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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
31/41

M31 turn off the love

 少しでも早く櫻井家に着かなければ。ここで下手に説明してしまったら、道中が無言になる危険性がある。

 校内で信吾の話はしづらいので、仕方なく、雑用係の苦労話を語ってみる。

 ネタが尽きかけると、関のネクタイピンに話題をスライドさせる。今日は肉球だったよな、というと小町も気付いていたらしく、かわいかったね、と笑った。

「そうそう、関先生のネクタイピンなんだけど、どこのブランドか知ってる?」

 珍しく、小町から問いかけられる。

「ブランド……。そう言えばそういうのって聞いたことないな。ていうか、アレ全部同じブランドなのか?」

「ちょっと気になっちゃって、関先生に聞いてみたの、そしたらね……。谷山君、びっくりだよ」

 そう言うと、小町は軽く顎を引いて上目づかいになり、いたずらっぽく笑った。

 やべ、すげぇ可愛い……。上目づかいなんて媚び売ってるみたいで嫌だって思ってたのに、何だよ、なんでこんな可愛いんだよ。

 無意識にそう思ってしまい、慌てて、取り繕うように次の言葉を探す。

「び、びっくりってなんだよ」

「全部ではないみたいなんだけど、ほとんどが『turn(ターン) off(オフ) the() love(ラヴ)』ってブランドのみたいなのね。で、そのブランドのデザイナーさんっていうのが……」

「いうのが?」

「何と!」

「……随分もったいつけるんだな」

「ふふ、ごめんごめん。あのね、『ORANGE ROD』のAKIさんなんだよ!」

「……っえ?ええ?マジ?」

「マジだよー。ネクタイピン以外にもあるのかなって、ネットで調べてみたら、ホームページに普通に書いてあってね」

「多才だな……。ツアーグッズのデザインしてるのは知ってたけど、普通にデザイナーだったんだな」

「みたいね。でも、『turn off the love』の方は完全にAKIさん個人でやってるみたいだから、ORANGEは無関係みたいだよ。特にコラボ商品ていうのもないみたいだし」

「なんか、AKIさんらしいな。あの人、すっげぇ寡黙なんだよな。コーラス以外しゃべらないんだよ」

「そうなの?コーラス以外って、テレビとかは?」

「もともとあんまりテレビ出ないユニットだし……。あのユニットはヴォーカルがしゃべり担当だから。つうか、本職もアナウンサーだしな」

「え?SHOWさんってアナウンサーなの?」

「あれ?知らなかったか?あのユニットって、もともと朝の情報番組の企画で結成したんだよ。まさかここまで売れるとは思わなかっただろうけどな」

「そうなんだ……。知らなかった……」

「まぁ、時間的に俺らは見れないけど『シャキッと!』ってやつと、あと、深夜も『極楽音楽』って番組でMCやってるよ」

「なんか意外……。あんなロックな人がスーツ着てMCするなんて……」

 小町は口に手を当てて、固まっている。相当驚いたのだろう。

 志信もそれを知った時、朝の番組を録画して見てみたことがあるが、頭のてっぺんからつま先までまるで別人のようで、にわかには信じられなかった。

 しかし、その番組の最後でしっかりとニューアルバムのリリース情報とそれに伴うライブツアーの告知をしており、アナウンサー用と公言している伊達眼鏡を外すと、ステージで見せるような色っぽい目つきで「よろしく!」と言い、得意のウィンクだ。スタジオからはコメンテーターやスタッフ達のわざとらしい黄色い声援が上がり、照れくさそうに眼鏡をかけると「それでは、また明日!」とアナウンサーの声で締めた。

「何ていうか……。色々と不思議なユニットだよね。次々と私の知らないことが出てきて面白い……」

「だろ?なんつーか、アナウンサーとロックヴォーカリストのギャップがまたいいんだよ。あとはさ、あの二人って、ルームシェアしてんだぜ?」

「ルームシェア?」

「SHOWさんって、まったく料理できないみたいでさ。で、AKIさんは料理がプロ級なんだと。で、逆にAKIさんは掃除関係が不得意で、SHOWさんが綺麗好き、と」

「すごい、補ってるね!」

「一緒に住んでると曲作りの時も楽みたいだよ、やっぱり」

「なんか、いいねぇ。楽しそう」

 そう言って笑う小町も楽しそうだ。良かった。ORANGEの話題なら、いくらでも話せる。

「で、そう言えばさ『turn off the love』って、ネクタイピン以外もあったの?」

「え?あ、ああ。えーとね、メンズもレディースもいろいろあったよ。でね、意外とそんなに高くないの!ちょっと頑張れば高校生でも買えそうなくらい。ネクタイピンも5000円くらいだったかなぁ……」

「デザインは?……って、グッズの感じからして、悪いわけないよな。でも、レディースのデザインもあるってのは意外かも。AKIさんもSHOWさんもいっつもごついのつけてるし」

「メンズのは結構大振りでごつごつしてる感じだったけど、レディースのは、メンズのをそのまま少し細目にした感じっていうか……。うーん、これは口で説明するの難しいかも」

「そっか。帰ったら、パソコンで見てみるわ。店舗はやっぱ東京かなぁ。夏休みにでも行ってみるかなぁ。AKIさんはさすがにいないだろうけど」

「えっ!私も行きたい!一緒に行こうよ!」

「そうだなぁ……。賢太の合宿がかぶってなければ誘えるかな……」

「最上君も誘うの?最上君もORANGE好きなの?」

「いや、アイツとはそういう話ってしないな。あんまり音楽に興味ないっていうか……」

「それじゃ、誘っても意味ないよ」

「でも、怒るんじゃね?さすがに二人っきりはさ……」

「……何で最上君が怒るの?」

「何でって……それは……」


「おや、お帰り。志信君」


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