転生しました。乙女ゲームに3 ~怜side~
怜視点です。
俺は小さい頃から周りの視線が怖かった。特に家にいる使用人は俺を期待の目で見てくるのが辛かった。
父も母も家にいなくて、二人とも出来る人だから、その腹から生まれたせいも少なからずあったんだと思う。
その中で一人、姉さんだけは違った。
姉さんは、俺に期待の視線を向けることなんて一度もなかった。というか、姉さんのほうがおかしい気がしてならなかった。
他の奴等には気づかれなかったらしいけど、小さい頃からいろんなことを知っていた。
家から出たこともないし勉強も教わってないのに、お金の数え方計算、文字が書けてたし言葉使いが普通じゃなかった。
大人たちは、会うこともほとんどなかったからその異常さに気づかなかったのかもしれない。
今だからはっきり言えるけど、あの頃の姉さんは異常だ。
それでも、俺には姉さんが必要だった。
部屋から出ることのできない俺らにとっては、姉さんの話は生活を彩る一つで、教わる勉強は誰よりもしっかりと見ていてくれた。泣いたときはすぐにかけてきて慰めてくれたし、喧嘩してもちゃんと仲直りしてくれた。
まるで、俺を守るかのようにくっついて、離れることなく。
父や母はいない同然だから、姉さんだけが俺の家族と言っても過言ではない。
四歳くらいになって、ある日一人で窓から部屋に入って来るやつがいた。
デカイ家に4歳児でしかも女が塀を登って木に飛び移り、部屋のある三階の窓の前まで来たんだ。
姉さんよりも異常だった。
小学校に上がる頃にはすっかり仲良くなって、三人で遊ぶことが多くなった。
ついでにハンターとしての訓練も始まった。あいつは、すでになっていた。周りの奴等には秘密にして活動していたらしいから俺と姉さんしか知らないことだった。
その頃にあいつは隣の家に住んでいることと周防の家の長女なのがわかった。ついでに一つ上に兄が一人いることも。
あいつが関わるようになってから、俺に隠してたオタクだということを隠さなくなった。あいつもオタクだったらしく、よく巻き込まれるようになり、ついには俺もオタクになった。後悔はしていない。
逆に姉さんと話せることが多くなって嬉しくなった。
そいつは今、姉さんの親友で異常なのは変わっていない。
小学校中学年になって、外に姉さんと遊びに公園にいったことがあった。
姉さんは覚えてないけど、そこで俺らは誘拐されそうになった。
姉さんはその時、俺を守ろうとして暴れて、気絶させられたからそのあとに起こったことは、俺は秘密にしてる。
何があったかっていうと、俺の力が暴走しかけたんだ。
その時、あいつがたまたま通りかけたのか、誘拐犯をボコボコにして、俺を止めた。
姉さんを二人で家に運んだ後、あいつが俺に言った。
お前はこれからどうしたい、その力はなんのために使いたいのか、と。
俺は姉さんを守れなかったのが悔しかった。めっちゃ後悔した。
だから、この力は姉さんを守るために使いたい、強くなりたい、と返答した。
その言葉で契約は成立した。
翌日から、あいつによる力の訓練が始まった。
訓練はすごく辛い。訓練をする上で禁止事項も何個か出された。破るとめっちゃ怒られてボコボコにされた。でも、確実にコントロールが出来るようになっていくのは感じることができた。
姉さんからは離れないようにいつもくっつくようになった。
それから一年して、ハンターの方の訓練指導者も変わって、あいつになった。
姉さんは驚いてたけど、俺はあいつに教えてもらってるからすんなり受け入れられた。
姉さんもしばらくたつと違和感なくなったらしくて、あいつによる指導にしっかりとついていく努力をするようになった。もともと姉さんはハンターにならなくてよかったんだけと、あいつの薦めでやることになった。たぶん、俺らがいないときに自衛が出来るようにするためなんだと思った。
高学年になって、初めての依頼をあいつに監督されながらやった。
大分二人でやっても出来なくて、傷がたくさん出来た。
とどめをさしたときに、姉さんは緊張と疲労とかがいろいろ混じって吐いてしまった。
俺は吐かせたくなくて、あいつをにらんだけど意味なかった。そんなことはわかってたけど、やめられなかった。
あいつが、吐かせたくないならお前がととめをさせって、その様子を見ていった。
一理あると思ったから、姉さんにはとどめを指さないように言いつけた。不思議がってたけど了承してくれた。そのときからとどめを指すのは俺の役目になった。
その頃から、零治たちとは交流を持つようになった。
姉さんはあいつと一緒になってたまに零治たちを叱ったりするようになった。俺はそれがちょっとだけ嫌だった。そのときは理由がわからなかった。あいつはそれに気づいていたようでたまにニヤニヤしてくるようになった。
中学生になった。
姉さんとは変わらずなるべく一緒にいた。
小学校の頃よりも周りの女子が群がって来るようになった。うっとおしくてしかたがなかっけど、姉さんに迷惑はかけられないから、猫被って優しく対応した。さらに群がって来るようになったけど我慢した。
ストレスが溜まりにたまったら、あいつに手合わせしてもらって発散した。
ただ、訓練でストレス発散させようとするとあいつからきついお仕置きが下った。それからはやらないように気を付けた。あれは恐怖の体験だ。思い出したくない。
一時期、中2病になったけど、家のなかだけにしとといわれたので学校でオタクだということなどはばれなかった。これにより演技の腕は一段上がった気がした。姉さんには感謝のしようもない。
中学二年の冬、姉さんが真剣な表情をして部屋に入ってきた。あいつと一緒に。話があると言った姉さんの気迫はスゴくて、俺はとても緊張してしまった。
ここは乙女ゲームの世界で、俺が攻略対象の一人だと知ったときは驚いて少しの間頭が真っ白になったけど、姉さんは真剣で心細そうに俺を見つめているのに気づいたとき、ストンと納得した。姉さんたちから乙女ゲームものや転生ものの小説を読まされていたのもあったんだと思う。
あいつははじめから知っていたかのように驚きもせず、俺らを見ていた。
実際に知っていたらしく、そのときに話された話のほうが、姉さんの話よりも驚きだったが、あいつの異常さについて納得することが出来た。
姉さんは安堵のあまり大泣きだった。それを見て俺は安心した。姉さんがいてよかったと改めて思うことが出来たし、よりいっそう守りたいと思った。
中学三年のバレンタイン。
姉さんの周りにいる男子がバレンタインを貰おうとアピールしているのを見て、俺が姉さんに対して家族以外の感情を持っていることに気づいたとき、姉さんにばれたら拒絶される気がして怖くなった。
だから、バレないように心がけるようにした。あいつにはバレている気がしていたが、そんなことは気にしていられなかった。
高校生になった。姉さんが特待で入るって言ったから、俺だけ贅沢したくなくて、勉強よりスポーツの方が得意だからスポーツ特待で入った。
一年は何も起きなかった。ゲームは二年からスタートだと聞いたので、二年になってからは周りに警戒する力が強くなった。
そして、ヒロインが転校してきた。
生徒会には入りたくなかったけど、父の命令で強制的に入ることになってしまい、面倒だなと思ったが、姉さんから応援されたから頑張っている。
ヒロインは一言で言うと気持ちが悪かった。小説とかのテンプレぶりっこだった。根本的に受け入れられないタイプなんだと思う。
俺はとことん避けた。気配察知をよく鍛えられたから会わないようにするなんて簡単だった。
でも、生徒会の仕事のときには生徒会室でやらなきゃいけなかったから避けようがなかった。だから、毎日のように来るヒロインはうざったくて仕方がなかった。しかも、他のやつらはヒロインとイチャイチャし始める。仕事もしないし、邪魔なだけだった。ヒロインから何かに誘われたりしても、無視か何かと理由をつけて断った。
何度も仕事しろって言いたくなったが、言わなかったのは、姉さんやあいつが手伝ってくれているおかげで仕事に支障が出なかったからだ。他のやつらがやるよりも処理は早く終わったので、余計助かっていた。
ついでに、ギリギリ零治が仕事をしているのもあったかもしれない。
1ヶ月がたった頃、ついに零治以外のやつらは完全に仕事をしなくなった。
生徒会室か廊下で毎日イチャイチャイチャイチャしやがるので、完全に関わらないようにすることに決めた。
姉さんもあいつももとより関わらないようにしていたから、気にもならなかった。生徒たちから抗議が来ても俺は関係ないから。
ある日、ハンターの方の仕事が一週間ぶりに来た。
高校生になるまでの間、訓練や復習には一切手を抜かなかったおかげで、結構早く倒せるようになった。
俺は、前世が会計士だったらしい姉さんに会計で分からないところを教えてもらって、さっさと今日の分の仕事を終わらせた。
生徒会室の戸締まりをして、零治に鍵閉めを頼んで、姉さんと一緒に寮まで一旦帰って、仕事に向かった。
ターゲットを見つけたら、時間をかけないように倒して終了した。
帰ろうとしたときに、悲鳴が聞こえた。思ったことは、めんどくさい。ただそれだけだ。
姉さんも帰る気満々だったけど、少し心配だとゆうのがわかった俺は、様子を見に行くことを提案した。
姉さんは賛成してくれたので、移動を開始した。
そこで見たのはやっぱりイチャイチャだった。気持ち悪くてヘドが出る。
零治が姉さんを見つけたらしく、視線を向けてくる。
零治が姉さんに対して少しの恋愛感情を向けているのは気づいてた。姉さんのほうがヒロインよりもいい女なのにヒロインに気持ちが揺らぐ意味がわからなかった。
でも、姉さんに対しての気持ちが嘘なわけではないのは確かだから、俺はイライラしてしょうがなかった。そのせいか、殺気が漏れ出ていたらしく、姉さんが俺の名前を呼んだ。
さいわい、姉さんは零治の視線は気のせいだと考えたようで俺に声をかけたようだ。
姉さんに怖がられたら意味がないから殺気はしまって姉さんについて行くことにした。
本当なら、俺の方が足は速いから先に行くことは出来るけどしたくないので姉さんに合わせて走る。
学校に着いて、仕事完了の報告をすませたら、姉さんと一緒に寮の分かれ道まで一緒に行く。
あいつが待っていた。姉さんを待っていたんだと思うけど、腹抱えて爆笑してやがる。
姉さんは知らないけど、仕事を覗いていたんだろう。あいつの仕事が終わらなければ良かったのに。
しかも、ドンマイっていってきた。理由がわかってしまったのでムカついて仕方がない。
これからを考えると胃が痛くなりそうだ。