M15 変な噂、文化の違い
2人と別れ、小町と並んで歩く。
「良かったな、仲良くなれて」
「うん。女の子と話せてよかった」
小町は歯を見せて笑う。やはり、男子ばかりが寄って来て不安だったのだろう。
教科書も届けば、机をくっつけて授業を聞くこともなくなるし、ノートだって、俺の字より女子が書いたやつの方が綺麗で見やすいに決まってる。きっと、あの2人に見せてもらうことになるだろう。
いろいろとお役御免になるなぁ。
「なぁ、明日からはさ、あの2人と一緒に帰りなよ。女子同士の方が楽しいだろ?」
一応気を遣って、提案してみる。
それでも、万に一つの可能性に賭けたい気持ちもある。
祈るような気持ちで返事を待つ。
「そうかな……。そうだよね……。谷山君も、迷惑だったよね……」
小町は俯いて、ぽつりと言った。かすかに声が震える。
えっ?ちょっと、こういうのは予測してなかった……。
「い、いや、ぜんぜん迷惑じゃないけどっ、俺は!むしろ、小町が嫌かなって……。もしかしたら変な噂とか……立つかも……しれない……し」
「変な噂って?」
小さな声で、問いかける。出会ったばっかりの小町に戻ってしまったような声だった。
「だからさ……その……、付き合ってるとか……そういう……」
俺は、構わないけど。
そこまで言い切ってしまいたい気持ちもあったが、ぐっとこらえた。
「付き合うって……何に?」
きょとんとした顔で小町が問いかける。
「え?」
「どこかに行くってこと?」
これってもしかして文化の違いってやつか?それとも単純に言葉の意味が分からないのか?
「いや、どこかに行くとかそういう意味のじゃなくてさ、付き合うってのは、お互い好きあって、恋人同士になるっていうか……」
どんどん語尾が弱くなる。話をどこで終えたら良いのかわからない。はっきりしないまま、息継ぎのどさくさで黙ってみる。
「付き合うってそういう意味なんだね。そんな噂が立ったら、やっぱり谷山君に迷惑かけちゃうね……」
小町は再び俯いてしまった。
何だ?何なんだ?これは。俺が迷惑だから?そうじゃないだろ!
「いや、そうじゃなくて!俺が迷惑とかじゃなくてさ。それはこっちの台詞なんだって!」
思わず立ち止まり、声を上げる。
急に立ち止まった志信に不思議そうな視線を向け、小町も立ち止まった。
「俺なんかとそんな噂がたったら、小町の方が迷惑だろって、そういう話だよ」
「私、迷惑じゃないけど」
「は?」
「大丈夫だよ。そういう噂が立っても」
それは……、そういう関係になってもいいってことなのか?
「ちゃんと『違うよ』って言えばいいんだよ」
そう言って、にっこりと笑う。
……たしかに。それはそうなんだけど、なんか違うんだよ。
でも、それは口にせず、小町の好意に甘えてしまうことにする。
「そうだよな。そしたらさ、これからも一緒に帰るか。もちろん、小町があの2人と帰りたいとか、遊んだりするときはさ、そっち優先して良いから」
いっそのこと、噂なんて立ってしまえばいい。
小町は否定すればいいなんて言うけど、一時でもそういう雰囲気を味わえるのなら。
「良かった。女子の友達も大事だけど、男の子の友達も大事にしたいんだ」
友達、という響きが胸に刺さる。そうだ、俺は友達なんだ。
他愛もない話をしながら歩いたが、昨日よりもなんだか足取りが重かった。




