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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
終章 アンノウン神殺編
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フラグは立っていた

『第一章 ルシファー強襲編』より。

 立場逆転の大上段斬り下ろし。

 だが、そこに大変イヤなものがあった。

「callクトゥルー神話・ニャルラトホテプ『名状しがたいバールのようなもの』」

 コズミック・ホラー、クトゥルー神話。

 すべてを嘲笑う者ニャルラトホテプ。


『第二章 ミカエル暗躍編』より。

「もうこの戦いにあなたの出番はありません。

 お別れです、ウリエル…call『名状しがたいバールのようなもの』」

「ちっきしょーーがぁぁぁぁ!!!」

 喚くウリエルの頭に投擲されたバールのようなものが「スカーン」とヒット。


『第三章 九尾巫女の厄日編』より。

 シェルターの出入り口に、呪われた『名状しがたいバールのようなもの』をぶっ刺したぐらいだ。

 サービスシーンは一切なかったよ、チクショウ。

 てかあれ、コズミック・ホラーより出品のブツだから、夜中めっさ怖かったんだぞ。

 泣くし、うめくし、カタカタうるさいし。


『第四章 レヴィアタンの依頼編』より。

 ブチ切れるアンノウン。

「call」

 結果、「ボボッ」と火に包まれたアンノウンがいつものバールのようなものをフルスイングしてきたのだった。

…その場の全員に向けて。


 そしてついに終章。

 第一章からひそかに立てられ続けていたフラグを回収するべく、ついにヤツはやってきた。

 智欲の大罪がマスターVS.這い寄る混沌ニャルラトホテプ。

 もはや行く末のわからぬカオスなバトルが今、始まった。


「あ、アンタ、今いったいなにを…?」

「知るか! とりあえずテメェ! ニャルラトホテプ!

 いくらクトゥルー神話が著作権放棄のシェアワールドだからって、やっていいことと悪いことがあるぞ!

 いいかテメェ、よく聞きやがれ!

 それ以上その姿を晒そうモンなら俺が直接しばき殺してやるから覚悟しとけ!!」


 智欲の大罪がマスターである彼は、『市松模様のドレスを着た銀髪のナニカ』の姿を目にした瞬間、遠く離れたアンノウンが所持しているはずの紙片、マスター専用ハリセン型宝具『愚者狩り』を遠隔起動。

 召還したそれを、アンノウンからニャルラトホテプへと転移させて張り叩き、役目を終えたそれを己の手元へと再転移させて装備してのけた。

 起きた現象だけ見ると、智欲の大罪のマスターが超能力でも使って見せたかのように見えるのだが、実のところは『マスター専用』『必中』『限定転移』の相互作用によって引き起こされた現象である。

 つまり、マスターの精神に同調している愚者狩りが、投げても有効な『必中』の能力を駆使しつつ(紙片に返す=手放す=投擲扱い)、『限定転移』(張り叩くだけの理由がある者の下へと転移)を使用して、条件を満たしたニャルラトホテプのところへと瞬時に(ハリセンが)移動した、というわけである。

 逆にマスターの下へと帰ってきたときは、張り叩くだけの理由があるマスターの下へと同じくハリセンが転移した、と、そうなっているらしい。

 つまりは「さいきょーほーぐ」は伊達じゃない、の一言で済む問題のようだ。


「…ふ、ふん。こ、こんなもの、『あのお方』のフォークに比


    「口を開くなぁっ!!」(記載『倍返し』)


「ニャぶぅ!?」


 今度はマスターごとニャルラトホテプの眼前に転移した愚者狩りが、ホームランを打ち放つかのようにヤツの顔面を祭りのお面の上から強打して仰け反らせる。

 ハリセンによって精神的強打を受けたニャルラトホテプは、仰け反る勢いのままに岩塔から転落し、


「――げぶふ!」


 顔面から大変危険な角度で鉄板に突き刺さった。

 首の骨は大丈夫か?


「ったく。俺の出番なんざだれが期待してるってんだよ。

 おいコラ、ニャルラトホテプ。

 お前、それ以上痛い目見たくなかったらさっさと帰っとけ」


 親切心から出たマスターの言葉を、しかしニャルラトホテプはまるで無視。

 むしろなにかの炎が燃え上がったらしい。


「…う、うぉ…む、ぬぬぬ。な、なかなかの好敵手とお見受けいたしましたよ。

 …そこなあなた! どこのどなたか存じ上げませんが、どうぞワタシのことはお気軽かつフレンドリぃに『ニャル●さん』と

「呼ばせねぇよ、どアホッ!!」(黄色へ色彩変化)


 再三の転移によりマスター地上へ。

 そして三度目の殴打がニャルラトホテプの右ほっぺを張り叩く。

 ニャルラトホテプはニャルラトホテプで、むしろ即座のツッコミに悦びを見出したかのようなイイ顔(お面のはずなのに表情が変化)で倒れていった。


『…ニャルラトホテプを、』

『圧倒してる…?』


 解説者席の二人がマスターの意外な活躍を前に困惑の表情を浮かべる。

 アンノウンの方も似たような感じだが、彼女は彼女でスナイパーライフルの照準を、ニャルラトホテプのどたまにぴったりとロックオンしていた。

 そしてマスター相手に15%を削られたニャルラトホテプが立ち上がり、彼にスリよって胸に人差し指を当て、


「またまたぁ♪ アナタだってこーゆーのキライじゃないくせにぃ☆――ニャぶっ!?」


 と、とてもウザイ感じにのの字を書き始めたので、『猛省喚起もうせいかんき』の柄尻を脳天めがけて叩き込んだ。

 その拍子にマスターの懐からナニカが転がり落ちる。


「…おい、ニャルラトホテプ。こいつはなんだ?」


 ぴぴーっと下手な口笛でごまかしを図るニャルラトホテプ。


『解説席から失礼。いわゆるひとつの「冒涜的ぼうとくてきな手榴弾」です』


 愚者狩りのスキル『委細貫通』による能力無効化が発動したため、かの手榴弾の爆発はキャンセルされました。主に信管が破壊された形で。


「そうか。ありがとよ、レヴィアタン」/「ニャぶっ!」


 張り叩くハリセンの記載文字がミカエルのときと同様、『半殺し』に変化した。

 さっきは右ほほ叩いたから、今度は左だ。

 相変わらずとてもイイ顔で倒れていくニャルラトホテプ。


「なんとニャルラトホテプが起き上がり、仲間になりたそうにこちらを

「見てんじゃねぇよ!」(色が橙色に変化)


 起きんな、そのまま息絶えろ。


『…ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、

 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ…』

『ルシファー? どうしたの、ルシファー!?』


 一方解説者席では、つい最近十発以上このハリセンを喰らった覚えのあるルシファーが、だれにともなくひたすら謝り続けていた。

 気絶しててよかったね、九尾。

 そしてこのハリセンにより30%のダメージを受けたニャルラトホテプの方はというと、九尾、ルシファー、ミカエルの時と同様、魂が揺れ動いて口からびちびちと半分出かかっていた。


「おおぉ!? 魂が、ワタシのタマシイが震えている!

 …まさか、まさかこれが恋だと理想郷ゆーとぴあっ!?」

「んなわけあるかっ!」(記載『諸行無常しょぎょうむじょう』)


 マスターに背を向け、世界に向けて演説を振るうニャルラトホテプの後頭部を容赦なく張り叩く。

 一瞬口から魂を飛び出させたヤツは、立つ力を失って膝を突き、四つん這いでうなだれたまま、


「き、キミの圧倒的なツッコミに、ワタシは心を奪われました。

 …この気持ち、まさしく「やめんかボケッ!!」ア痛ぁ!」


 さらにボケをかましてきたため、おそらくキリッと決め顔を作ってきたと思しき顔面を、お面の上から縦一文字に張り叩いた。(記載『悪魔祓い』)

 ヤバイ、こいつは絶対にヤバイ。

 このままコイツを喋らせ続けたら、勝利と引き換えになにか大切なものを失いかねん。


「そう、ワタシは大切なものを盗んでいきました。

 …アナタのココ――ニャげぶっ!?」


 柄尻をみぞおちへと叩き込むマスター。(色が赤色レッドゾーンに変化)



「………そうか。そうだな、そうだよな?

 無言でツッコミ入れたっていいんだよな。

 …いいか、よく聞けニャルラトホテプ。とりあえず『その姿をやめろ』」

「い、いきなりそーおっしゃられ――ニャぶぅ!?」

「無駄な発言は許可しない。さっさとその姿を切り替えろ」


 振り抜いたマスターのハリセンが、その記載文字をついに『十倍返し』へと変化させた。


「…次はないぞ」


 ハリセンの記載文字が『激怒げきど』になって待機。

 命とボケを天秤にかけてしぶしぶ姿を変化させるニャルラトホテプ。

 最終的に、そいつはアンノウンに似た幼女態へと身体を縮め、頭から地面にまで伸ばした黄土色の髪に触覚っぽいナニカを二本ほどぴんぴんさせた、なぜか「三頭身」の形態へとフォームチェンジを果たしてのけた。

ギャグれるのは前半だけ。

がんばれニャルラトホテプ。

負けるなニャルラトホテプ。

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