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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
5/41

M5 帰り道、ORANGE ROD

「んじゃ、行こうか」

 並んで歩くと、なんか照れるな。

 なんて考えてみるものの、おそらく、向こうではそんなこと意識してないんだろうな。

 無言になるのが気まずくて、必死に会話のネタを探す。

「あのさー、髪、意外と黒っぽいんだな。俺、ハーフの子って金髪とかなのかと思ってた」

「……やっぱりそう思うよね」

 ちょっと声のトーンが下がる。

 ヤバい、こういうのってあんまり触れない方が良かったのかな。

「……ごめん、もしかしてハーフとか言われんの、やだったり、する?」

「ううん、ハーフなのは事実だし。たぶん、明日からも言われるだろうから、慣れておかないと」

 そう言って笑ったが、その顔はやはりちょっと無理しているように見えた。

「……それでも、やっぱごめん。俺、考えなしで……」

「いいの。謝らないで。髪はね、こういう色も結構多いんだよ、私が住んでたところでは、むしろブロンドの方が少なかったんだから」

「そういうもんなのか」

「そういえば、私の友達がね、すっごく綺麗なブロンドだったんだけど、アジア人の黒髪に憧れて、真っ黒に染めたことがあったのね」

 さっきまでの暗い表情とは打って変わって、明るい顔で小町が話し始める。

「私は見慣れないから、やっぱり前のブロンドの方がいいなって思ってたの。でもその子はとっても気に入っててね……」

「うんうん」

「でも、しばらくしたら、金髪が生えてくるわけでしょう?頭の真ん中だけ金色で、すっごく目立ってて……。皆から笑われちゃって。その子もそれで、もう黒髪になんてしない!ってもう大笑いで」

「それは確かにすっげぇ目立つな。回り真っ黒で中心が金だろ?こう言っちゃあれだけどさ。ちょっと……河童みたい……」

「河童!そう!それ!やっと出てきた……。名前が出てこなかったんだぁ……」

 小町は顔を真っ赤にして笑っていた。

 何だよ、結構笑う子じゃんか……。

 笑いすぎたためか、少し涙も出てきたらしい、指で涙をぬぐっている。

「面白いね、谷山君」

「いやいや、面白かったのは小町の話だからさ。笑った方が絶対いいよ。話しかけやすいしさ」

「そうだね。頑張る」

 そう言って微笑む小町は、本当に可憐で可愛いと思う。

 いやいや、転校生が可愛くって、家が近くて、席が隣って、何このベタな展開!これ完全に好きになっちゃうパターンじゃねぇの?

 そんなことを考えると、小町の顔をまともに見られなくなる。

 どうしたものかと思っていると、ちょうど寄ろうと思っていた本屋が近いことに気付いた。

「ちょっとだけ寄って良い?雑誌買いたいのあって」

「いいよ」

 自動ドアをくぐり、店内に入る。まっすぐ音楽雑誌のコーナーに向かう。

 ちょっと寄るだけ、と言ったからか、小町は後をついて来ていた。

 別についてこなくてもいいんだけどな。

 そう思いつつも、可愛い女の子をつれて歩くというのはちょっとした快感だ。

 今月号の『ROCK NOW』を手に取る。毎月買っているわけではないが、今月号にはお目当ての『ORANGE ROD』が載っているのだ。読みたい気持ちをぐっとこらえ、レジへ持っていく。

 会計を済ませ、店を出る前に「小町は何か見たいの無いの?」と一応聞いてみたが、特にないらしい。

 この本屋を通過すれば、家まではもうすぐだ。なんとなく名残惜しい気もする。

「谷山君、そういう音楽聞くの?」

 買った雑誌のタイトルを見たのだろう。小町が問いかける。

「ああ、まぁ、そんないろいろ知ってるわけじゃないんだけどさ、最近はまったユニットがあって。イギリスの方じゃ聞いたことないと思うけど」

 そう言って、袋から雑誌を取り出し、表紙に書かれたユニット名を指す。

「えーと、『ORANGE ROD』?オレンジの棒?」

「その辺の意味は俺もファン歴浅いからよくわかんない」

「ねぇ、どういう感じの音楽なの?」

「んーと、平たく言うと……、ロック、かな。女の子にウケるかはわかんないけど、アニメの主題歌になったりもして聞きやすいのもあるよ」

「そうなんだ……」

「小町は普段どんな音楽聞くの?」

「割と何でも聞くよ。ポップスもクラシックも聞くし、パパが演歌好きだから演歌も聞くよ。もちろん、ロックも。イギリスにもロックバンドはたくさんいるし。ねぇ、もしよかったら、私も聞いてみたいな、そのユニット」

「あ、じゃ、明日CD持ってくよ」

「ありがとう。楽しみにしてる」



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