剣の学院
今日も剣と剣、刀身同士がぶつかり合う音が響いている決闘場。
しかし、今はとても静かになっていた。
そんな中で、二人の生徒が向かい合っている。一人は、男子。もう一人は、女子である。
その男子。狐空志乃飛は、木刀を手に持って身構えていた。そして、シノトの目の前には、美少女がいた。
長い黒髪は腰までとどき、その顔立ちは凛々しく、その青い瞳は何者をも引き込ませてしまいそうな美しさがあった。そんな美少女は右手に美少女には不似合いな木刀の先をシノトにむかって突きつけて、真剣な顔で言った。
その姿は、とても絵になっていた。
「何か、言い残す言葉はありますか」
その言葉にシノトは苦笑を浮かべ、一言、呟いた。
「降参してもよろしいですか?」
なぜ、このような事になったのか、話は、遡ると、昨日になる。
「なんですって!?」
少女の怒声が教室に響いき、続けてドンッと机を叩く音が響いた。
「おっ、落ち着いて下さい!」
怒鳴られたシノトは、ハラハラしていた。理由はシノトの前で、怒っている美少女が原因であった。
「落ち着いてとはなんですか!どうして、あなたみたいな人が学院にいるのですか!」
「だっ、だから、普通に合格したって言ってるじゃないですか」
しかし、シノトは内心では、まあ、そうだろうなと、思った。
エクス=レバン学院。
またの名を剣の学院。剣士になる事を志す少年少女が来る学院だ。
ここに入学するには、筆記試験と剣を使った実技試験の二種類が存在する。ほとんどの生徒は実技試験で合格の者が多い。しかし、シノトの場合は筆記の方でギリギリの合格であった変わり者だった。しかし、入学して一年が過ぎたがシノトの成績は筆記テストの結果でギリギリ繋げていたのであった。そして、肝心の剣の腕は上達せず、二年生になっても初心者レベルままであった。剣の実力が主な学院のため教える講師や学生達からは『異端児』『無能』などと呼ばれていた。
「だっ、だから、何度も言いますけど、なんとか合格したんですよ!」
「私は、なぜ、あなたのような問題児がまだいるのですか、と聞いているんです!」
「だっ、だから、筆記も実技もなんとか、ギリギリ合格したんだって言っているじゃないですか」
シノトは、必死に訴えた。
「たっ、確かにこの教室にいるのが証拠ですね」
シノトの訴えがとどいたのかさっきまでの怒りはどうにか治まったらしく声の方も落ち着きを取り戻していた。しかし、顔にはまだ悔しさがにじみ出ていた。
「しかし、ここは高貴で気高い『剣士』を目指して集まる学院です。もう少し、しっかりしてほしいものです」
「すいません」
シノトは、謝罪した。しかし、内心では、今は、まだなんだけどと、呟いた。
喧嘩のような会話はこれで終わりかと思った。しかし、次の一言で変わった。
「しかし、気にいりません」
「はい?」
「同じ教室にいる者として、私は、恥ずかしいです」
痛いことを言うなあと、シノトは思った。
しかし、次の彼女の言葉はシノトは愕然した
「なので、私はあなたに〝決闘〟を申し込ます」
シノトは今までの中で最大の悲鳴をあげた。
「けっとううう・・・・・!?」
教室にシノトの悲鳴が響いた。