決闘と疑惑
少し物語を引っ張っているので少しずつですがいくつかの話を一つにまとめるように調整しています。
各話の文章が被ったりしてしまうおそれがありますが御了承下さい。
7/18 文章の付け足しをしました。
御感想御意見を待っています。
決闘場には、多くの生徒が集まっていた。
それは、多くの生徒がこの決闘に注目しているという証拠だ。
そんな中でその決闘をするシノトにも注目が集まっていた。しかしそれは喜ばしいものではなかった。その理由は生徒達がシノトに対してむけている視線が蔑む視線であるためだ。
シノトはそんな視線を体中に浴びていた。
さらに生徒の中からは「やられてしまえ!」などの声も聞こえてきてもいた。
(勘弁してよ。本当に)
シノトは闘う前から心が折れそうであった。
(これだと、視線だけで殺されそうだ)
しかし、シノトの気持ちをよそに決闘は進行していく。
そして、決闘の時がきてしまった。
シノトと桔梗がむかいあう。
「何か、言い残すことはありますか?」
木刀を構えながら桔梗は尋ねる。
「降参してもよろしいですか?」
シノトは言った。
「却下です」
切り捨てられた。
「だめですか」
「助かりたければ、勝つことです」
さいですか。
どんよりしたくなる。
有無も言わせぬ彼女の言葉。
やれやれです。
仕方ない、と内心で呟き、シノトは木刀を構えた。
学院では、多彩な流派を使う生徒がいるため、西洋剣のような木剣と日本刀のような木刀の二種類が存在する。
だが、それ以外の物も存在している。
シノトや桔梗は、後者で木刀を使っていた。
両者ともじっと構えていたが、先にしかけたのは桔梗の方だった。
素早い動きでシノトの間合いに入ると木刀を抜刀。シノトはギリギリ後ろに跳んで、回避した。
その一撃が空を斬る。
空気を切り裂く音が鳴る。
「うわっと!?」
桔梗は逃がさないとでもいうかの勢いでシノトに詰め寄り、今度は 右薙ぎをしかける。
シノトはそれを木刀を立てるようにして受け止めた。
ガッ!ガギッ!
そしてシノトは桔梗の威力を利用して後方へと跳び距離を広げる。
「どわぁ!?」
しかし、勢いあり過ぎたのか、後ろに転げてしまった。
その行動に周囲から笑いが沸き起こる。
端から見ればその姿は無様である。
しかし桔梗は静かに無言で起き上がる彼を見ていた。
(いつ。見せて下さるんですか。あなたは)
その後も、桔梗が攻め、シノトが避け、受け止めるといった攻防が暫く続いた。
観客席からは桔梗を応援する声が聞こえてくる。
誰もが桔梗の勝利を疑わなかった。だが、そんな中で違和感を感じている者がいた。
「?」
(おかしい)
攻めている本人。桔梗だ。
桔梗の方は打ち合いの中で違和感を感じていた。桔梗は間合いに素早く入り込み、攻撃しているがどれも避けられ、受け止められている。
どれも、ギリギリに。
出来すぎているほどに。
決定的な一撃ができない。
(何なの、この違和感は)
それは、違和感と同時に桔梗がどうしても〝確かめたい〟ことにも繋がっているように感じた。
この違和感を知るためにそして、彼に一度でもいいから尋ねてみたい事を尋ねるために桔梗はわざと、シノトにつばぜり合いに持ち込んでみた。
木刀と木刀がぶつかり合う。
鍔迫り合いでシノトに近づいた桔梗はシノトの聞こえる程度の声で聞いた。
「あなたは、何者ですか?」
「どういう意味ですか?」
「言葉どおりの意味です」
鍔迫り合いは続く。
「私は、自分の実力を過信してはいませんがあなたは〝おかしい〟です」
「おかしい?」
(何を言っているんだ?彼女は)
「上位の生徒でも私の剣術を受ける事に苦労する。しかし、あなたは、〝何とか受けれているように受けて〟いました」
「考え過ぎです」
シノトはそう言う。
(いやはや鋭いなあ。)
内心では関心して舌を巻く。
「そして、何より」
「?」
「私は、一度だけ、あなたの〝剣技〟を見た事があります」
(なんだって)
シノトはここにきて驚愕した。
シノトが剣技を使ったのは入学する前の一回だけであった。それ以降、シノトはそれを使うことなく学院を過ごしていた。
「だから」
驚愕するシノトをよそに桔梗は後方に跳び距離をとった。
「見せて下さい。あなたの本当の〝剣〟を私に」
そして、木刀をシノトに突きつけた。
シノトから見てその表情は、どこか何かを懇願する表情に見えた。
(まいったなぁ。本当に)
ここで、シノトは違う意味で困るのであった。