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62話 その神の名は



 ****



 煌煌と輝くマグマの川に、下から照らし出され、血だまりが大気の足場を紅く彩る。

 その中心では、大剣に腹部を貫かれ、若き青年が力尽きている。


 ふと、栓にもなっているその凶器が引き抜かれた。

 

 ボトトト。


 腹部から鮮血があふれだし、大気の足場からマグマの川へと幾筋もの紅き線が下る。

 青年の体は痙攣を一際大きくし、命のろうそくを燃やし尽くそうとする。


 そこへ、駆けつける魔力。

 佐々倉啓の体をふわりと包み込むと、呪文が唱えられる。


「《治癒(ヒール)――5(フォレイ)》」


 淡く輝く魔力。

 次の瞬間には、佐々倉啓の腹部の穴が塞がっていた。

 土気色だった顔にも、生気の色が戻っている。


「これで大丈夫ですね」 

「もしかしてぇ、ケイぃは《治癒(ヒール)》を使えないのかもお?」

「そうでしょうね、おそらくは。大変興味深い魔法を使えるようですが、使えない魔法もあるようですね」

「ふっふーんっ」フユセリは得意気に肉付きのいい胸を反らす。「ねぇー? わたしの言ったとおりだったでしょお?」

「そうですね」メロウはにこにこと嬉しそうに笑う。「フユセリさんの予言どおり、何が起きたのか分かりませんでした。ドラゴンにしたように、ケイニーさんを異空間に送ったようでしたが、その過程が判然としません。ふふ、ケイさんには長生きしてもらいたいですね」


 佐々倉啓を見下ろすように滞空し、言葉を交わすメロウとフユセリ。

 そこへ、少し離れて浮遊する2人の人型ドラゴンが口を挟む。


「ドラゴンの恨みは深いかよ」

「長生きできるとは思わないことですわ」 


 メロウが、にこにことした顔のまま、首だけで振り向く。


「以降、ケイさんは神と同列に扱います。殺すなら、取り決めに抵触しないように頑張ってください。それと、もしケイさんを殺したら、私がドラゴンを根絶やしにしますので、あしからず」

「っ!?」「っ!?」


 イータとコハロニが体をびくつかせる。

 

「そ、それは、困るかよ」

「そ、そうですわ。困ってしまいますわ」


 牙を抜かれたように大人しくなる2人。

 その様子を眺めながら、ロニーはつまらなそうにお下げをいじっていた。


 おもむろに、金髪をさらりと揺らしてフユセリが空を仰ぐ。


「誰よりも早く来そうなのにぃ、どうしたんだろお?」

「ん? ああ、ニィナリアさんですね。そういえば、どうしたんでしょうね。決着はつきましたし、ヒュピさんがこちらに送ってくれそうなものですが」 

「向こうでぇ、何かあったあ?」

「ヒュピさんにですか? ヒュピさんの相手になるのは、あちらではルエさんくらいなものですが、ルエさんが積極的に何かをするとは思えませんし……、ああ、精神的なものでしたら、スイシアさんでも可能ですね。ヴェロニカさんの人格が復活すれば、ヒュピさんに混乱が生じてもおかしくありません」

「んー? タイミングが良すぎなぁい?」

「あくまでも、可能性ですよ。そもそも、復活するかどうかも分かりませんしね。まあ、スイシアさんの生誕から10年以上たちましたし、仮にヴェロニカさんの人格が残っているのでしたら、スイシアさんの魔力体に馴染んでいる頃合でしょう。いつ顕現しても不思議ではありませんね」

「もしそうなったらぁ、どうするのお?」

「そうなったら、というのは、ヴェロニカさんの復活のことですか? それとも」

「世界を壊そうとしたらぁ?」

「それは、決まってるじゃないですか」


 メロウは、少しも顔色を変えずにフユセリに答える。


「長老会で、ヴェロニカさんを――いえ、スイシアさんを殺しますよ」

「言ってよかったのぉ? 今、見てるよぉ?」


 フユセリが、空を指差す。

 そこには、ロニーの神世界で映し出されているモニターの視点がある。

 すなわち、スイシア本人が見ているということだ。


「スイシアさんだって、それくらい承知していますよ」メロウは空に顔を向ける。「あ、さっきのは脅しではありませんので。他意はありません」


 脅しではない、すなわち威嚇したかったわけではないと言いたかったメロウだが、それはすなわち本気で殺しますよという釘刺しとも取れてしまう。

 ある意味これほど効果的な脅しもないのだが、メロウは気付いていなかった。


 一方、スイシア本人はどう解釈したかというと、それどころではなかった。

 ロニーの神世界。

 そこでは、ルエの死の重圧が会場を沈黙させていたのだから。


 

アクセス数が急増していました。

やった! でもなんで!?

もしやと思ってランキングを覗いてみたら……ありました! 

日間ランキング198位!

ランキングに載ったのは初です! みなさまありがとうございます!


しかし疑問も。

ランキングに載ったからアクセス数が増えたとして、どうしてランキングに載ったんでしょう?

載る前は、そこまでポイントは高くなかったと思うのですが……。

まあ、なにはともあれ、ご期待に沿えるようにこれからも頑張っていきますね!

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