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42話 4使いニィナリア・アッシュロード vs Sランク冒険者アレックス



 カリオストロの町は、3つの山に囲まれている。

 山はそれぞれ、リーガルの山、ケイニーの山、ヤックの山と呼ばれ、その地下に、リーガルの魔脈、ケイニーの魔脈、ヤックの魔脈があるのだそうだ。

 一説によれば、山の形成は、魔脈からの魔力の噴出によるのだとか。

 魔力が物理的に作用するのは違和感があるけど、まあ、それはともかく。


 山の麓には森林が広がっており、町の近くになると草原に変わる。

 森の中には魔脈からの魔力を受けて魔物化した動物が多く、また、魔物の間で子をなすことでも魔物が増えるため、危険度は相当なものらしい。

 そのため森には腕利きの冒険者しか入れず、道なんて獣道くらいしかないのだけど、ただ、ヤックの魔脈までだけは、馬車が通れるように道が整備されている。

 なんでも、魔法武具や魔法兵器に使用される魔法金属の生産を、ヤックの魔脈で行っているからだそうだ。

 

 ヤックの魔脈へと続く道。

 それが草原から森の中へと飲み込まれているのを、200メートルほど先に視認できる草原地帯に、僕たちはやってきていた。

 

 膝丈の草が一面を覆っていて、土の見えるところがない。歩くには草を踏み倒さなければならず、足場がいいとは言えない。

 そよ風に運ばれて、雑草特有の青臭さが漂っている。


 僕の頭の上には、フマ。

 あぐらをかいて座っているけど、安定感はないらしく、浮遊の魔法を併用している。

 いっそ浮いていたらいいと思うのだけど、そんなに僕の頭の上がいいんだろうか?


 僕の隣には、グレッグさん。

 訓練場にいたときとは装備が替えられている。

 小さな金属の輪を繋ぎ合わせて鎧にしたチェインメイルだったのが、今は、皮防具と、上半身だけエメラルド色の金属プレートを着用している。

 エメラルド色……というか、青緑色というか、深みのある色だ。

 道中に聞いた話では、ヤックの魔脈で生産された魔法金属とのこと。

 魔脈の魔力の特徴が、色となって表れているらしく、この色は風属性と水属性の魔法に適性があることを示しているらしい。

 なお、グレッグさんの剣は、2メートルもある両手剣で、やはりエメラルド色をしていて、魔力を込めることで風を纏い、剣速を上げたり切れ味を鋭くしたりできるのだという。


 僕とグレッグさんの見守る先には……2人の戦士。

 

 1人はニィ。

 皮装備の上に、魔法金属でできた漆黒の肩当てと胸当てをつけ、灰色のマントを纏い、その手には波打つ漆黒の剣。

 遠目にも赤髪が鮮やかで、表情は窺い知れないけど、魔王然とした威風堂々たる雰囲気がある。


 ニィから10メートルほど離れて対峙するもう1人は、アレックスさん。

 こちらも皮装備の上に、グレッグさんと同様のエメラルド色のプレートメイルを、上半身だけ着用している。 

 両手には、2.5メートルはあろうかというエメラルド色の槍。

 爽やかな金髪青年という印象だったけど、ここからでもピリピリとした闘気が伝わってくる。

 直前まで女の子と戦いたくないと渋っていた人間とは思えない。


「アレックスさん、なんだかんだでやる気ですね」

「そりゃあそうだろうぜ。あの嬢ちゃん、構えはまだ甘いんだが、なぜか勝てる気がしねえ。なんでだろうな。

 付け入る隙はある。攻撃を誘う罠ってわけでもねえ。なのに、格上を相手にしているような、そんな不思議な感覚だ。

 ありゃあ、4(フォール)使いってだけじゃねえな?」


 グレッグさんが面白い分析をしてくれる。

 構えが甘いというのはおそらく、ニィの剣術としての腕前を指しているんだろう。

 ただ、ニィの真骨頂は魔法だから、そのせいで勝てるビジョンが浮かばないんじゃないかな?

 一応ニィは、魔力を抑えているからそれが伝わっているわけじゃないだろうし、多分、グレッグさんたちの戦士としての勘がそう告げるのかもね。


「ニィの強さは、僕も把握しているわけじゃないのでよく分かりませんね。

 というか、格下の相手と戦うところしか見たことがないので、そもそもニィの全力を僕は見たことがないんですよ」

「ほう、やはり強いのか、あの嬢ちゃん。アレックス相手にどこまで善戦するか見ものだな」


 グレッグさんはなんだかんだでアレックスさんの勝利を確信しているようだ。


「……さあ? それは見てのお楽しみでしょうけど……ただ、ニィは負けないと思いますよ」


 僕は言い返す。


「……Sランク冒険者が、負けるってのか?」

「……え? アレックスさんって、Sランクなんですか?」

「……は? 知らなかったのか?」


 僕とグレッグさんは、互いにぽかんと見合った。


「……グレッグさんも、Sランクだったり?」

「いや……俺はAランクだが……、おいおい、マジかよ、お前どういう生活をしてたんだ。俺を知らないのもあれだが、アレックスを知らないってのは尋常じゃねえぞ。『竜殺しのアレックス』は聞いたことあるだろ?」

「……えっと、ないです」

「……『救国のアレックス』は?」

「……それも、ないですね」


 グレッグさんは信じられないという顔で、僕の頭の上に視線をやる。


「おい、フマって言ったか。こいつは最近まで隠遁生活でもしてたのかよ? 2年前のドラゴンの討伐はともかく、去年の王族の暗殺未遂は国内で知らないやつはいねえはずだぜ」

「だからティファはグレッグたちに頼んだんさ。常識を教えてくれってな」

「…………」


 グレッグさんは、困ったように頭をぽりぽりとかく。

 僕はこの微妙な雰囲気を払拭するため、ニィとアレックスさんのほうに注意を向ける。


「あ、始まるみたいですよ」 


 グレッグさんが、そちらに顔を向ける。

 瞬間、2人の身体で魔力が高まりを見せた。



量が少なくてごめんなさい……。

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