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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
23/41

M23 心を読む

 小町が家に入ってしまってからも、志信(しのぶ)はしばらくその場に立ち尽くしていた。

 さっきのは、一体何だ?

「にゃおん」

 ふいに聞こえてきた猫の鳴き声に飛び上がる。気付くと目の前に黒猫がいた。見慣れたネームプレートをしている。

「お前か……」

 マグノリアはゆっくりと志信の足元へ寄ってきた。

「……制服だから、あんまり毛をつけないでくれよ」

 その言葉を理解しているのか、いつもなら足に顔をこすりつけてくるのだが、今日は一歩手前で止まり、その場に座った。

「帰ろう」

 それだけ言って、歩き出す。マグノリアに言った言葉だったが、志信自身もこの一言がなければ足を動かすことが出来なかっただろう。

「マグノリア……。もしかしてだけどさ、なんつーか、わざとか?さっきの」

 すたすたと先導するように志信の前を歩くマグノリアに問いかけてみる。

 どうせ「にゃおん」くらいしか言ってくれねぇだろうけどな。

「小町が……アレ……だって教えようとしたのか?」

 さすがに『化け物』という表現はしたくなかった。

 下校時は抜群のタイミングで鳴いてくれたのに、いまは無言だった。

 やっぱりさっきのは偶然だったのかな。そりゃそうか。猫が人間の言葉を理解してるわけないもんな。

 角を曲がって、志信の家がある通りを歩く。

「あ――……」

 数メートル先に見慣れた人影が見える。

 一定の距離を保って先導していたマグノリアが、それに気づき、ダッシュする。

 やっぱり飼い主には敵わないよな。

 人影はマグノリアを抱き上げ、志信に手を振っている。志信も手を振り返し、気持ち程度に速度を上げる。

「こんにちは、信吾さん。どこか出てたんですか」

「お帰り、志信君。僕、今日はずっと家にいたよ」

「そうなんですか?マグノリアが俺の高校まで迎えに来たんで、てっきり信吾さんがいないんだと思ってました」

「マグノリアが迎えにね……。海雪といい、この子といい、君は『モテモテ』だね」

 信吾らしからぬ表現に軽く驚く。たぶん、祥太朗の影響だろう。

「モテないっすよ、俺……」

「君はどうしてそう謙遜するかなぁ。もっと自信を持って」

 マグノリアを抱き上げ、背中を優しく撫でながら、信吾は微笑む。

 自信を持って。

 さっき小町にも言われた一言だ。俺の……心を……読んで……。

「し、信吾さん……。人の心を読む化け物って……知ってますか?」

「どうしたんだい?突然」

 突拍子もない志信の質問に、信吾はきょとんとした顔をしている。

 俺はいきなり何聞いてんだ?いるわけないだろ、そんなの。

「い、いや、何でもないんです。俺、あの、失礼します!」

 一気にそう言うと、志信は自宅へ向かって歩き出した。


「心を読むなら『サトリ』という妖怪がいるけど、それかい?」


 思いがけない回答に思わず振り向く。

「何かあったんだろ?おいで。少し話そう」

 信吾は優しく笑って手招きした。

 威圧感があるわけではないのに、やはり断ることができない。

 志信は首を縦に振ると信吾の後に続いた。


 


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