる物を作る仕事もありました。

 しかし、それを止める事は誰にも出来ませんでした。

 税金として成果を多く取り立てられてしまっては生きていく事そのものが難しくなるからです。



 横暴者は更に国の民から収奪する方法はないかと考えました。

 その為には全ての産業が更に成果を上げられるようにしなくてはなりません。

 その為には何が必要なのかを考えました。

 でも、専門家ではないので考えても限界があります。

 仕方ないので金を払って専門家を雇いました。

 その専門家達が言います。

「道路が必要です」

「鉱山の開発が必要です」

「材料を海外から受け入れる港を作りましょう」

「仕事をするための道具を作る為、工場を増やしましょう」

「技術を開発するための研究所があれば良いでしょう」

「何はともあれ、読み書きや計算が出来なければ意味がありませんから、学校を」

「国内の反乱を鎮圧し、国外からの侵略を防ぐ為の軍隊もいります」

 とにかく色々言ってきました。

 他にも色々あったのですが、多すぎておぼえていられません。

「あー、分かった分かった」

 横暴者は呆れて言います。

「とにかく、出来る所からやってくれ。

 金はこれだけあるから、この中でやれ。

 この金を超えるような事はするなよ。

 やったら殺すからな」

 横暴者は横暴に言い放ちます。

 ですが、言われた彼等は逆らう事が出来ません。

 渋々と考えていきます。

「じゃあ、どこからやる」

「そうさなあ……」

「まずはこれだと思うんだが」

「いや、こっちが先では」

「これを忘れちゃいかんぞ」

 話はまとまる事無く進んで行きます。

 どれもが大事な事であり、どれも疎かに出来ません。

 しかし、だからと言って全部を進めていくのは、お金の都合もあるので無理です。

 そんな訳で悩んでる専門家達に、

「とりあえず今年のうちに何か一つは形にしろ」

と横暴者が言ってきます。

 今年のうちならまだ余裕がありますが、それでも時間は限られてます。

「仕方ない」

「出来る事を決めるか」

 とにかくすぐに出来る事。

 そして、それなりの成果が見込めるものを考えていきます。

「まず、道を造ろう。

 踏み固めて作った道とかはあるが、ちゃんと整備しないとどうしようもない」

「そうだな、人も物もちゃんと移動が出来ないとどうしようもないからな」

「町の中の整理もしよう。

 人がすれ違えるだけの道しかないんじゃ話にならん」

「それと、学校も作っておこう。

 最低限の事が分からないんじゃどうしようもないぞ」

「でも、そんなに大勢の人を教える事なんて出来ないぞ」

「なに、最初は小さいものでいい。

 とにかく、少しでも知識のある人間を増やすんだ」

 そうやって少しずつやる事が決まっていきました。



 話し合いの国でも、何を作っていくかを考えていきます。

 国が豊かになるためには、必要なものを整備していかねばなりません。

 その為、話し合いの場が設けられ、活発に言葉が行き交います。

「まずはこっちを」

「いや、これを」

「それよりもこれを」

「違う違う、まずはこっちだ」

 活発に話し合いがなされていきますが、あれも欲しいこれも欲しいというだけで話がまとまりません。

 税金はあっても、このせいで使い道は決定されずじまいです。

 そんなわけで宙に浮いてしまった税金を求めてあちこちの機関や部署がかっぱらっていきます。

 こっちで道路をつくろう、あっちで工場を造ろう、こっちで畑に必要な水路をつくろう、などなど。

 細切れに持っていかれる税金は、必要なものを作るには足りず、あちこちで中途半端なものを設置していきます。

 それどころか、「これを作るから」といってもっていった税金が着服される事もありました。

 また、作ったものがまともに機能する事もなく、例えそれなりの効果があったとしても次の年も使えるとは限りません。

 維持や運営に必要な予算を獲する事もままならないので、ちゃんと使う事が出来るかどうか分からないのです。

 そんなわけで話し合いの国では、必要な設備がまともに作られず、作られたものもほとんどが役にたたない物ばかりとなっていきました。



 ある時、横暴者は考えました。

 自分が収奪してる国の民があらぬ争いに巻き込まれたら大変だと。

 奴隷で家畜である国の民がいなくなれば、横暴者の生活が成り立たなくなるからです。

 だから横暴者は、国内にいる悪さをしてる連中を根こそぎ捕らえるよう命令をしました。

 捕らえるというよりは、見つけて殺せと言いました。

「裁判なんて面倒な事やってられるか」というのです。

 なので悪事を働いてる者達は見つかり次第殺されていきました。

 その悪事も、殺人、強盗、横領、強姦といった凶悪なものが対象ではありません。

 少額(ものによっては100円以下)の窃盗や、ちょっとした悪戯、悪口の類などを徹底させました。

「悪さをする奴は常習的にそういう事もやってる。

 見つけ次第殺せ」

というのです。

 自分が悪党だから悪党の考えや行動が分かるのでしょう。

 その為、ちょとした犯罪(そう呼ぶのも躊躇われるほど些細な事も含め)ですら殺害の対象になっていきました。

 おかげで誰もが自分の言動や行動に気をつけるしかなくなってしまいました。

 ちょっとした事で殺されるのですから、その緊張感は半端なものではありません。

 誰もが嫌々ながらも相手への礼儀を意識していきます。

 おかげでちょっとした悪さすら出来ません。

 大変生きにくい世の中になってしまいました。

 ただ、犯罪そのものが大幅に減少したのは救いではあったのでしょうか。

 なお、悪さをしてる者達の密告は推奨され、少しでも悪事を働ければ即座に通報されていきました。



 話し合いの国でも犯罪の取り締まりは重要事項です。

 悪さをしてる者達をのさばらせておいたら、普通に生きてる人達を圧迫してしまう事になります。

 なので、刑罰の設定や治安機関の制定をしています。

 ですが、実際に取り締まりがあるかというとそうではありません。

 一人一人を尊重しなければならないので、悪さをしたとしてもすぐに逮捕出来るわけではありません。

 まずは相手に同行を求めねばなりません。

 拒否されればそれまでです。

 現行犯であっても下手に逮捕しようものならば、その場で不服を申し出られ、逮捕したものが逆に逮捕されかねません。

 なので警察などの治安維持機関は仕事を全くしません。

 どれだけ真面目に犯罪を取り締まろうとしても、それが出来ません。

 この状況をどうにかしようと話し合いをしても、反対意見が出て来てまとまりません。

 その為、治安機関ではなく個人の有志が犯罪者を倒しています。

 そして犯罪者に対抗する為に武器を手にしています。

 そのおかげで話し合いの国にはあちこちに武器が蔓延しています。

 そうした武器が一部外に流れ出して犯罪者の手に回るなんて事もあるくらいです。

 もちろんの事、治安対策のための予算も、税金をうまくぶんどる事が出来ないと成り立ちません。

 それが出来ないところでは、治安機関は看板だけの存在になり、中には誰もいないという事もあります。

 こういった事情の為、話し合いの国では犯罪があちこちで起こってます。



 横暴者は贅沢をしていますが、その贅沢を続ける為に今の国を保ちたいと思ってます。 

 だから外敵から身を守るために軍隊をしっかりと揃えております。

 こういった備えを、「戦争のためのものだ」といって反対する者達もいました。

 しかし、横暴者の不安を増大させるこれらは、見つけて一人残らず殺されました。

 後になって考えを変えたと言った者も例外ではありません。

「自分が不利になったからって言ってる事を変えるような奴を信用出来るか」というのが横暴者の意見です。

 そんなわけで横暴者の軍隊は常に一定の数を保ってます。

 取り立てた税金の範囲でではありましたが。

 この軍隊が外国に侵攻することもありませんでしたが、他国がこの軍隊にちょかいを出そうなんて事もありませんでした。

 最強とまではいかなくても、近隣諸国からすればそれなりに手強かったからです。

 少なくとも、近隣諸国の軍隊よりは強かったのは確かです。

 逆に、それなのになんで戦争をしなかったのかというと、

「せっかく作った軍隊が壊れたら、元に戻すのが大変だ」

という横暴者の考えのせいです。

 なので軍隊はそれなりのものだったのですが、ほとんど戦争をする事はありませんでした。



 話し合いの国の軍隊は、もう軍隊とは言えないような代物でした。

 あるにはあるのですが、予算がつくかどうか分からないのでまともに運営出来ません。

 たまに兵器が新規購入される事もありましたが、てんでバラバラなものばかりです。

 中古の旧式もあれば、新設計の最新型まで入り乱れてます。

 兵隊の訓練も同じで、まともに訓練も出来ない状況が続いてます。

 軍隊を成り立たせる兵士すらも、地域ごとにいたりいなかったりといった有様です。

 これらをどうにかしようにも、軍隊がある事にすら反対する平和主義者が邪魔をします。

 また、それでもどうにか揃えてる軍隊がまともに活動出来るかというと、そんな事はありません。

 兵器が少ない、燃料すらも事欠く、兵士の食料すらおぼつかない、というのも理由です。

 ですが、それが全てではありません。

 一番問題は、軍隊の出動なども話し合いで決めねばならないのです。

 どのように動き、どこで戦い、どのように勝利するのかを、一つ一つ話合いで決めていきます。

 なので、まともな行動がとれません。

 そんな軍隊相手なので、近隣諸国は毎年何らかの軍事行動を起こしてるくらいです。

 何せまともに戦えないのですから、近隣諸国からすればこれほど楽な敵はいません。

 戦えば勝てる……というより、戦わずして勝つ事が出来るほど簡単な相手です。

 おかげで話し合いの国では毎年領土が少しずつ少なくなってます。

 おかげで、各地にいる人達が侵略に立ち向かってます。

 自分達で武器を買い、自分達で練習をして、侵略してくる敵国に立ち向かってます。

 こんな話し合いの国の軍隊ですが、意外な事に割と頻繁に戦争を仕掛けたりもします。

 他国から侵略を受けた後など、さすがに多くの人達が仕返しを指示するので、その度に戦争が行われます。

 ですが、誰が指揮を執るのかで話し合いが行われ、どんな作戦にするのかで話し合いが行われ、という事でなかなか上手く進みません。

 あろうことか、侵攻するにしてもその内容を話し合いで決めるので、国中にそれらがひろめられます。

 国の民が話し合いで決めるのでそうしなくてはならないのですが、当然ながら他の国にもその内容は伝わります。

 国の民一人一人が見る事が出来るのだから、他国の工作員がそれらを目にするのは簡単な事です。

 おかげで話し合いの国の軍隊は、敵国に出向いては負けるという事を繰り返しています。

 こんな調子だから軍隊に入ろうなんて人は少なく、常に軍隊は人手不足となっています。



 不思議な事に横暴者の国はそこそこ発展していきます。

 少なくとも近隣諸国の中では一番というか上位には食い込んでます。

 不思議な事に話し合いの国は年々衰退していってます。

 とりあえず近隣諸国と比べて一番下と言って良いでしょう。

 横暴者は相変わらず国の民から収奪を繰り返しているのにです。

 話し合いの国ではいつでも一人一人の意見や考えを大事にしてるのにです。

 この不思議な現象は、その後も割と長く続きました。

 少なくとも数十年くらいは。



 やがて横暴者も年老い、天寿を迎えます。

 国は息子が跡を継ぐ事になりました。

 その息子も横暴な人間です。

 彼も父にならって横暴をほしいままにするつもりでした。

 ですが、国を衰退させたら横暴も出来ないのも知っています。

 なので、横暴も出来る範囲で行う事にしました。

 それは先代となる横暴者の言葉によるところでもあります。

「いいか、国から、民から収奪するために、あいつらが豊かに肥えてなければならん。

 美味しく食べるためには、上手く太らせていかねばならん。

 そうすれば、まるまる太った極上肉が食える。

 その事を忘れるな」

 その言葉に従い、跡を継いだ横暴者も国と民を肥え太らせる事に余念がありません。

 ただ、やるべき事はそれほど多くはありません。

 先代となる横暴者が収奪のための手段を構築していたので、新たに何かを作る必要が有りませんでした。

 改善の余地は無くはないのですが、下手に手を加えて効率を落としてしまっては元も子もありません。

 だから、なるだけ今の状態を維持するように、はっきりと言えば何もしないでいる事を徹底しました。

 迂闊な改善は、逆に全てを台無しにする事を知っていたからです。

 そもそも横暴者の二代目は、自分がそんな事が出来るほどの才覚や知識をもってるとはこれっぽっちも思ってません。

 何より面倒です。

 だから、基本敵には先代のやり方を踏襲し、同じ事を繰り返していく事にしました。

 その方が楽だし、物事が上手く進むし、二代目横暴者が楽して民から収奪を出来るからです。



 話し合いの国でも代替わりはしょっちゅう起こってます。

 国の民は常に入れ替わってるのでそう驚く事でもありません。

 代替わりに引っ越しなど、様々な理由で人が入れ替わってるのです。

 特に引っ越す者達は、こんな国で生きていけないと飛び出していくので、かなり頻繁に消えていきます。

 そこまでいかず、国内で比較的まともな所に人が移る事もあるので、そういった所では顔ぶれが少し変わる事があります。

 そして人が増えた所では話し合いが頻繁に行われ、ますます何も決定出来なくなるので、やがて住みにくくなります。

 そうなるとまた人が別の地域に移るので、人の入れ替えは結構頻繁に行われてます。

 また、時間による変化もそれほど大きくはありません。

 どうせ何も決まらないので、変えるべき何かが出来上がる事もないからです。

 仮に何かが決まったとしても、次の瞬間には即座に停止させられるのですから、決まっても決まらなくても同じです。



 そんな事が更に数十年も続いた頃、横暴者の国は周辺を圧倒する力を手に入れてました。

 話し合いの国は見る影もないほど衰退していました。

 横暴者の国は特に戦争をしなくても、その国力だけで他国を圧倒し、自分の意見を押し通す事が出来ます。

 話し合いの国は存在品も同然なほど国力が衰退してるので、誰も見向きもしなくなりました。

 ただ、横暴者の国はその豊かさに周囲の国がたかってくるので、その対処が面倒になってきてます。

 話し合いの国は、あえて手に入れる価値もないと放置され、侵略も無ければ援助もないままうち捨てられてます。

 横暴者の国はその豊かさから子供も多く、将来の人口増加が心配の種になっています。

 話し合いの国では年々減少する出生数のせいで国の存続すらも危うくなっています。

 そんな対照的な二つの国ですが、どちらも他国からの干渉を受けずに済んでるという事では一致していました。

 どちらも自分達の国が自分達の手によって営まれているという点では、まとこに健全なありようを貫いてると言えるかもしれません。



 そんな二つの国の話でした。

 めでたしめでたし。

なんとなく書いてみたかった。




こっちもよろしく。

「捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった」

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