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56話 神候補佐々倉啓 vs 剣の神ケイニー(2)



 ****




 アレックスは、モニターに映し出された光景を信じることができなかった。

 

 ドラゴンの群れによる、竜魔法の行使。

 それも、絶対に防げないといわれる最強攻撃魔法、《絶砲(アブソリュート・レイ)》。

 王都の結界ですら呆気なく食い破るであろうそれを、群れで、行う。

 

 その瞬間、佐々倉啓は死んだものと、アレックスは諦めた。


 だが、そうはならなかった。


 それどころか、佐々倉啓ではなくドラゴンたちのほうが矢継ぎ早に消えていった。

 

 ドラゴンたちが必死で逃げる様は、どこか滑稽ですらあった。

 最強生物が、まるで狩られる鳥のような弱者に見える。

 アレックスの常識では、それはありえないことだった。


 Sランク冒険者。

 グリーシア王国の中で、その数は二桁にも満たない。

 人間最強と謳われる者達。

 まさしく、一騎当千。

 その数が国力の目安になると言われるほど。

 

 そんなSランク冒険者が、複数で当たってようやく押さえ込めるのがドラゴンである。

 一国を滅ぼすのに、ドラゴンが3体いれば事足りるとさえ言われている。


 それがどうだ、モニターに映るのは幾10という群れ。

 まさしく世界をすら滅ぼせるのではないかという最高戦力。

 

 その常軌を逸した力の権化が――たった1人の人間の手でいとも容易く消し去られていく。

 

 ありえない。ありえてはならない。


 この世界には神というものが存在する。

 アレックスはカリオストロの町を拠点とするなかで、ケイニーとヤックという2人の神とたびたび手合わせをしてきた。

 なるほど、Sランク冒険者よりは強かろう。アレックスをすら手玉に取るその技量は、天晴れの一言に尽きる。

 しかし、神がドラゴンの群れに勝てるかと問われれば、アレックスは答えることができない。

 今しがた行われた《絶砲(アブソリュート・レイ)》の一斉照射を、ケイニーやヤックが防げるとはとても思えないのだ。


 実際は、ドラゴンがいくら集まろうが神の魔力には遠く及ばず、その魔力に取り込まれてしまえばなす術もなくドラゴンは敗北するのであるが、アレックスは神の本領である魔力を使用されるまでもなくケイニーとヤックの武技にやられているため、その辺りの力関係を把握できていない。

 そういう事情もあって、アレックスにとってドラゴンはまさしく最強の代名詞であった。


 そのドラゴンの群れが、あっという間に全滅していく。

 その様子を、アレックスは夢見心地で眺めていた。

 驚愕も、感心も、もはや感じていない。

 心が麻痺してしまったかのような感覚だった。


 モニターの中で決着がついたとき、アレックスは斜め前方でケイニーが立ち上がるのが見えた。

 何かぶつぶつと独り言を呟いていたようだが、アレックスは聞き取れていない。

 

 モニターの中で佐々倉啓と人型ドラゴンが交戦状態に入り、メロウとロニーとフユセリの3人が介入に向かった後、ケイニーが《交信(コネクト)》を使用し、長老会の面々に自分と佐々倉啓との勝負を提案する。

 いまだショックから立ち直れていないアレックスは、ケイニーの話をぼんやりとしか聞いていなかったのだが、彼の精神衛生上それが幸せなことではあった。


「ケイ・ササクラの神格化の前に、俺にもあいつと勝負させろ」

『彼の実力は証明されたのでは?』

「やっぱりドラゴンじゃ力不足だ。その証拠に、この勝負であいつの力は測れてないだろ?」

『まあ、それはそうですが』

「俺があいつと勝負することで、あいつの力を測ることができる。神の中で強くはない部類の俺に負けるようなら、論外。仮に勝てば、その勝ち方でおおよそのあいつの立ち位置は分かるだろ?」

『そうですね』


 ケイニーの青い瞳には、怨恨の色が映り込んでいた。

 アレックスはそれに気付いていない。

 それに気付いたのは、ケイニーの挙動を注視していたヤックとニィナリアの2人のみ。

 ニィナリアは、佐々倉啓を敵視するケイニーを、ずっと警戒して監視していた。


「子どもが、出すぎたマネをしないでもらえる?」

「……あ?」


 ケイニーの行動を受けて、ニィナリアは口を出してしまう。


 それは迂闊だった。

 格上の相手に、意味もなく喧嘩を売ってしまったのだから。


 ただ逆に言えば、自分の身の心配より、佐々倉啓への思いに心を乱した結果でもある。

 つまるところ、佐々倉啓を排除しようとするケイニーに、ニィナリアは憤慨していたのだ。


「ケーィの力を測るとか、嘘ばっかり。逆恨みもほどほどにしなさい」  

「嘘とか本当とか関係ねえよ。それとな、俺はお前より年上だ」

「年齢のことじゃないわ。自分勝手な感情を抑えられない様子が、子どもだって言ってるの」

「……挑発と受け取るぜ」


 ケイニーがゆらりとニィナリアに向けて足を踏み出したとき。


「……そうくるか。まあ、どっちが先でも構わねえけどな。命拾いしたな、小娘」


 ケイニーは、ヒュピから神世界への招待を受け、それを受理。

 佐々倉啓のもとへと転移したのだった。


「ケーィ……お願い……」


 ニィナリアの頭には、佐々倉啓がケイニーに一度殺されかけている事実がこびりついて離れない。

 心配で押し潰されそうなニィナリアは、両手を強く組み、架空の神「魔神エスタンテ」に祈りを捧げながら、モニターを不安そうに睨み続けるのだった。



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