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その名はベルセルク

眼が、覚める。

何故か分からないが俺の身体はぐらぐらと揺れていた。


「ふう、やっと眼、醒めたのね」


俺の横には、少し呆れ顔のアリサがいた。


「あれ?おれは......」


「あんた、あの魔獣を追っ払った後、急にぶっ倒れたのよ。覚えてないの?」


そうだった。そういえば、あの時何故か急に意識が遠のいて、倒れたんだっけ。


不思議なこともあるもんだ。


「それで、ここは?」


「馬車の中よ。私が呼んだの。それで、今向かってんのは、ハルバニア王国の城下町よ」


ハルバニア王国......やっぱり聞いたことない。どうやら俺は、別世界に来てしまったようだ。それで、原因はこの腕輪にある。それだけは確かだ。


「あのさ、この腕輪のこと、なんか知ってるんだろ?」


アリサはこの腕輪の事をしっていた。あの時は魔獣のせいで中断されてしまったので、もう一度質問する。


「えぇ。まぁ、私も本でしか読んだことないけど」


アリサの話こうだった。


この腕輪の名はベルセルク。かつて、魔獣に怯え暮らしていたハルバニア王国。しかし、ある日突然、この腕輪をはめた者が現れ、そして、その者は『魔殺しのベルセルク』と呼ばれ、魔獣の力を己の身体に宿し戦った。


「知ってるのはこの位かしら」


アリサはため息をつき、再び俺の方を向いて、


「なぜ、あんたがその腕輪をしているのかは分からない。けど、確かにそれは、魔殺しのベルセルクの腕輪。そして......」


「そして、なんだ?」


少し間を置き、


「なんでもない。後で話す」


アリサは何故か言葉に詰まり、紡ぐのをやめた。


それはいいとして、俺は元の世界に帰れるのだろうか。こんな全くの別世界に来てしまって、俺は生きて行けるのだろうか。言葉は通じるようだが、心配は募るばかりである。


調度そこで、アリサがいい質問をしてきた。


「ところで、あんたどこの出身よ。見たことない服着てるし」


「いや、俺はこの世界の人じゃないっつうか、突然来ちまったんだよ」


「どうゆうことよ......」


「俺は地球っつう世界に住んでたんだけど、この腕輪をはめたら、急にあの草原に立ってたんだよ!」


「地球?どこよ、それ」


順当な反応だな。俺もハルバニア王国なんて聞いたときにはビックリしたしな。


「まぁ、いいわ。そろそろ着くわよ。国王様のところにね」


国王様か。ま、帰れなくても、あの、何の刺激も無い生活よりはましかもしれない。と、半ば適当に、もしくは、あの誰かの意志が決定したのかも知れないが、俺はこの世界で生きていくことを決めた。


「すげえ!」


その一言だった。ハルバニア王国の城下町。そこは、無数の商店が並び、酒場には人が溢れかえり、あちこちから、美味しそうな匂いがする。そして、何より、人々が活気に溢れているのだ。まさに、今の日本とは大違いの世界。

そして、その城下町の中心にある場所こそ、ハルバニア王国の城である。


「ご苦労さま」


アリサが城の門番に声を掛ける。門番はかしこまった感じで、門を開ける。また、その門は俺の身長など軽く飛び越えてでかい。開け放たれた門をくぐり、アリサと一緒に城の中へ。くぐり抜けた門が閉まると、外の喧騒はピッタリと止み、辺りが静まり返った。それと同時に、またもやビックリ。豪華絢爛。その言葉以外の何者でも無い場所だった。レッドカーペット、絵画、そして、なんかわかんないけどキラキラしたもの。俺が城の中に見とれていると、


「あんた、いい?今から会うのはこの国の王様よ。無礼が無いように」


「オッケー」


聞き流した。今俺が大事なのは国王様等では無い。この城だ。地球にある大豪邸などこの城に比べてしまえば米粒に等しい。などと思いながら、前を見ずに歩いていると。


「へぶっ!」


ぶつかった。扉に。


「ふん、私の話を聞き流すからそうなるのよ」


いてて、と頬を擦りながら扉を見上げる。彫刻なのか、それとも描いたのか分からないが、それはもう凄い模様が扉にはあった。


「それより、この扉を開けたら国王様のところよ。無礼が無いように」


「分かった」


「あんた、膝をつきなさい」


ひざ?あぁ。あれだな。よく、アニメとかである、立て膝で、拳を地面につけて、下を向くやつだ。よし!と、俺はやってやった。すると、

アリサは、


「一つ、聞いとくわ。あんた封印されたく無いでしょ?」


「は?そりゃまあ、封印されたくは無いけど」


突然何を言うかと思ったら、封印て。封印の仕方がまず分かんないんですけど。アリサの方を見る。アリサは扉を開けている最中であった。


「国王様、只今戻りました」


かしこまった感じて、話し出す。すると、国王様も、


「ご苦労だったわね。アリサ」


ん?声が......女なんだけど。それに語尾に「わね」って。俺はつい反射的に、顔を上げて、国王様を見上げてしまった。

そこには、髪は黒で、肩ほどまで。顔立ちは、まさに貴族って感じで、特に眼が青い。ずっと見ていたら吸い込まれてしまいそうな程の奥深い瞳。その人が椅子に座りこちらをみている。その椅子も普通ではない。お金にしたら一体いくらになるやら。いや、もしかしたらお金に換算なんて出来ないほどかも。


そう思うのと同時に、おいおい、と。ひょっとして、この世界には美女しか居ないのか?なんて考えていると、


「あっ!ちょ、あんた!なに顔上げてんのよ!」


アリサに小声で叱られて、顔を下に向ける。すると、


「ところでアリサ。その方は?」


「はっ!この者は......」


「アリサ?」


何故か言葉につまるアリサ。どうしたんだ?と思っていると、


「この者は......王国騎士団の副隊長にと思いまして」


おいおい。何を言い出してんだよ!


「アリサ!一体」


「あんたは黙ってて!」


一蹴されてしまった。なんだってんだよ。副隊長って。国王様はと言うと、


「まあ、確かに副隊長は今、欠員です。それに、あなたに命じていいと言いましたが、私でさえ知らない方に副隊長が務まるのですか?」


当然の事を言っている。どこの馬の骨かしれない人に騎士団なんか任せられないのは当然だと思う。だがしかし、アリサは続けた。


「実力は私が保証します。」


おい!そんなん保証してどうすんだ。騙されると分かっている契約書にサインするようなもんだぞ?


「アリサがそこまで言うのなら。では、1ヶ月後、試験を行います。そこで、我々の目で判断します」


「は!了解しました」


「下がっていいわよ」


扉が嫌な音を立てて閉まる。柄にもなく強張ってしまった体をほぐしながら、城の廊下を歩いている俺は怒っていた。


「おい、お前、どういうつもりだよ。俺を副隊長なんかに指名して」


「......あんたの、為よ」


「俺のため?」


「そうよ。あんた、封印されたく無いって言ったでしょ」


俺は城に入る前に言われたことを、思い出していた。

たしかに言われた。


「でも、何でだよ。お前には何の利益も」


「お、お礼よ。お礼」


お礼?


「あんた、魔獣追っ払ってくれたじゃない?そのお礼。一応私も助かったわけだし」


なるほど。まあ、実際追っ払ったのは、俺じゃないんだけどな。


ところで、


「てゆうか、封印ってなんだよ。ベルセルクって言ったら封印されんのか?」


「そうよ。恐らくその腕輪にも封印されてるはずよ」


「え?なにが?」


「ハルバニア王国の英雄よ」


「それって、昔突然現れたってゆうあれか?腕輪をしてたって言う」


「そうよ。実はその英雄は、魔獣の九割を駆逐。でも、そのあと力を怖れた王国によって封印されちゃったのよ」


「封印って......まさかこの腕輪にか!?」


「そうよ」


なんてこった。俺は人が封印されている腕輪をしていたのか。自分の右手にはまっている腕輪をまじまじ見ながら思う。その時、外が騒がしくなった。いつの間にか城の外に出ていたようだ。目にはさっきの活気に溢れる人々がいた。


「そうだ!俺、これからどうすんだよ!試験て、なにすんだよ」


「主に剣の試験ね」


「おい!俺剣とか使ったことないぞ?」


「そうは言ったって、あんたが試験に落ちたら私の信用が落ちるし」


二人して考え込んでしまった。俺は運動神経は決していいとは言えない部類だ。どうすんだよ......


「そうだ!」


「うぉい!」


アリサが急に大きな声を出したのでビックリして変な声がてでしまった。


「なんだよ!」


「私があんたに剣を教えてあげるわ!」


「おぅえ!」


予想の斜め上を行く提案が降ってきた。


「あんたが試験に落ちたら私の信用がおちるでしょ?だから私自らあんたに剣を教えて上げる」


「えぇぇぇ!」


マジで教えてもらう方針で固まったらしい。何故かルンルンのアリサ。なんだか俺の未来は真っ暗なような気が......


「そうと決まれば早速......」


急に言葉に詰まる。本日二回目である。アリサの顔をみる。真剣な顔をして、何か重大な事に気づいてしまった顔をしている。アリサが口を開いた。


「あんた......家ないのよね?」


「うん」


「お金、無いのよね?」


「うん」


「じゃあ!」


アリサは大きく息を吸いこみ、


「どこに、住むのよーー」


「あ......」


どうしようか。今後......

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