表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
終章 アンノウン神殺編
69/83

勝利の代価

 レヴィアタンの包丁に刺され、しかし何事もなかったかのように起き上がる堕天使アザゼル。

 かの悪魔が血塗れのYシャツを軽くスルーしながら懐から出したのは、「メールだヨ」「メールだヨ」と騒ぎ続ける携帯電話だった。


「これ、なんとかならんかね?」

「無理」


 自分の技ゆえ、一言で切って捨てるレヴィアタン。

 あっさりと拒否されたアザゼルは、


「やれやれ。…君からもなんとか言ってやってくれないか? ルシファー君」


 仕方なしにようやくやってきた「保護者」へと相談を持ちかけた。

 ストーカーに関する問題は、当事者だけで対処しようとするとロクなことにはならない。

 相手の保護者と警察を味方につけるのがベストだが、しかしアザゼルは幻想世界に於ける「テロリスト」。警察ミカエルの所へと出頭する気はさらさらない。


「むしろこっちがいろいろ訊きたいところよ」


 アザゼルが水を向けたのは、レヴィアタンに放り投げられてスタンドスクリーンに風穴を開けた、パチパチと帯電した現在電気属性のルシファー嬢。


「気が付いたらなぜかスクリーンブチ破って突き刺さってるし。

 正直なにがなにやらさっぱりだけど、状況から察するに、アンタがニャルラトホテプをけしかけた張本人、ってことでいーのかしら、アザゼル?」

「ちなみに、君の記憶が「そう。アザゼルがすべての原因。飛び出したルシファーはアザゼルとの戦いでスクリーンに激突。激しい電撃を浴びて意識を失ってた」………」


 るしふぁーミサイルの件はなかったことにするつもりらしい。

「バラしたら百回刺す」という気迫がレヴィアタンから伝わってきた。


「そう。よくも好き勝手してくれたもんね、アザゼル」


 実に「信じるのか!?」とツッコミたいところだったが、この場でアザゼルがなにを言っても説得力は皆無。

 そういえば智欲の大罪のマスターは、ツッコミ力が恐ろしく高かったなと思い出す元堕天使のアザゼル閣下。

 念のため、彼の始末は一番最後に回しておくかと心に決めておいた。

 一方、ルシファーは黄金の長剣、エクスカリバーを召還。


「…それがうわさの『覇奪の大罪』、か」

「よく知ってるわねー。ミカエルのバカが何百年も隠してた代物だってのに」

「なに、レヴィアタンにちょっとね」

「誤解のないように言っておく。

 一応コレも大罪悪魔の一柱だから、全大罪に召集をかけた裁判のログを送るだけ送っておいただけ。それ以上の情報を流した覚えはない」

「ふーん。ま、知ってるなら話は早いわ。地味にエグイわよー、コイツ」


 そもそも神に反旗を翻した大罪悪魔のルシファーに、魔剣化したエクスカリバーという組み合わせが最初からしてもうエグすぎる。


「エクスカリバーの特性ぐらいは承知してるさ。

 智欲の大罪のマスター君が、予想外の奮闘を見せてくれたためにだいぶ予定が狂ったが……そのための『ニャルラトホテプ』だ」


 あくどい笑みを浮かべて嘲笑うアザゼル。

 その直後、ルシファーの真下から武舞台の石畳を貫いて、十数本の触手が飛び出した。


「――ニャルラトホテプ!?」

「性懲りもなく…ルシファー!」


 アザゼルから距離を取ったレヴィアタンが出刃包丁を投擲し、ルシファーの足を固定していた触手の一本を石畳に縫い付ける。

 二度目の奇襲、同じ手は喰わない。

 同じくルシファーも覇奪の大罪と左の爪を振り回し、触手を切り払いながら跳躍。

 触手の発生地点をそれぞれ俯瞰し、その中央にアタリをつけて五爪を撃ち込む。


「ビンゴッ!」


 手ごたえアリだ。

 ビクンと触手を振るわせたニャルラトホテプ。

 しかし最後の抵抗とばかりにルシファー一点に触手を集中。

 ほとんどを覇奪の大罪に切り払われながら、五爪を這い登った一本がルシファーの左腕に絡みつく。

 そして――


  ――ドンッ!


「ルシファー!?」


 爆炎に包まれたルシファーの姿を目撃し、レヴィアタンが悲鳴を上げる。

 絡み付いた触手はそのままルシファーの腕もろとも起爆――ようするに自爆した。


「…づ…ぁあ~…やってくれるわね、あの変態生物…!!」


 左腕を黒くコゲさせられたルシファーが、爆炎の渦を切り裂いて姿を現す。


「ルシファー、無事?」

「ま、なんとかね。でも左を持ってかれたわ。しばらくはダメそーね」


 ニャルラトホテプを貫いていたはずの五爪も、触手起爆の影響を受けて吹き飛んでいるが…爪が突き立った状態で爆破の振動を浴びたのだから、衝撃で内臓抉られたのではなかろうか?


「お味はどうかな、アーサー王?」

「…自爆テロとはね…っざけたマネ晒してくれんじゃないの!」

「ククク…さすがのエクスカリバーでも、最初から勝利を放棄した手合いが相手では十分な効力は発揮できまい?

 君の勝利は剣を抜いたときから決まっていたのだよ、ルシファー君。

 もっとも、そのためにどれだけの代価を支払うことになるのかまでは補償しないがね」

「…ったく、これだからテロリストはイヤなのよ…。

 まーいーわ。自爆するヒマもなく一気に叩き潰して…って、はぁ!?」


 土中から姿を現したニャルラトホテプは……たてがみの生えた馬のような頭部を持つ鳥――シャンタク鳥を召還して、わき目も振らずに飛び去った。


「………逃げた?」


 つぶやくレヴィアタン。

 そしてひらひらと舞い落ちてくる一枚のお手紙。


『拝啓、アザゼル様。

 わたくしことニャルラトホテプは一身上の都合により、お暇をいただきたく申し上げる所存でございます。

 あなた様へのご恩を忘れたわけでは決して、ええ、決して忘れたわけではございませんが、かのマスター殿はわたくしの想像の埒外ともいえる好敵手でございました。

 つきましては、わたくしの命は風船の共食い、もとい風前の灯。

 エリクサーを飲み干しても回復しないような、魂の痛打でございました。

 よって、苦渋の決断ではありますが、これを以って戦略的撤退とさせていただきたく存じ上げます。

 不甲斐なきわたくしをどうぞお許しくださいませ。

 そして我が主君アザゼル様、どうか御武運をとお祈り申し上げます。

 親愛なるニャルラトホテプより、愛を込めて』


「…だってよ、アザゼル? 大した忠臣じゃない(笑)」

「どう考えてもルシファーに攻撃仕掛ける前に書いてたよね、コレ。

 てか、エリクサーまで無効化するなんて、あのハリセンどんだけ?」

「………」


 マスターの意外な奮闘が密かにルシファーを救っていた。

 しかし、エリクサーすら無効化するとは『委細貫通』恐るべし。

 危機的状況下において回復手段を無力化される。

 それがはたしてどれだけ絶望的な話だというのか。

 まったくもって凶悪すぎるにもほどがあるハリセンだった。


「まあ、どーであれ都合がいいわ。

 アザゼル、アンタ、設定だけでじゅーぶん危険よ。

 長々と時間をかけてなんてやらないわ。

 聖剣伝説にケンカ売った覇奪と同様、クトゥルー神話に唾吐いてケンカ売るよーなヤツは、早々にご退場願うから、覚悟しときなさい」

「フッ…できるのかね? 一応この身は『神』なのでね。

 はいそうですか、と倒されてはやれんのだよ」

「ハッ。そっちこそ忘れんじゃないわよ。

 こちとら『神殺し上等』のルシファー様よ?

 ついてきなさいレヴィ、覇奪。遅れんじゃないわよ!」

「ん!」


 襲い掛かるは『傲慢』『嫉妬』『覇奪』の大罪悪魔三柱。

 受けるは『狂希』の大罪悪魔一柱。

 彼ら彼女らの戦いの果てに、支払うべき、支払わされるべき勝利の代価は果たしてどれだけのものとなるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ