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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
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M4 校内案内

 もしかしたら、関も同行してくれるのでは、という淡い期待は「じゃ、俺これから会議あるから」の一言で打ち消された。

 仕方なく、2人きりで校内を歩く。

 まずは、自分達の教室に向かう。

 何か話さないと気まずいよなぁ……。

「えーっとさ、俺、谷山志信(しのぶ)。さっき名前までは言ってなかったよな?」

「うん……」

「あ、ここが俺らのクラス。担任はさっきの関(はじめ)先生。教科は国語。古典も現代文もどっちもな。おもしれー先生だよ」

 ここまで言って、ちらりと小町を見る。目が合うと、視線を逸らされた。

 睫毛、なっげぇな……。

「んーと、さ。あの先生、毎日違うネクタイピンしてっから、チェックすると面白いぞ。今日の見た?」

 突然の質問に、少し驚いた顔をして、首を振った。

「……手裏剣だぜ?わかるか?手裏剣。忍者……ってわかる……?」

 そういえば、この子はイギリスから来たのだということをいまさら思い出す。

 しかし、小町は笑って、首を縦に振るのだ。忍者の認知度ってすげぇな。

「ちょっとシンプルすぎて今回はあんまり気付かれなかったって言ってたけどな。はっはー」

 そう言って、わざと大げさに笑ってみせると、小町もつられて笑ってくれた。

「そうそう、そうやってちょっと笑ってくれよ。そっちの方が俺も楽しく案内できるからさ。あー、あの窓側の後ろ、机1個分空いてるだろ?あそこが小町ちゃんの席になるんだってさ。その隣が俺の席」

 特に中にまで入る必要はないだろうと、入り口で指差す。

「……小町でいいよ」

「へ?」

「名前……。『ちゃん』とかいらない」

「え?あ、おう、そっか。そしたらさ、俺も志信でいいよ。谷山でもいいけど」

「皆はどっちで呼ぶの?」

「んー、まちまちだな。男子は志信とか、ノブとか。女子は谷山君が多いかな」

「じゃあ、私も谷山君って呼ぶ。私も女子だから」

「そっか。そうだよな」

 その後は、授業で使う理科室や視聴覚室、音楽室や体育館、図書室を案内した。

 一通り回り、更衣室の脇にある自動販売機で紙パックのジュースを2つ買い、小町に手渡す。

「ありがとう」

「家、近いんだろ?だったら歩いてもそんな距離じゃないし、歩いて帰ろうぜ」

「そうだね。道も覚えないとだし」

 小町は鞄の中から地図を取り出す。志信が覗き込んで場所を確認する。

「これは……、近いっつーか……」

 そう言いながら、地図を指でなぞる。

 その指を小町はじっと見つめている。

「あんな、ここが、学校。んで、ここをこう通って……曲がるだろ?んで、ここにコンビニで、ここがスーパーな。……で、ここが俺ん家なんだけど……。小町の家は……ここだ」

 志信の指がぴたりと止まる。

 先生、俺ん家が一番近いって……。近すぎだよ!裏じゃねぇか!

「谷山君の家の裏なんだ……」

「あそこ、売家だったもんな……。じゃ、まぁ、歩くか」

「じゃ、ママに連絡するね」

 小町は鞄から携帯を取り出した。志信の周りではスマートフォンを持っているやつが大半だったが、小町は折り畳みの携帯電話だった。それが何か嬉しくて、思わず志信もポケットから折り畳みの携帯電話を取り出し、振った。

「奇遇。俺も、携帯派」

「皆はスマホなんだけど、私、機械とかちょっと苦手で……」

「俺は別に機械が苦手じゃないんだけどさ、電話とメール出来りゃいいから」

 ニィっと笑うと、小町もそれにつられて笑い、母親に電話をかけ始めた。

 どうすっかな。アドレスとか交換した方がいいのかな。

 がっついてるとか思われたりしねぇよな?一応、クラスメイトだし、別に変じゃないよな?な?

 自分自身に問いかけるが、当然、返事はない。

「谷山君、番号聞いてもいいかな?」

 志信の心配をよそに、電話をかけ終えた小町が携帯を構えて微笑んでいた。

 何だよ、考え過ぎか、俺。

 見ると、機種こそ違うものの、同じキャリアのものだった。それなら、電話番号だけでメールも出来る。とりあえず、番号のみを教えあった。



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