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均一世界のイレギュラー  作者: 長崎 光
15/22

 目覚めると暗闇があった。

 彼は自分の身体に心地の良い電流のようなものが走るのを感じた。身体の動かし方が分からない赤ん坊のように、手足を滅茶苦茶に動かし、視点を変えようとしてみた。

 数秒間動き回ると、スイッチが入ったかのように突然立ち上がった。身体の動かし方が分かったのだ。

 頭の向きを横に逸らし、暗闇の中にある貼り紙を見つめた。


【……~==……=~……~=~~……】


 意味が分からない線の集合体があった。そのまま見つめつづけた。


【軍事用 三式 オブシディア】


 読むことが出来た。意味も分かった。ここは軍事用ロボット、第三世代であり帝国軍主力のオブシディア製造工場なのだ。

 ここまでで、一つ分かったことがある。

 自分は、相当頭が良い。

 動き方。日本語。帝国軍。ロボット。オブシディア。全て分かる。頭の奥から無数の単語が溢れ出てくる。きっとこれは、元々自分の頭の中に組み込まれている知識なのだ。

 視界を下に向けた。自分の手のひらが見えた。自由に動かす事が出来る。僅かな照明に、金属製の拳が妖しく煌めいた。理解できた。自分はオブシディアである。それも、自我を持っているオブシディアである。


『まぁ、どうせ無理だろうけど…聞こえるかい?』


 突然、金属の身体の内から音声が響いた。驚いて周囲を見渡すが、何者かが存在している様子はない。横たわって並べられているオブシディア達のみだ。通信かと疑ってみたが、こんなチャンネルは設定されていない。データが無い。理解が出来ない。


『…驚いた、聞こえているのか。こんなケースは初めてだ…まさかロボットに話しかけることになるとはね』


 理解できない、が、何となく許容は出来た。その事に自分自身で驚いた。「何となく」とは、何という非合理的な思考回路か。何故自分にそのような問題解決の思考が出来るのか分からなかった。


『あー…こういう時は何をしたら良いのかな?とりあえず、自己紹介でもしとくかな』


 自分の感情など知るよしもなく、響いてくる声はやけに軽かった。


『僕は東京皇帝。この国では、定義上の立場で言うと一番偉い人間だ。知ってるよね?君は面白いね。今の状況が分からないなら、僕が色々と知識をあげるよ』


 暗闇の工場で、唐突に脳内授業が始まってしまった。

 彼は後にイレギュラーと呼ばれ、帝国軍人から恐れられるロボットとなる。



 * * *



 大門を見上げてみると、息の詰まるような灰色から鉄臭さが滲み出ているようで気分が悪くなる。しかしだからといって周りの景色を見渡したところで、茶色とベージュの建物が無数に並び、薄暗く照明に照らされた空間が見えるだけである。何処を見たって楽しくはない。

 こんな時には煙草でも吸って気を紛らわせてみるものだが、隣に居る小さい部下の事を考えるとそうすることも出来ない。要するに、超暇だった。

 監視塔には二、三人ほどの警備員が待機しており、おおっぴらにサボれば確実にバレる。

 そもそも、警備と言っているのに大門の横に椅子を置いて座っているだけ…というのが舐めている。上層部曰く、佐官をこれ見よがしに配置しておくことでイレギュラーを牽制することが出来る…らしい。

 中々に頭の悪い発想である。そもそも佐官率いる大隊が束になっても傷一つ付けられなかったのだ。その情報はきちんと伝わっているのだろうか。今更イレギュラーが佐官を恐れる理由が無い。

 今はアカデミーと帝国軍、つまりはこの国を支配している二つの勢力が合議を行っている期間である。当然の如く国の要人たちがあつまる訳であり、帝国軍本部周辺の警備が優先される。最近起こったアカデミー研究員の軍部襲撃の件もあり、相当警備が強化されているようだ。その割を食う形で、居住区への大門の警備はここまで手薄になってしまった。全く、庶民の安全はどうでも良いとでも言いたいのだろうか。

 だが実際…数回の戦闘しか起こっていないとはいえ…今まで、イレギュラーから接近し、戦闘を仕掛けてきた事はない。あくまでも捕獲隊、討伐隊に対する反撃のみである。偶然なのかもしれないが、上層部はこの法則を信じきっている節もある。その意味でも、この警備の薄さは妥当と言えば妥当…なのだろうか。

 横にいる朱色の頭に視線を移す。巨大なライフルを床に置き、小振りなサブマシンガンを構えている。イメージトレーニングでもしているのだろうか。

 しかし、ただの練習であるにも関わらず動きの固さが抜けていない。休みの期間中になるだけ緊張を抜いてやろうとしたのだが、やはりそう上手くはいかなかったか。

 あるいは…安堂の家での、彼女の想いへの拒否が…その緊張の原因の一端でもあるのだろうか。少しでも、良いところを見せたいだとか…。

 とまで思ったところで、心の中で自嘲して笑った。自惚れるにも程がある。彼女にそんなに想われていたいのだろうか。単純にこれ以上の失敗は、自分の立場を危うくするのだと知っているのだろう。…都合の良い解釈をして優越感に浸りたかったのか?彼女の想いを踏みにじっておいて、偉そうにそんなことを?

 アカネにバレないように、コツン、と自分の頭を叩いた。格好悪い男だ。そのくせいつも格好つけているから質が悪い。

 アカネが立ち上がってハンドガンを構えると、照準を凝視し始めた。イレギュラー戦でハンドガンを使う機会も無いと思うが。ライフル、サブマシンガンときて、もう弄るものが無くなってしまったのだろうか。

 アカネは立ち上がっていて、こちらは椅子に腰かけている。当然視線の高さは違う。加えて、背もたれに寄りかかっているこちらと、椅子から立ち上がって銃を構えているアカネでは前後の距離がある。要するに自分は今、アカネより遥かに低い視線で、アカネの斜め後方に居るわけである。

 そうすると、視線を水平にしたままアカネの方を見たとき、見えるものもまた違ってくるわけで。

 そして、弄るものが無くなってしまったのはアカネだけではなかった。

 特に深く考えずに手を伸ばした。


「ぴゃいぃぃぃぃいいいいい!?」


 おお…予想の三割増し…いや、三倍は面白い反応をしてくれた。


「な、何、何をしてるんですかぁっ!?」

「尻を掴んだ。いや、掴んでいる」

「何で止めないんですか!?もう、離してくださいぃっ!」


 アカネがハンドガンのグリップを振り下ろしてくる。それは直撃するとちょっとまずい。素早く手を離し、自分の身体の元に引き寄せた。


「何でいきなりそんなことするんですかっ!?」

「…おい、待て、その格好は割と洒落にならんから止めてくれ」


 アカネが顔を真っ赤に染め、両手で持ったライフルを黒瀬に向ける。黒瀬は両手をアカネに向けて、何とか宥めようとしていた。


「どうせ神器の力で直るんでしょう!?腕の一本や二本は問題ないですよね!」

「恐ろしいことを言うなお前は!普通に痛いから許してくれ!あとその馬鹿でかいライフルで脳天を撃たれれば普通に死ぬ!」

《黒瀬少佐、何が起こっている?反逆行為か?援護射撃を行うか?》

「!?」


 突然通信が送られてきた。上を見やれば、監視塔に居る一人が通信機を持ちながらこちらを見ている。そうか、普通に見れば、「新世代計画」の部下が上司に反逆しているようにしか見えない。黒瀬は慌てて通信機を取り出す。


「いや、問題ない。疑似訓練の一貫だ。八号、銃を下ろせ」


 アカネも状況は把握したらしく、納得はいかないながらも渋々ライフルを地面に置いた。


《了解した。…だが、出来るだけ誤解されるような行動は止してくれ》

「了解」


 通信が切れた。黒瀬はとりあえず安堵の息をついて、アカネの方を見た。アカネはぷぅと頬を膨らませている。


「悪かった悪かった、そんなに怒るな」

「怒るに決まってるでしょ!」

「まあでも、緊張は解けただろう?ライフルも違和感無く構えられていた」

「えっ…」


 アカネは自分の両手を見つめて、不思議そうな顔をした後に、黒瀬の方に視線を戻した。


「まさか、自分の緊張を解こうとして…やってくれたんですか…?」


 黒瀬は目の動きを止めアカネを数秒間見つめた後、暫くして目線を逸らした。


「…………………………………ああ、そうだ」

「やっぱり何も考えてなかったんじゃないですか!」

「いや、違う。その、暇だったんだ」

「暇だったからで女の子のお尻を触る人は居ません!」


 アカネは頬を膨らませたまま椅子にどっかりと座った。銃はそこら中に散らばったままだが、良いのだろうか。

 黒瀬は立ったままアカネを宥め続けるか、とりあえず座るか考えていると、アカネが少し低めのトーンで言った。


「…そういうのは、本当に好きな人にやってください」


 突如として現れたその言葉は鋭刃の如く、黒瀬の心を貫いた。それまでの彼女の怒りの言葉とは全く違う重みを持っていて、黒瀬は自分のやっていたことの重さにも、また気がついた。

 アカネは隣から返事が返ってこないことを疑問に思って横を見ると、表情の固まっている男が居た。そして自分の発していた言葉を再確認し、今自分と相手の間に起きていたことに気がついた。


「…悪い」


 黒瀬はそう答えて座った。平静を取り繕ったその言葉は、逆に陰鬱に聴こえてしまった。


「あ、いえ、そんなに気にしてる訳じゃ…」


 アカネは言葉を次ぐことが出来ない。何を言ったら良いのかがわからない。


「無くて…」


 口調は段々と弱まっていき、やがてアカネの口の動きは完全に止まってしまった。黒瀬はまたしても、自分の犯してしまった罪に気がついた。

 暇だったから。緊張を解したかったから。確かにそうだ。どちらも正しい。だが本当の理由はそうじゃなかった。自分は、アカネに近づきたかった。やり方も分からないくせに。

 ―謝るくらいなら、踏み込んでくるな。

 自分の言葉だ。一人の少女に向けて言った、八つ当たりのような言葉。アカネに自分から歩み寄ろうとして、臆病風を吹かせて謝って。

 駄目だ、こんなことじゃ。自分の性分の面倒臭いせいで、周りの人間をどんどん不快にさせてしまう。安堂にもアリサにも気を使わせてしまった。アカネを困らせて、悲しませてしまっている。

 駄目ならどうする。

 どうする?

 どうしたらいいかな、俺?


 ―別に、陸の好きにすればいいんじゃない?


 明るい笑い声が聞こえた気がした。

 そうか、そうだよな。

 息を大きく吸い込んで、アカネの方に方向転換した。


「アカネ」

「は、はい」


 俯いて考え込んでいたアカネは顔を上げる。

 今度はこっちが緊張する番か。

 俺の好きにする?俺は今、何をアカネに求めているんだ?…いや、違うか。自分自身に、何を求めている?

 出された結論は。


「ごめん」


 謝る。だった。

 頭を下げる黒瀬に対して、アカネは困惑して答える。


「あの、本当に気にしてなくて、大丈夫ですから」

「いや、そのことに関してじゃない。そのこともあるが」


 踏み込んでいったのに謝るのは駄目だ。だけど、もう既にそのタブーを侵してしまった。ならそのことについてまず謝る。話はそれからだ。


「空気を悪くしてしまったことについて、すまなかった。俺が話の種を作ったんだから、一方的に俺が悪い」

「そんなことないです、私の言葉も悪くって…」

「お前は謝らなくて良い。お前が謝ったらまた俺が謝りたくなる。そうしたらお前がまた謝りたくなる。永遠に続く。そういう謝り合戦は俺は嫌いだ。だから俺が言って終わり。ごめん」

「そんな、そんなのずるいですよ!」

「ずるかない。この話は終わりだ」

「うぅ、うぅううぅぅ~!」


 アカネが唸り声を上げて黒瀬を睨み付ける。その様子が子犬のようで可愛らしい。頭を撫でたくなるが、そんなことをしたら今度こそライフルの引き金を引かれてしまうだろう。

 暫く唸り続けた後、決心したように目力を強めた。


「じゃあ私はこう言います!」


 アカネはかしこまって椅子ごと黒瀬の方を向いた。

 そして、先程の黒瀬に対抗するように深々と頭を下げて。


「ありがとうございました!」

「…は?」


 黒瀬がその言葉の意味を理解出来ずにいると、アカネはむくれた顔のまま頭を上げる。


「ありがとうございました!」

「いや、それは聞こえてるから大丈夫だ」

「何が聞こえなかったんですか?」

「殆ど聞こえてるから大丈夫だ。俺が聞きたいのは、何故不満そうな顔のまま礼を言ったのかということだ」

「不満そうに見えるのは少佐殿がずるいことをするからです!」

「礼を言ったのは?」

「服を買って貰った事に対してです!」

「…どうして今なんだ」

「少佐殿がずるいから、私も何か言わないと気が済まないからです!」

「…ほー…」


 大真面目に言い放ってくるアカネ。黒瀬はその言葉をそのまま受け止めた。奇妙に、懐かしい感情が沸き上がってくるのを感じた。

 黒瀬は俯き、口元を抑えた。

 アカネは何事かと思い、心配しながら覗き込む。


「…少佐殿?…どうかしまし…」

「…………フ……フフ…」


 笑いを堪えていた。そのことに気がついた途端に、アカネの顔は赤くなっていった。


「何笑ってるんですか!?」

「笑っ…つっ…てない。大丈夫だ。」

「つっかえってますよね!?笑い堪えてるじゃないですか!」

「いや…んなこと…フフフ……フ」

「うぅ~っ!」


 アカネはライフルを担ぐことも出来ず、黒瀬のことをポコポコ殴り始めた。本気の暴力に見られないように加減しているので、その様子もまた可笑しくて、黒瀬の笑いは収まらない。笑いが収まらないからアカネも殴り続ける、と、正に負の連鎖が始まったのであった。



 * * *



「あの、何か佐官の方の男が一方的に叩かれてますけど、いいんすか」

「ほっとけ。どう見てもイチャついてるだろうが」


 監視塔は平和だった。



 * * *



 双方共に落ち着いて、アカネの機嫌も何とか直り、二人揃って武器の整備でも再開しようとした時、黒瀬の目にあるものが映った。神器所持者の視力でないと捉えられないような距離。監視塔も、いちいち望遠カメラなどで監視はしていないだろう。

 高い建物の屋上の端に、イレギュラーが腰掛けている。リラックスした格好だが、確実にこちらを見つめている。神器所持者でないと見えない距離にいるということは、誘っているのか?


「アカネ」


 椅子からゆっくりと立ち上がり、床に座ってライフルの整備をしているアカネの肩を叩く。アカネは先程までと同じ口調で「はい?」と言って振り向いた。


「イレギュラーだ。準備しろ」


 その言葉を聞いた途端に、アカネの顔が強張る。初戦闘の相手にして、初敗北、初任務失敗の相手。緊張するのも無理はない。アカネはぎこちない動きで、ハンドガンやサブマシンガンを身につけ始める。


「大丈夫か」

「はい」

「ライフルの整備は完璧だな」

「はい」

「尻触って良いか」

「は…駄目です!」


 アカネはライフルを抱えたまま、臀部を抑えて背を黒瀬から隠す。これだけ動けるなら大丈夫か。


「監視塔、こちら黒瀬だ。イレギュラーを視認した。これより撃退に向かう」

《待て、まず様子を伺え。何もしてこないなら大門の前で座っているだけでいい。まだ合議によって奴の扱いが決まっていない》

「いや、オブシディア用スナイパーライフルでこちらを狙っている。このままでは危険だ、攻撃体制に移らせてもらう」

《何だと?イレギュラーをどう処分して良いのかが決まっていないんだぞ!もし戦闘に入っても、奴を大破させれば問題に…》

「どっちにしたってこのままじゃこっちが死ぬ。大丈夫だ、死なない程度に殺す」


 通信を一方的に切った。ちょうどアカネも準備が出来たようだ。


「行くぞ」

「はい」


 二人は大門を離れて走り出した。建物の間を縫うようにして進んでいく。途中、アカネが話しかけてきた。


「あの、少佐殿」

「何だ」

「スナイパーライフルに狙われているんじゃないんですか?こんなに無警戒に走ってたら撃たれちゃうかも…」

「それ、嘘だけどな」

「えええっ!?」


 アカネは走りながら驚愕し、バランスを崩しそうになる。黒瀬が手を取って持ち直させた。


「何でそんなことを!?」

「そう言わないと行かせてくれないだろ。完全に『来ないならこっちから行くぞ』って目をしてたしな」


 ロボットの目の表情に違いがあるのかは分からないが。


「行くことを許可はされてませんでしたよね…」

「言い訳が出来たってことさ。…さあ、そろそろ着く」


 一つの建物の前で立ち止まった。上を見上げてみるが、既にイレギュラーの影はない。場所はここで間違い無い筈だ。


「アカネ、作戦通りに」

「分かりました。…お気をつけて」

「心配するのは自分の身体だけにしろ」


 黒瀬はアカネの額を小突く。アカネは文句を言いながら、それでも少し笑って駆けていった。

 ここからは別行動となる。予め、イレギュラーと遭遇した時の作戦は決めておいたのだ。前の時の二の舞になるわけにはいかない。

 建物の中に入る。屋内の方が照明で照らしやすいこともあり、むしろ屋外より明るい。エレベーターがあったが、さすがにこれで昇っていくのは間抜けすぎる。横を通り抜けて階段を駆け上がる。

 それなりに大きい建物で、階段も中々に長い。といっても、制御区に小さな建物はそうそう無いのだが。

 一人での単独行動というのは久し振りな気がする。どんな時でも、グラディエイターを伴わない任務ならば隊員を一人くらいは連れていた。嫌な緊張感に、じっとりと手汗が浮かんでくる。首を振って無理矢理気合いを入れ直し、更に速度を上げて走っていった。

 ドアを蹴飛ばして開けた。意味はない。ちょっとやってみたかっただけだ。景気付けということにしておこう。

 今日は思い付きで動くことが多い。普段ならしないことをしてしまう。何故だろうか。


 ―物腰が柔らかくなりましたね。


 アリサの言葉。いや、そんなことは無いだろう。無い…だろ?


「おうおぅ、豪快な登場シーンだなァ、おい!」


 前方から聞こえる声。建物の出っ張りから顔を出したのは、いつか見た赤いボディ。その憎たらしい喋り方も、忘れる筈が無い。


「お前、俺を誘い出そうとしていたな?何が目的だ?やっぱり…」


 黒瀬は腰に提げていた刀…「紅蓮」に手を置く。


「こういうことか?」


 イレギュラーはククッ、と嬉しそうに笑った。


「良いねぇ良いねぇ、俺はそういうのは大好きだァ。今すぐにでもバトルスタートォ!といきたいところだが。残念、今回はそうはいかねェんだ。まずは…」


 イレギュラーは両手を広げ、全身で十字を作るような体勢になって言った。


「俺の演説を聞いて貰おォう!」

「…あ?」


 黒瀬は拍子抜けしたような、苛ついたような、良く分からない声を上げた。

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