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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
15/41

M15 変な噂、文化の違い

 2人と別れ、小町と並んで歩く。

「良かったな、仲良くなれて」

「うん。女の子と話せてよかった」

 小町は歯を見せて笑う。やはり、男子ばかりが寄って来て不安だったのだろう。

 教科書も届けば、机をくっつけて授業を聞くこともなくなるし、ノートだって、俺の字より女子が書いたやつの方が綺麗で見やすいに決まってる。きっと、あの2人に見せてもらうことになるだろう。

 いろいろとお役御免になるなぁ。

「なぁ、明日からはさ、あの2人と一緒に帰りなよ。女子同士の方が楽しいだろ?」

 一応気を遣って、提案してみる。

 それでも、万に一つの可能性に賭けたい気持ちもある。

 祈るような気持ちで返事を待つ。

「そうかな……。そうだよね……。谷山君も、迷惑だったよね……」

 小町は俯いて、ぽつりと言った。かすかに声が震える。

 えっ?ちょっと、こういうのは予測してなかった……。

「い、いや、ぜんぜん迷惑じゃないけどっ、俺は!むしろ、小町が嫌かなって……。もしかしたら変な噂とか……立つかも……しれない……し」

「変な噂って?」

 小さな声で、問いかける。出会ったばっかりの小町に戻ってしまったような声だった。

「だからさ……その……、付き合ってるとか……そういう……」

 俺は、構わないけど。

 そこまで言い切ってしまいたい気持ちもあったが、ぐっとこらえた。

「付き合うって……何に?」

 きょとんとした顔で小町が問いかける。

「え?」

「どこかに行くってこと?」

 これってもしかして文化の違いってやつか?それとも単純に言葉の意味が分からないのか?

「いや、どこかに行くとかそういう意味のじゃなくてさ、付き合うってのは、お互い好きあって、恋人同士になるっていうか……」

 どんどん語尾が弱くなる。話をどこで終えたら良いのかわからない。はっきりしないまま、息継ぎのどさくさで黙ってみる。

「付き合うってそういう意味なんだね。そんな噂が立ったら、やっぱり谷山君に迷惑かけちゃうね……」

 小町は再び俯いてしまった。

 何だ?何なんだ?これは。俺が迷惑だから?そうじゃないだろ!

「いや、そうじゃなくて!俺が迷惑とかじゃなくてさ。それはこっちの台詞なんだって!」

 思わず立ち止まり、声を上げる。

 急に立ち止まった志信に不思議そうな視線を向け、小町も立ち止まった。

「俺なんかとそんな噂がたったら、小町の方が迷惑だろって、そういう話だよ」


「私、迷惑じゃないけど」


「は?」

「大丈夫だよ。そういう噂が立っても」

 それは……、そういう関係になってもいいってことなのか?

「ちゃんと『違うよ』って言えばいいんだよ」

 そう言って、にっこりと笑う。

 ……たしかに。それはそうなんだけど、なんか違うんだよ。

 でも、それは口にせず、小町の好意に甘えてしまうことにする。

「そうだよな。そしたらさ、これからも一緒に帰るか。もちろん、小町があの2人と帰りたいとか、遊んだりするときはさ、そっち優先して良いから」

 いっそのこと、噂なんて立ってしまえばいい。

 小町は否定すればいいなんて言うけど、一時でもそういう雰囲気を味わえるのなら。

「良かった。女子の友達も大事だけど、男の子の友達も大事にしたいんだ」

 友達、という響きが胸に刺さる。そうだ、俺は友達なんだ。

 他愛もない話をしながら歩いたが、昨日よりもなんだか足取りが重かった。


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