表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/101

57話 神候補佐々倉啓 vs 剣の神ケイニー(3)



 ****





 そのとき、リーガルは自分の神世界にいた。

 

「……全く、あの2人は自制が効かない。ササクラ・ケイは無事だろうか?」


 渋面を崩さず、佐々倉啓を心配するリーガル。


 イータとコハロニが魔力を解放したとき、リーガルは避難していた。


 リーガルは神の中で中堅レベルに当たるが、イータとコハロニは最上レベル。

 これは長老会の他の面々にも言えることだが、イータとコハロニは、ふざけたようなと評するにふさわしいほどの魔力を有している。

 そう評したくなるのは、あろうことか同じ神である。

 まさしく、桁が違う。

 その魔力に、リーガルが耐えられるはずもなかった。


 ならば、佐々倉啓は?


 リーガルは夢にも思わない。佐々倉啓がイータとコハロニの魔力にまさか耐えられるなどとは。


 リーガルは、自分の魔脈への入り口を開く。

 そこから魔力を取り込み、損傷を受けた魔力体を回復させる。

 それが済んだところで、リーガルはロニーに《交信(コネクト)》を使用した。


『わたしだ。リーガルだ』

『え? あっ。……べっ、別に、忘れてたわけじゃないもん!』

『そういうのはいい。早くわたしを招待してくれ』

『なによっ、偉そうに』


 直後、リーガルは自分の神世界からロニーの神世界へと転移した。


「……なに?」 


 そこでリーガルは、モニターに映る佐々倉啓とケイニーの姿を目にする。


「まさか……。スイシア、あの2人は戦うのか?」

「そうだよ」


 こちらも苦い顔で、ソファに座るスイシアは答える。


「どうして止めなかった?」

「説得が通じない状態だったことは、キミが一番理解できてるんじゃないかな? それに、長老会で許可が下りたんだ。ケイニーを止められたとしたら、それはキミだけだったんだよ、リーガル」

「……そうか。悪かったな」


 リーガルは忍ぶように目を伏せる。

 それから目を開く。


 その様子を緊張の面持ちで見守っていたヤックは、思わず声を出した。


「リーガル先輩! どうかっ、どうかケイニー先輩を!」


 リーガルは険しい面持ちを一瞬だけ崩し、しかし次の瞬間には持ち直す。


「駄目だ、ヤック。看過できない。わたしの法に反するのだ。罪には罰を。これがわたしの生き様なのだ」

「せ、せめてっ、拒絶だけは」

「ヤック。罰とは、反省を促すものでなければ意味がないのだ」

「っ……。……どうしてもっすか?」


 リーガルは答えないでモニターを睨んだ。


 ヤックは俯くと、しばらく足元を見つめていた






 ゴツゴツとした山の斜面で、佐々倉啓とケイニーが向かい合っている。


 少し離れて、イータ、コハロニ、メロウ、ロニー、フユセリの姿。

 ドラゴンの群れは、レイアビク山へと帰還していた。


 勝負の審判は、メロウ。

 開始の合図は、既になされている。


「……どうした? 来ないのか?」 


 ケイニーが首を回しながら言う。

 その手には、身の丈2倍の大剣が握られており、戦闘の準備はとうに整っている。


「いや、僕としてはそっちから来るもんだと」


 対する佐々倉啓は、魔力障壁を張り終え、実体化を発動させる用意は終えている。


「あー、まあな。初めはそうするつもりだったぜ? でもな、気が変わったんだ」

「それは、どうして?」

「俺の中ではよ」


 ケイニーは首を傾げながら、感情の削げ落ちた暗い瞳で言う。


「あんたを殺すことは確定なんだわ」

「……それで?」

「そう思うと、ちょっとは譲ってやろうって気にもなるだろ?」

「いや、それは知らないけど」


 身を切るような殺気。

 佐々倉啓はぐっと睨み返すが、殺意までは抱いていない。そのせいか、リーガルとの戦闘時より、気迫に欠けている。


 覚悟の足りていない佐々倉啓に対し、ケイニーはそれを指摘してやる義理もなく、言葉を続ける。


「先手は譲ってやるよ。掛かって来い、人間」


 佐々倉啓より年下の少年が、傲岸に振舞う。

 普通はそれを背伸びに感じるのかもしれないが、佐々倉啓の抱いた印象は違っていた。

 

 ――逆だ。

 本体が、老成。

 幼い皮を被っているだけ。


「……気になってたんだけど、なんで僕を恨んでるの? リーガルさんは無事に戻ったし、特に問題があるようには思えないんだけど」


 佐々倉啓は話を振り、ケイニーはそれに乗った。

 一触即発のピリピリとした空気の中、声のみが交わされる。


「あんたは、リーガルの兄貴を拉致した」

「もう帰ってきたでしょ?」

「あんたは、神と同列になろうとしている」

「そうしないと、身を守れないからね」

「気に食わねーんだよ」

「……何が?」

「あんたがリーガルの兄貴に勝って、あんたが神格化して、あんたがリーガルの兄貴と同格になって。それが全部気に食わねーんだよ」

「……」

「話はそれだけか?」

「……そうかもね」


 佐々倉啓は納得していなかったが、自分が勝てばいいだけかと考え、身構える。


「さあ、来いよ、ケイ・ササクラ。優しく切り刻んでやるから」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ