決闘と疑惑 2
現在、シノトは、内心で困惑していた。
桔梗の言う〝あの時〟というのはシノトが思い当たる節は一つしかなかったからだ。
それはシノトが学院に入学してまだ間もない頃に一度だけ使った自身の〝剣技〟を使った出来事のことを言っていた。
(まさか見られていたなんて)
シノトは、まさか!と思った。
その出来事とは、シノトが街中で襲われていた人を助けるために使い、撃退したことであった。
しかし、それ以来、その剣技を使うことはなかったし、その時は、誰もいない街中の所であったため出し惜しみをせずに使っていた。
そして、今はまったく使っていなかった。
(稽古は、欠かさずしてきたけど)
鈍らないために秘かに稽古はしている。
「見せて下さい。あなたの〝真の剣〟を」
桔梗の方を見るとその美しい少女の顔には自分に向けての懇願と覚悟が入り交じった表情をしていた。
シノトは、迷っていた。
これをむやみやたらに使いたくはなかった。
(事情が複雑だからなあ…)
しかし、彼女の純粋なその姿を見て
(仕方ない)
覚悟を決めた。
シノトは両手に持っていた木刀を抜刀の構えをとった。
「ばっ、抜刀術!?」
「あなたの願いと覚悟に応え、〝一度〟だけお見せしましょう」
桔梗は、数歩後ずさった。
さっきまでの弱々しい表情とは、まったく別の覚悟を決めたシノトの表情に気圧されてしまっていたからだ。
(まるで別人…)
「ありがとうございます。ならば、私も全力でいきます」
桔梗は、そう言って木刀の刀身に〈炎〉を灯した。