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メドゥーサの彼女  作者: 吉國 冬雪
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M14 佐々木夕夏、橋田睦

 授業が終わり、志信(しのぶ)が帰り仕度をしていると、佐々木夕夏(ゆか)と橋田睦が、同じく帰り仕度をしている小町に話しかける。

「ねぇ、小町ちゃん、家どの辺?あたしらと一緒に帰ろうよ」

 夕夏と睦は人懐っこそうな笑みを浮かべている。控えめな小町とは対照的に少々派手な感じの2人である。

「私……今日は谷山君と帰る約束してて……」

 2人の雰囲気に圧倒されたのか、小町は若干引き気味で答えた。

「えー?じゃあさ、谷山君も一緒に帰ろうよ。ね。いいじゃん」

 小町の返事も聞かず、睦が志信に話しかける。

 せっかく小町が女子と仲良くなれそうな展開を邪魔するわけにはいかない。

「俺はいいけど、女子だけの方がいいんじゃないのか?」

「いいじゃん、いいじゃん。あたし、谷山君とも話したいし~」

 本気なのか冗談なのか、睦はくねくねと身体をよじらせ、上目づかいで志信を見つめる。

 長い睫毛がバサバサと揺れる。志信にはそれがマスカラの効果だとは気付かない。

 苦手だなぁ、こういう子。

 でも、この夕夏と睦はクラスの女子の中でも発言権のある方だ。この2人と仲良くしとけば小町の学校生活も安泰だろう。そんな打算がある。

「2人がいいなら……。つうか、小町は大丈夫か?」

 小町の方を見ると、何やら夕夏と小声で話している。笑っているのを見て、安心する。

「ほら、何かもう仲良くなっちゃってるみたいだしさ。ね。決まり!」

 そう言うと、睦は志信の腕をつかみ、ぐいと引っ張る。

「おい、ちょっと!」

「おーおー、お2人さん。ウチらはお邪魔ですかぁ~?」

 小町の肩に手を載せて、ニヤニヤと夕夏が茶化す。

「邪魔とかじゃなくて!お前らも帰るんだろ?来いよ!橋田も放せって!」

 睦の手をつかんで無理に引きはがしてもいいのだが、これでも一応男だ。必要以上に女子に触れるのは躊躇われる。ぶんぶんと大きく揺らして、振りほどく。

「お、志信。はべらせてんなぁ。3対1なんてハーレムじゃん。うっらやっましぃ~」

 早々と部活用のジャージに着替えた賢太が教室に戻り、志信の姿を目に留めて笑う。

「はべらせてねぇよ。お前と一緒にするな」

「えー?俺だって3人もはべらせたりしてないよ」

 そう言ってへらへらと笑うが、賢太が女子に囲まれているのは決して珍しいことではないし、どう見繕っても3人以上はいつもいる。それとも、賢太にはその女子達はカウントされていないのだろうか。

「黙れ、モテ男。さっさと部活行けよ」

「はいはーい」

 賢太は志信ではなく女子達に軽く手を振りながら、荷物を持って教室を出た。

「何なんだ……」

 そうつぶやいて夕夏と小町の方を振り向くと、夕夏は小町の耳元で何やらひそひそと囁いている。小町のやけに真剣な表情が気になる。

「帰らないのか?」

 志信が声をかけると、どうやら話も終わったらしく、2人は離れ、各々の荷物を持って歩き出した。


 結局、夕夏と睦の家は、中間にあるコンビニを境に逆方向だったため、そこまでの短い付き合いとなった。

 大して広くもない歩道で、前列に志信と睦が、後列に夕夏と小町が並んで歩く形となる。

 何でこの配置なんだ?と思わずにはいられなかったが、志信と小町が並んで歩いたのでは、この2人との距離も縮まらないのだから、これで良かったのかもしれない。

 実際、会話するときには4人でしていたし、こういうものなのだろう、と思うことにした。


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