『昔々』
さあ! 衛の昔のお話に場面がきりかわりました!
「よかったら、お姉さんの相談聞いてくれない?」
「え?」
それが衛とその人の最初に話したきっかけだった。
それから二人は中に入り、区切りの間隔が大きいテーブルの席に座る。
「それで、俺になにを相談しようと言うんですか?」
「私今年から高校生なのよ」
「はぁ」
「それで、その学校ちょっと変わっててね、学校のなかで王様や女王様を決めるのよ」
「はぁ」
「お姉さんその女王に選ばれてね?」
「はぁ」
「普通は三年生がなるものだから、目をつけられちゃって」
「はぁ」
「学校さぼってるのよ」
「はぁ!?」
思わず大きく声をだしてしまう衛。
「しーっ! 図書館では静かに!」
周りを見るとかなりの人がこちらを見ていた。
衛は顔が赤くなるのを体温で分かりながら、そのお姉さんに目線を戻す。
「あんた人のこと言えねぇじゃねぇか!」
てへっと舌を出すお姉さん。
不覚にも衛はそのしぐさにドキッとしてしまい、怒っていた感情が尻尾を巻いたかのようにどこかへいく。
「あの、名前聞いていいですか?」
「ああ、そう言えば名乗ってませんでしたね。 私の名前は下雨伍樹、男の子みたいな名前だけど気にしないで」
「下雨さん、ですか」
「堅苦しいから気軽に、いつき! でも、くださん! でもいいよ。 中学のあだ名だけど」
そこで衛は少しだけ迷って、「じゃあくださんで」と答える。
「なら、あなたの名前は?」
そこで自分も名乗っていないことに気がついて、自己紹介をする。
「仁羽衛です」
「衛くん? あだ名は?」
「……ご自由に呼んでください」
衛にはあだ名で呼んでくれるような友達は少なく(決していないわけではない)、あだ名はなかった。
「じゃあ……」
そこで伍樹は頭を斜めに曲げる。 そしてなにか閃いたのか、その頭が真っ直ぐに直る。
「じゃあ、まもるんで!」
「……」
あだ名がなかったとはいえ、さすがにその呼び名はどうなのかと思う衛の考えを汲み取ることなどできるはずもなく、そのまま衛のあだ名はそれに決まってしまう。
「それで、まもるんはどうして図書館に?」
あぁ、この人本当にまもるんで通すんだ。
「あなたとほとんど同じですよ。 小学校のときに虐められてて、その虐めっ子と同じ中学なんでさぼってるだけです」
そこで伍樹は口に手を当てて、「うぷぷ」と笑う。
「……なんすか」
「子供ね」
「っ!?」
人のこと言える立場か!!?
本当は叫びたい衛を、さっきの冷たい視線が阻止する。
「あ、今人のこと言える立場か! みたいなこと思ったの? ねぇ思ったでしょ! 思ったよね、まもるん!」
その考えは汲み取れるのにあだ名の考えは汲み取れないのかよ、と衛が考えたのは当然ながら伍樹は汲み取ることはできなかった。
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