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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
終章 アンノウン神殺編
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雪月花『撃上花火』

『…刻印剣舞六連「天使殺しの六芒星アルマデル・ヘキサグラム」』


 ドーム状に吹き荒れていた吹雪が収まる。

 吹き散っていく雪に覆い隠されていた景色が姿を現す。

 ギリギリ拾われた音声がアンノウンの声だったことから想像はしていたが、やはり勝利を収めたのはあのチビだったらしい。

 ウリエルは砕け散る氷とともに鉄板を覆う雪の上へと転がり落ち、現在雪んこ忍者姿のアンノウンの方は、両手に透明な小太刀らしきものを構えた姿でウリエルと距離を置いている。

 どうやら、アンノウンによる決めの大技が入ったらしい。


「ウリエル選手、ダウーーン!!」

「どうやらアンノウン選手の決め技が入ったもよう。

 …ただいま観測中…。ウリエル選手の敗退を確認。

 アンノウン選手の勝利を認めます」


 レヴィアタンが勝利を確定した瞬間、会場から悲喜こもごもの歓声が沸いた。

 トトカルチョでウリエルに賭けてたヒト、ご愁傷様。

 うちのチビがわるいねー。ふっふっふ。

 レヴィアタンから没収したチケット。

 確かアンノウンの勝利に賭けられていたはずだからな。

 初めて気分よく終われるぜ。


「さて、それではみなさんお待ちかねの勝利者インタビューを――ッ!?

 おチビ、後ろっ!!」


 なにかに気付いたらしいルシファーが鋭い警告を発する。

 釣られてアンノウンの方を見ると、鉄板から波立つように現れた銀色の液体が、雪を散らしながらアンノウンの身体に覆いかぶさるように広がっていた。


「メタルスライム!? そんな! どうして!?」

「九尾に倒されたんじゃなかったのか!?」

「おチビッッ!!」


 ブースターを噴かせて吹雪を散らせながら離脱を試みるアンノウン。

 だが、メタルスライムは最初からアンノウンの足を固定していたらしく、いくらブースターを噴かせても身体がその場を動かない。

 津波にさらわれるように銀海に呑み込まれていくアンノウン。

 一方、アンノウンを呑み込んだメタルスライムは、その姿を銀色の液体から蟲の集合体へと形を変えていく。なんだってんだ、一体!?


「メタルスライムじゃない! 変身能力者だ! ルシファー!!」

「選手じゃないヤツはご退場願うわ! 五火七禽扇(ごかしちきんおう)――」


    『モデル雪月花「撃上花火ファイアワークス」ッ!!』


 ルシファーが扇片手に飛び出そうとした、その時。

 うぞうぞと蟲地獄と化した元メタルスライムの中から、普段より感情をあらわに感じる声でアンノウンが「爆発」した。

 具体的には、

「ちゅどどどどどどどどどどどどどどんんんっっっ!!」

 という感じにダイナマイトやらなにやらの連続起爆で。

 そしてだれもが思わず硬直する状況の中で、アンノウンのやつは蟲地獄からブースターを噴かせて真上に跳ぶ。

 今度のアンノウンの姿は、近未来モノにでも出てきそうな狙撃用のヘッドホン付きゴーグルで目と耳とを覆い隠し、本型ガンベルトが三条、惑星の衛星軌道をなぞるようにX字と真横に帯遊している。

 衣装の変化は強化メタルかプラスチックなどを素材に使用したと思しき軽鎧を装備。

 腕は先の巨大ガントレット。靴にはさっき見たローラー…以上のキャタピラ付き巨大レッグアーマーを装備。ますますロボットモノ。

 肩、腰、脚にと、身体の各所にはブックホルダーが付属しており、本型ガンベルトに対応しているものと思われる。

 最後にブースターは普段のX字から角度が変わって、横に倒したKの字型。

 上のV字が平行に変化しており、飛行能力を削って姿勢制御仕様に特化しているものと思われる。…つまり、おそらくアレは重射撃型形態だ。


 そして予想違わずフル武装。


 両肩にマシンガンとガトリング、両脚にそれぞれ小型ミサイルとグレネードランチャーポッド。

 腰にはビームバズーカ及び、1メートル近い砲口を持つ88mm高射砲(アハト・アハト)

 最後に両腕、進化したガントレット型メタルアームからは、左右上腕内部からハンドガトリングが飛び出す。

 カートリッジ部がブックホルダー仕様で、そこにカートリッジ・ブックを一冊まるごとはめ込んだのが不安すぎる。一体ナニを撃つ気なんだ?

 そうして射撃体勢を完了したアンノウンのヤツは、すべての銃火器を下方向に向け、当然のようにフルバースト。

 撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。

 弾切れを起こした銃器は即座にパージして、ガンベルトから新たな銃器を補充。

 両脚部の兵装は主にミサイル、グレネード、クレイモアなどの弾幕系。

 腰の大砲系は姿勢を変えてアンダーからの横撃ちだ。

 絶える間のない連射、連射、連射。

 撃ち切る。パージ。補充。

 撃ち切る。パージ。補充の無限連鎖だ。

 マシンガンもハンドガンもショットガンも、ガトリングもミサイルもグレネードもビーム兵器もなにもかもお構いなしに、補充と射撃を繰り返す。

 撃って、撃って、撃って、撃って、撃って、撃ちまくる。

 最後の仕上げににナパーム弾を多数ばら撒いた後、ティラノサウルスに持たせていた試製四式重迫撃砲しせいよんしきじゅうはくげきほうを、装備はせずに殴り飛ばしながら一発だけ砲撃。

 大砲は砲撃の反動で一瞬だけ宙に留まって、そのまま「ズズン」と落下した。


「……………マジ?」

「………すご……」


 ぜっはぜはと荒い息を吐くアンノウンの眼下は当然のごとく地獄絵図。

 鉄板は砕け散って赤く焼け爛れ、蟲は焦げた死骸と化し、弾切れの銃器も粉々に破壊されつくしていた。

 なにより銃弾の痕跡がものすごい。


「…伝説になるな…」


 首都殲滅用決戦兵器として。


「………ん? 妙だな。煙が少し離れた――ッ! 

 気をつけろアンノウン! 穴掘って逃げてるぞ、そいつ!」


 ……そうか、鉄板は銃撃により割れているんだ。

 そして、おそらく敵は『変身』により土中を逃げられる。

 俺はそこまで考え、敵が逃げ回りつつ戦って、正体を明かすようなマネはしないだろうと思い込んでいたのだが…どうやら「そいつ」は逃げ回る気はさらさらないらしい。


 SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。

 SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。SAN値、ピンチ。


「………」「………」


 …どこからともなく聴こえてくるバックミュージックに解説者席一同が沈黙。

 観客席からは「ニャルさまだ!」「ニャル様なら仕方ない!」などと訳知りの一部観客が騒ぎ始めた。

 そして、ヤツは現れる。

 本来火山塔ステージの設置物、生き残りの岩塔の上に立ち上がる人影。

 遅れてきた主役のように姿を現したのは、クトゥルー神話の有名邪神、這い寄る混沌ことニャルラトホテプ。

 その姿は、市松模様のドレスに『銀髪の美――


    「やめんか、コラぁ!!」


 少女』…の、お面を被ったニャルラトホテプ。

 しかし間髪入れずに叫んだアンノウンのマスター。

 応じるようにアンノウンの体から愚者狩りの紙片が勝手に飛び出し、ハリセンに変化してニャルラトホテプの頭上に転移。


「――ニャぶっ!?」

「スパンッ」と思いっきり張り叩いた。


 張り叩かれたニャルラトホテプがどこかで聴いたような声で悲鳴を上げたが、そこは全力で無視だ。


「あ、アンタ、今いったいなにを…?」

「知るか! とりあえずテメェ! ニャルラトホテプ!

 いくらクトゥルー神話が著作権放棄のシェアワールドだからって、やっていいことと悪いことがあるぞ! 

 いいかテメェ、よく聞きやがれ!

 それ以上その姿を晒そうモンなら俺が直接しばき殺してやるから覚悟しとけ!!」


 怒声を発するマスターの手に再び転移したハリセンが舞い戻る。

 お仕置き対象がニャルラトホテプのみのためか、記載文字は『一撃』のまま生きていた。


「この人、もしかしてクトゥグア以上にニャルラトホテプの天敵なんじゃ…?」


 ぼやいたレヴィアタンを無視してニャルラトホテプの口が開く。

 智欲の大罪がマスターVS.這い寄る混沌ニャルラトホテプ。

 もはや行く末のわからぬカオスなバトルが今、始まった。

 せっかくのお祭りですので、ニャルラトホテプには「這いよれ!ニャル子さん(逢空万太先生)」のお面を被ってもらいました。イメージは夜店で売ってるアレです。


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