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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
33/41

M33 僕でも読めたよ

 飲み物が運ばれ、騒がしい二人がリビングに戻ると、急に静けさが襲ってくる。

 何をどう話したらいいのだろう。

 そう思って小町をちらりと見ると、小町の方でも、これから一体何が始まるのかと警戒しているように見えた。

「2人とも、そんなに緊張しないで」

 信吾だけはいつもと変わらない。暖かい日だからか、今日は冷えた麦茶の入ったコップが3つトレイの上に並べられている。各自、自分の物がわかるように、という配慮からか、それぞれの色が違う。

 信吾は淡いブルーのコップを取ると、一口含み、またトレイの上に戻す。

 ふぅ、と軽く息を吐くと、ゆっくりと小町の方を向き、口を開いた。

「いきなりこういうことを言うと、びっくりするかもしれないし、気味が悪いって思うかもしれないけど、とりあえず、最後まで聞いてくれるかな」

 いつものように穏やかな語り口で、話し出す。小町は、信吾の雰囲気にすっかり呑まれているようだった。

「右目も……何かつけているよね」

 突然の指摘に驚いたのだろう、一度、小町の目が大きく見開かれる。信吾は小町からの返答を待たずに続けた。

「いま、少しだけ外せる?あれ?それって、そんなに気軽に外しちゃいけないものなのかな」

「え?えぇっと、大丈夫……です。でも……」

「心配しないで。僕は大丈夫だから」

 その言葉に後押しされ、小町はゆっくりと右目のコンタクトを外した。外したレンズはどうするのだろう、と志信(しのぶ)が見ていると、「谷山君、鞄の中にケースが入ってるんだけど、取ってくれないかな」と言った。

 小声で「失礼します」とつぶやいて小町の鞄を開ける。きちんと整頓されているその中に、小さなプラスチックのケースがある。

「コレ?」と渡すと、エメラルドグリーンの瞳でじっと見つめた後、にこりと笑って受け取った。外したコンタクトをその中にしまう。

「久しぶりに見たよ。綺麗な瞳だね」

 それだけ聞くと、まるで口説き文句のようだ。信吾の口からそんな台詞が出てきたなんて祥太朗が知ったら、何て言うだろう。

「久しぶり……ですか……」

「ああ、君の瞳ではないんだけどね。僕は君と同じ子達に会ったことがあるんだ」

「私と……、同じ……」

「さて、ここには志信君がいるわけなんだけど、いろいろ話しても大丈夫かな。もし君が聞いてほしくなければ、席を外してもらうけど」

 小町はちらりと志信の方を見た。

 小町、俺はさ、お前が嫌なら聞かねぇよ。……ほんとは聞きたいけどさ。

 ……って、これ読まれてんのか!やべぇ!

 拗ねたように口をとがらせた後で、明らかに動揺している志信を見て、小町はくすくすと笑った。そして、信吾の方を向く。

「大丈夫です。谷山君がここにいても」

「それなら、良かった。あと、志信君、いまのは彼女じゃなくても僕でも読めたよ」

「読めたって……、何を……?」

「君の、心だよ」

 信吾は目を細めて笑った。



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